Mulatu Astatke - Mulatu Of Ethiopia (1972)
Mulatu Astatke 1972

Mulatu Astatke - Mulatu Of Ethiopia (1972)

Jazz Folk, World, & Country Funk / Soul African Funk Jazz-Funk Psychedelic Latin Jazz

Mulatu Astatke『Mulatu Of Ethiopia』(1972)

「エチオ・ジャズ(Ethio-Jazz)の父」と称されるエチオピアの巨匠ムラトゥ・アスタトゥケ(Mulatu Astatke)が、1972年に米ニューヨークのWorthy Recordsから発表した歴史的傑作『Mulatu Of Ethiopia』。古来のエチオピア伝統音楽とアメリカのモダン・ジャズ、ラテン・パーカッション、そして70年代初頭の妖艶なサイケデリック・ジャズ・ファンクが高次元で融合を果たした、ワールド・ミュージックとレアグルーヴ史に燦然と輝く金字塔である。

「エチオ・ジャズ」の確立とニューヨーク録音

1960年代、ロンドンのトリニティ音楽院、そしてボストンのバークリー音楽大学で初のアフリカ人留学生として学んだムラトゥは、ヴィブラフォンやフェンダー・ローズ、コンガやボンゴを自在に操るマルチ奏者・作編曲家として才能を開花させた。帰国後はハイレ・セラシエ1世治下の「スウィンギング・アディス」と呼ばれた首都アディスアベバの黄金期を牽引。声楽中心だった伝統的なエチオピア音楽に、コンガやホーン・セクションを主軸とするインストゥルメンタルの語法を移植した。

本作は、1966年の『Afro-Latin Soul Volumes 1 & 2』に続き、再びニューヨークへと渡って現地の精鋭ジャズ・ミュージシャンたちとともに録音された。アディスアベバのAmha Recordsに残した諸作と並び、ムラトゥの音楽的ヴィジョンが最も純粋かつ濃密に結晶化した作品である。

神秘のペンタトニックとサイケデリック・ファンク

本作の唯一無二の魅力は、エチオピア古来の教会音楽や民謡に根ざす独特の五音音階(ペンタトニック・スケール)と、ニューヨーク仕込みの洗練されたジャズ・ハーモニー、そして重心の低い漆黒のファンク・ビートの結合にある。ゆらめくヴィブラフォンのミステリアスな残響、哀愁を帯びて咆哮する管楽器、うねるベースライン、そしてラテン/アフリカン・パーカッションが織りなすポリリズムは、聴く者を異次元のトランスへと誘う。

オープニングの自らを冠した名曲「Mulatu」から、祝祭的なグルーヴが炸裂する「Mascaram Setaba」「Dewel」、伝統的な旋律を鮮やかにモダン化させた「Kulunmanqueleshi」「Kasalefkut-Hulu」、深い郷愁が胸を打つ「Munaye」、そして7分間にわたってサイケデリックなインタープレイが繰り広げられる圧巻のファンク・ジャム「Chifara」に至るまで、全編にわたって圧倒的な緊迫感と気品が満ちている。

世界的な再評価と不朽の遺産

発表当時は知る人ぞ知る存在であり、長年にわたりオリジナル盤は幻のメガレア盤としてコレクター垂涎の的となっていた。しかし1990年代末、フランスBuda Musiqueの名コンピレーション『Éthiopiques』シリーズ(特にVol. 4)によって再発見され、さらに2005年にはジム・ジャームッシュ監督の映画『ブロークン・フラワーズ』で本作の楽曲群が全面的にフィーチャーされたことで世界中に衝撃を与えた。ジャンルの境界を軽やかに飛び越え、今なお世界中のクリエイターやDJを刺激し続ける真のマスターピースである。

トラックリスト

  1. A1 Mulatu 5:00
  2. A2 Mascaram Setaba 2:40
  3. A3 Dewel 4:00
  4. B1 Kulunmanqueleshi 2:05
  5. B2 Kasalefkut-Hulu 2:25
  6. B3 Munaye 3:15
  7. B4 Chifara 7:00

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Mulatu Astatke

Mulatu Astatke

Mulatu Astatke(ムラトゥ・アスタトゥケ)は、エチオピア出身のヴィブラフォン奏者、キーボード/オルガン奏者、作曲家、編曲家。エチオピアの伝統音...

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