David Gilmour - Rattle That Lock (2015)
David Gilmour『Rattle That Lock』2015年盤レビュー
ピンク・フロイドの中心人物として知られるデヴィッド・ギルモアが、2015年に発表したソロ4作目が『Rattle That Lock』だ。Columbiaから出たこの作品は、ギルモアのソロ作の中でも比較的近年の録音で、作曲、歌唱、ギター、サウンドデザインまで本人の色が強く出ている。前作『On an Island』から約9年ぶりという間隔もあり、ソロ活動としてはひとつの節目に置かれるアルバムになっている。
作品の位置づけ
この時期のギルモアは、ピンク・フロイドの大きな歴史を背負いながらも、ソロ作品ではより個人的な題材を扱っている。『Rattle That Lock』でもその傾向ははっきりしていて、歌詞の多くを妻のポリー・サムソンが手がけ、楽曲はギルモアのギターを軸にしつつ、キーボードやコーラス、ゲストの参加で厚みを持たせている。ロキシー・ミュージックのフィル・マンザネラとの共同プロデュースも含め、70年代後半のプログレ的な大作主義そのままではなく、整理された構成の中で音を積み重ねる作りになっている。
全英1位を記録したことも重要だ。ソロ作として2作目の全英1位で、ギルモアの現役性をあらためて示した作品として受け止められた。ピンク・フロイドの後継というだけではなく、ソロ名義で独立した到達点を作っている。
タイトル曲の由来
タイトル曲「Rattle That Lock」は、このアルバムを語るうえで外せない。曲の核になったのは、ギルモアがフランスの駅で耳にしたSNCFのチャイムだったというエピソードで、iPhoneで録音したそのフレーズをもとに楽曲が組み立てられた。日常の音を楽曲の出発点にする発想は、ピンク・フロイドの実験精神ともつながるが、ここではより直接的にポップソングへ落とし込まれている。
この曲はアルバム内でも輪郭がはっきりしていて、ギルモアのギターが前に出る一方、リズムはきっちり締まっている。シングルとしての性格も強く、アルバムの入口として機能する1曲だ。耳に残るチャイムのモチーフが、そのまま作品全体の印象を決めている。
収録曲と聴きどころ
冒頭の「5 A.M.」は、静かな導入から徐々に広がる流れで、ギルモアらしいギターの余韻がよく出ている。続く曲でも、派手な速弾きより、音の伸びや間の取り方に重きが置かれている。プログレという枠で見ると、複雑な展開を前面に出すタイプではないが、細部の積み上げで長尺感を作る手つきは明確だ。
「A Boat Lies Waiting」は、2008年に亡くなったリチャード・ライトへのトリビュートとして知られる。冒頭にライト本人の肉声が入り、ピアノとコーラスが波のように揺れる。デヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュの参加もあり、ピンク・フロイド周辺の人脈が自然に溶け込んでいる。追悼曲としての重さはあるが、感情を大きく煽るのではなく、静かな記憶として置かれている点が印象的だ。
また、ジュールズ・ホランドやロバート・ワイアットらのゲスト参加も作品の幅を広げている。ギルモアの息子ガブリエルがピアノで参加している点も、ソロ作品ならではの私的な空気を作っている。
サウンドの印象
実際に聴くと、ギターの音色はよく磨かれていて、フレーズは短くても輪郭が崩れない。ピンク・フロイドの大作で見られたような壮大な音像より、室内楽的なまとまりに近い場面もある。とはいえ、単に落ち着いたアルバムではなく、曲ごとにリフ、コーラス、シンセの配置がはっきりしているため、聴感はかなり明瞭だ。2010年代のロック作品として見ても、演奏の分離がよく、音数を抑えた場面でも空間が埋まっている。
ギルモアのソロ作は、ピンク・フロイドの延長線上に置かれることが多いが、『Rattle That Lock』ではその影響関係がより整理されている。サイケデリックな広がり、プログレ的な構成、メロディの分かりやすさが、それぞれ別々に主張するのではなく、同じ画面の中で均衡している。
2015年盤としての特徴
この2015年のヨーロッパ盤は、ヘビーウェイト・ヴァイナル、ゲートフォールド・ジャケット、写真入りインナーバッグ、16ページの写真/歌詞ブックレットを備えた仕様だ。LPとしての物量もあり、視覚面でもアルバムの制作背景を追いやすい。初出当時のアナログ盤らしく、作品の世界観を補う体裁が整っている。
『Rattle That Lock』は、ギルモアが長年積み重ねてきたギター表現と、ソロ作で見せる私的な題材が交差したアルバムだ。ピンク・フロイドの文脈を引きつつも、2015年の時点でのギルモア自身の音楽としてまとまっている。タイトル曲のチャイム、ライトへの追悼、ゲスト陣の配置、そのどれもが作品の中で過不足なく機能している。
トラックリスト
- A1 5 A.M.
- A2 Rattle That Lock
- A3 Faces Of Stone
- A4 A Boat Lies Waiting
- A5 Dancing Right In Front Of Me
- B1 In Any Tongue
- B2 Beauty
- B3 The Girl In The Yellow Dress
- B4 Today
- B5 And Then...
動画プレイリスト
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David Gilmour - 5 A.M. (Official Audio)
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David Gilmour - Rattle That Lock (Official Audio)
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David Gilmour - Faces of Stone (Official Audio)
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David Gilmour - A Boat Lies Waiting (Official Audio)
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David Gilmour - Dancing Right In Front of Me (Official Audio)
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David Gilmour - In Any Tongue (Official Audio)
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David Gilmour - Beauty (Official Audio)
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David Gilmour - The Girl In The Yellow Dress (Official Audio)
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David Gilmour - Today (Official Audio)
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David Gilmour - And Then... (Official Audio)