Elias Rahbani - Mosaic Of The Orient (Näi, Buzuk & Guitar) (1972)
Elias Rahbani 1972

Elias Rahbani - Mosaic Of The Orient (Näi, Buzuk & Guitar) (1972)

Pop Folk, World, & Country Funk / Soul Psychedelic

Elias Rahbani『Mosaic Of The Orient (Näi, Buzuk & Guitar)』について

レバノンの作曲家、編曲家、プロデューサーとして知られるイリアス・ラハバーニが、1972年にParlophoneの「Voix De L'Orient」シリーズから発表したインストゥルメンタル作品が本作『Mosaic Of The Orient (Näi, Buzuk & Guitar)』である。タイトルのとおり、ナーイ、ブズーク、ギターを軸にした構成で、アラブ圏の伝統的な響きと当時のポップ/ファンク的な編成が同じ場に置かれている。ラハバーニ作品の中でも、東西の要素を明確に並べた一枚として位置づけやすい内容だ。

イリアス・ラハバーニは、ラハバーニ兄弟の末弟としても知られ、フェイルーズ周辺のレバノン音楽史を語るうえで外せない人物である一方、自身は映画音楽や放送音楽、ポップス寄りの作品まで幅広く手がけた。本作はその活動の中でも、伝統楽器を前面に出しながら、オルガンやドラム、ギターを組み合わせた録音としてまとまっている。アラブ音楽の文脈にありながら、編曲の見通しはかなりよく、短い小品が連なっていく構成もあって、アルバム全体の流れで聴きやすい。

作品の内容と聴きどころ

本作の中心にあるのは、メロディの運び方だ。ナーイの息の長いフレーズやブズークの粒立った音色が、リズム隊の上で自然に絡み合い、そこへギターが加わることで、民謡風の輪郭が少し現代的に整えられている。録音の中には、踊りのための曲として機能しそうなものもあり、旋律の反復とリズムの押し出しがはっきりしている。派手な展開で引っ張るタイプではなく、フレーズの積み重ねで聴かせる作り。

収録曲の中では「Dance of Maria」がよく知られている。後年この曲はサンプリング素材としても使われ、2018年にはブラック・アイド・ピーズの作品にも取り込まれた。そうした再利用のされ方を見ても、リズムとフレーズの切れ味が強い曲として受け止められてきたことがわかる。本作全体にも、単なる“珍しい民族音楽”では終わらない、ポップスの現場で通用する骨組みがある。

1970年代レバノン音楽の中での位置づけ

1972年という時期は、レバノンの音楽がローカルな伝統だけでなく、周辺のポップスや映画音楽、放送音楽と接続しながら展開していた時代でもある。本作はその流れの中で、東洋的な旋律と西洋楽器の配置をきれいにまとめた例として見やすい。ラハバーニ兄弟の作品群と比べると、より器楽的で、言葉より音色と編曲で構成を見せる点がはっきりしている。

同時代の近い感触としては、アラブ圏のポップや映画音楽における編曲家主導の作品群が思い浮かぶが、本作はその中でもフォークロアの要素を残しつつ、サイケデリックな空気をわずかに差し込んでいるところが特徴的だ。ジャンル表記としてはFunk / Soul、Pop、Folk、World、& Country、StyleとしてPsychedelicが付くが、実際の聴こえ方もその混ざり方に近い。どれか一つに寄せ切らず、場面ごとに輪郭が変わるのが面白い。

オリジナル盤と再発盤の違い

オリジナルは1972年のレバノン盤で、ParlophoneのGVDL 35。ラベルには「Voix De L'Orient Series」とあり、A. Chahine & Fils制作、The Graphophone Company Of Greece Ltd.による製造・流通表記が見える。本作は後年の再発や編集盤が多く、タイトルを同じくしながら『Mosaic of the Orient Vol. 2』の曲を混ぜたものも存在する。なので、1972年のオリジナル盤は、あくまで第1作としてのまとまりを持つ点が大事になる。

コレクターの間で本盤が注目されてきた理由も、その初出盤ならではの構成にある。後年の再発で曲順や選曲が変わると、アルバムの印象もかなり変わる。本作の場合、最初のリリースでしか見えない流れを保った盤として捉えるのが自然だろう。

まとめ

『Mosaic Of The Orient (Näi, Buzuk & Guitar)』は、イリアス・ラハバーニが持っていた編曲家としての視点と、レバノン音楽の土台が交差した一枚である。伝統楽器の響きを前面に出しながら、当時のポップ/ファンク的な感覚を無理なく溶かし込んでいる点に、この作品の輪郭がある。1974年の続編につながる起点としても重要で、後年のサンプリングや再評価まで含めると、1970年代レバノン・インスト作品の中でも存在感のあるタイトルとして残っている。

トラックリスト

  1. A1 Let's Dance
  2. A2 La Dance De Nadia
  3. A3 My Lovely Elena
  4. A4 Sweet Eyes
  5. A5 Take Me With You
  6. A6 Always In My Heart
  7. B1 I Love You Lina
  8. B2 Dance Of Maria
  9. B3 I Think Of You
  10. B4 Smile For Me
  11. B5 Leila Leila, Jolie Fille
  12. B6 Don't Forget Me

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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