Ultravox - Vienna (1980)
Ultravox 1980

Ultravox - Vienna (1980)

Electronic Rock New Wave Synth-pop

Ultravox『Vienna』――1980年UKニュー・ウェイヴの転換点

Ultravoxの『Vienna』は、1980年にUKのChrysalisから出た4作目のスタジオ・アルバムで、同時にバンドの流れを大きく変えた作品でもある。John Foxx脱退後、Midge Ureがボーカルとギターで加入し、Billy Currie、Chris Cross、Warren Cannと組んだ最初のアルバムがこれだ。Ultravoxのディスコグラフィーの中でも、後年まで語られる“クラシック・ライン・アップ”の出発点として位置づけられている。

録音はロンドンのRAK、ミックスはケルン近郊のConny’s Studioで行われた。プロデュースは前作『Systems of Romance』に続いてConny Plank。ドイツ的な音響処理と、UKニュー・ウェイヴの冷たい質感が重なる時期の作品で、電子音とロックの骨格がきれいに接続されている。発売は1980年7月11日、UKアルバムチャートでは最高3位を記録した。

アルバムの中身

『Vienna』は、シンセサイザー主体のアレンジを前に出しつつ、ギターやドラムの輪郭もはっきり残している。電子音だけに寄り切らず、曲ごとに緊張感の作り方が違うのが面白い。タイトル曲はその代表で、ゆったりしたテンポと大きな空間の使い方が印象に残る。ピアノ、ストリングス風の鍵盤、抑えた歌唱が重なり、ドラマを引っ張る構成。

実際に聴くと、音数は多くないのに、各パートの置き方がかなり計算されているのが分かる。ベースが前に出る場面、ドラムの硬いアタックが曲を押す場面、シンセの和音が空気を変える場面が明確で、派手さよりも配置の精度で聴かせる作り。Midge Ureの声も、感情を大きく振るというより、冷静さを保ったまま曲の中心を保っている。

シングル曲とアルバムの広がり

この盤には後の代表曲が複数入っている。まず「Sleepwalk」は、1980年6月20日にUKでシングル化された曲で、アナログA面の1曲目としてアルバムの入口を作る。「Passing Strangers」は9月26日、「Vienna」は1981年1月9日、「All Stood Still」は1981年5月29日にそれぞれシングルとして出た。アルバム1枚の中に、時期をずらして複数のシングルが収められている点も、この作品の強さを示している。

特にタイトル曲「Vienna」は、UKシングルチャートで4週連続2位を記録した大きなヒットだった。John Lennon「Woman」やJoe Dolce「Shaddap You Face」に阻まれて1位には届かなかったが、1981年の英国年間シングル売上では6位まで上がった。のちにBrit Awardsで「Single of the Year」を受賞したことも含め、Ultravoxの名を広く決定づけた曲として扱われている。

UK盤ならではのポイント

今回のUK盤はChrysalis CHR 1296。UK盤とUS盤では同じカタログ番号でも内容が異なり、A面の曲順が違う。UK盤は「Astradyne」から始まり「Sleepwalk」で締める並びだが、US盤はその順序が逆になる。ジャケットも同じ画像を使いながら、裏面の写真配置が左右反転している。こうした差も、当時の英米市場向けの作り分けとして興味深い部分だ。

また、盤面表記は1980年のChrysalis Records Limited、印刷はUK。Chrysalisはこの時期すでにEMIグループ傘下にあり、ラベルにEMIロゴが付くこともあるが、レーベル自体はChrysalisとして扱われる。こうした流通面の背景も、80年代初頭の英国盤らしいところだ。

ニュー・ウェイヴの中での位置

『Vienna』は、同時代のニュー・ウェイヴ/シンセ・ポップの中でも、かなり構築的なアルバムとして残っている。単純なダンス志向ではなく、BauhausやJapan、Gary Numan周辺の冷ややかな感触とも通じる一方で、曲の骨組みにはロックバンドとしての踏ん張りがある。Ultravoxがこの後80年代前半にヒットを重ねていく流れを考えると、この盤はその土台になった作品だ。

『Vienna』は、曲単位の強さとアルバム全体の統一感が両立している。Midge Ure加入後の新体制を初めて形にした記録であり、同時にUltravoxが80年代の英国ポップの中で存在感を確立した起点でもある。タイトル曲の知名度だけで終わらない、全編を通して緊張感のある一枚。

トラックリスト

  1. A1 Astradyne 7:07
  2. A2 New Europeans 4:00
  3. A3 Private Lives 4:06
  4. A4 Passing Strangers 3:49
  5. A5 Sleepwalk 3:10
  6. B1 Mr. X 6:33
  7. B2 Western Promise 5:44
  8. B3 Vienna 4:52
  9. B4 All Stood Still 4:23

動画プレイリスト

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