Eddie Money - Can't Hold Back (1986)
Eddie Money『Can’t Hold Back』について
エディ・マネーの『Can’t Hold Back』は、1986年に発表された通算7作目のスタジオ・アルバムで、彼の80年代後半の流れを決定づけた作品です。前作『Where’s the Party?』の後に出たこのアルバムでは、前面に出るメロディ、ラジオ向きの曲づくり、そして当時のポップ・ロックらしい整ったプロダクションがはっきりしている。CBS/Sonyからの日本盤は1986年の初出で、ジャケットや盤面に“Made In Japan.”と記された1枚です。
復活作としての位置づけ
この時期のエディ・マネーは、70年代から続くヒットの流れをいったん落ち着かせたあと、再び大きな商業的成功をつかんだタイミングにあたる。本作は、その立て直しの中心にあるアルバムで、特に先行シングル「Take Me Home Tonight」の存在が大きい。全米シングル・チャートで4位まで上昇し、アルバム全体の注目を引き上げた。続く「I Wanna Go Back」も14位まで伸びていて、1曲頼みではない形で勢いを作っている。
収録曲を通して聴くと、ギターを前に出したロックの骨格の上に、80年代らしいシンセやコーラスが重なり、曲の立ち上がりが速い。派手に崩すより、歌のフックをきちんと残す作りで、当時のアメリカン・ロックとポップの中間にある感触が強い。ここは同時代のTotoやBilly Joel周辺の洗練された大衆ロックとも接点がある一方で、エディ・マネーのしゃがれた声が前に出るぶん、曲の輪郭はもう少し直接的だ。
「Take Me Home Tonight」とロニー・スペクター
このアルバムを語るうえで外せないのが「Take Me Home Tonight」。ロニー・スペクターが参加し、“Be my little baby”の一節が入る構成になっている。60年代ポップへの明確なオマージュで、懐古だけに寄らず、曲の推進力として機能しているのが面白いところ。エディ・マネーのキャリアの中でも、この曲は最も広く知られた代表曲のひとつで、アルバムの顔として強い役割を持っている。
実際に聴くと、サビに入る前の持ち上げ方がわかりやすく、曲全体の設計が非常に明快だ。ギターリフ、コーラス、ゲスト参加のフックが順番に来るので、ラジオで流れたときの記憶に残りやすい作りになっている。80年代中盤のヒット曲に共通する“わかりやすさ”を、かなり正面から使っている印象がある。
制作とサウンドの特徴
制作面では、リッチー・ジートをプロデューサーに迎えたことが転機になった。前作での反省を踏まえ、曲作りと録音のバランスを立て直した流れが見える。アルバム全体は、過度に荒い演奏感よりも、整った音像と歌の押し出しを優先している。批評面ではこの均質さが指摘されることもあったが、商業的にはそのまとまりが効いた。ビルボード200で20位まで上がったのも、その分かりやすさが広く受け入れられた結果だろう。
「Endless Nights」「We Should Be Sleeping」もシングル化されており、アルバム後半まで曲の役割がはっきりしている。特に“眠れない夜”や“帰りたい”といった直線的な題材を、80年代のロック・サウンドに乗せている点は、この時代のアメリカン・ポップ・ロックらしい整理された感覚がある。
日本盤としての見どころ
この日本盤はCBS/Sonyの28AP 3235で、1986年当時の国内流通盤らしい仕様になっている。日本盤ならではの“Made In Japan.”表記も含め、当時のCBS/Sonyが扱っていた洋楽LPの雰囲気をそのまま持っている一枚だ。オリジナル年と盤の年が同じなので、初出当時の空気をそのまま伝える盤として見やすい。
まとめ
『Can’t Hold Back』は、エディ・マネーの80年代後半を代表する復活盤として位置づけられる作品だ。ヒット曲「Take Me Home Tonight」を軸にしながら、「I Wanna Go Back」などのシングルも含めて、アルバム全体が当時のラジオ向けロックの強さを持っている。批評の面では均一なプロダクションが話題になった一方で、曲のフックと歌の押し出しはかなり明確で、1986年という時代の空気をそのまま閉じ込めた1枚になっている。
トラックリスト
- A1 Take Me Home Tonight (Be My Baby) 3:31
- A2 One Love 4:11
- A3 I Wanna Go Back 3:54
- A4 Endless Nights 3:23
- A5 One Chance 4:45
- B1 We Should Be Sleeping 3:54
- B2 Bring On The Rain 4:55
- B3 I Can't Hold Back 3:49
- B4 Stranger In A Strange Land 3:45
- B5 Calm Before The Storm 4:32