Dionne Warwicke - Just Being Myself (1973)
Dionne Warwick 1973

Dionne Warwicke - Just Being Myself (1973)

Funk / Soul Soul

Dionne Warwicke『Just Being Myself』(1973年)レビュー

Dionne Warwickeの『Just Being Myself』は、1973年にWarner Bros. Recordsから発表されたアルバムで、同レーベルでは2作目にあたる作品だ。1960年代にBurt BacharachとHal Davidのコンビと組んで数々のヒットを重ねた彼女が、作家陣との大きな関係変化を経て、新しい音楽の形を探っていた時期の1枚でもある。タイトルの通り、ここでは以前の洗練されたポップ・ソウル路線から少し離れ、よりデトロイト・ソウル色の濃いサウンドに踏み込んでいる。

制作背景と立ち位置

本作の全曲を手がけたのはHolland-Dozier-Holland。Motown時代に数多くの名曲を生んだソングライター/プロデューサー・チームで、録音も彼らのHDH Studios, Detroitで行われている。Warwickeにとっては、長く組んできたBacharach & Davidの世界から一歩外へ出たアルバムであり、キャリアの中でも転換点に置かれる作品だ。

アーティスト名も当時は「Warwicke」表記。もともとの綴りの揺れを含め、クレジット面からも時期の空気が見える。Warwickeはこの頃、従来の“上品なポップ・シンガー”という印象だけでは収まらない表現へ向かっていた。

サウンドの印象

このアルバムでまず目立つのは、バックの作り込みだ。HDHらしい、リズムの輪郭がはっきりした演奏を土台に、Warwickeの声が前へ出る。AllMusicのTim Sendraが触れているように、制作ではあらかじめ録音されたバッキング・トラックにヴォーカルを重ねる形が取られたようで、その分、音の設計がかなり明確だ。ソウル・アルバムとしての骨格が先にあり、その上に歌が乗る構造になっている。

全8曲、約33分半というまとまりで、アルバムとしての密度は高い。ポップ寄りの華やかさより、リズムと歌の相互作用が中心にある。Warwickeの声は、もともとの滑らかなフレージングに加えて、少し強い押し出しを帯びて聴こえる。ソウル・シンガーとしての輪郭がはっきりする作りだ。

収録曲とシングル

シングルになったのは「I Think You Need Love」と「(I'm) Just Being Myself」の2曲。特に「(I'm) Just Being Myself」はアルバムの題名曲で、作品全体の方向をそのまま示す役割を持つ。もう一つの「You're Gonna Need Me」は、のちに彼女の代表曲の一つとして語られることが多い。冒頭から張りのある展開で、Warwickeがこの時期にソウル歌手としての存在感を強めていたことがわかる曲だ。

商業成績はBillboard 200で178位、Cash Boxのアルバム・チャートで108位と控えめだったが、内容面では後年まで参照される部分が多い。Bacharach & David期の大ヒット群と比べると知名度は高くないものの、彼女のキャリアをつなぐ中間点として重要な位置にある。

同時代とのつながり

1973年のソウル/R&B周辺では、シンガーがプロデューサー主導の制作に入る例が珍しくない時期だった。Warwickeもその流れの中で、Motown系の作家陣と組み、デトロイトの空気をまとった作品へ進んでいる。Burt Bacharachの高度に設計されたポップ・ソングとは別のベクトルだが、声そのものの説得力で曲を運ぶ点は変わらない。

このアルバムは、Warwickeが単なるヒット曲の歌い手ではなく、ソウル・シンガーとしても成立することを示した記録として見るとわかりやすい。後年の彼女の活動を振り返るときにも、ここでの試みはひとつの重要な分岐点として残る。

USオリジナル盤について

今回の盤は1973年当時の米国オリジナル、Warner Bros. RecordsのBS 2658。Warner Bros.の1970〜73年の緑ラベル期にあたる時代で、翌春以降に見られるバーバンク・パームツリー・ラベル以前の仕様だ。オリジナル期のUS盤として、当時の発売時点の空気をそのまま持った一枚になる。

『Just Being Myself』は、Dionne Warwickeのキャリアの中で派手な代表作として語られることは多くないが、歌い手としての幅を見せるアルバムだ。Bacharach & Davidの名曲群とは違う質感で、1970年代前半のソウルと向き合った作品として押さえておきたい。

トラックリスト

  1. A1 You're Gonna Need Me 4:20
  2. A2 I Think You Need Love 3:37
  3. A3 You Are The Heart Of Me 4:14
  4. A4 I Always Get Caught In The Rain 3:42
  5. B1 Don't Let My Teardrops Bother You 4:00
  6. B2 (I'm) Just Being Myself 4:31
  7. B3 Come Back 4:30
  8. B4 Don't Burn The Bridge (That Took You Across) 4:24

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Dionne Warwick

Dionne Warwick

Dionne Warwickは、1940年12月12日にアメリカ・ニュージャージー州イースト・オレンジで生まれたシンガー、女優、テレビ司会者だ。ジャンルはFunk / S...

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