Eurythmics - Touch (1983)
Eurythmics『Touch』──1983年、世界的ブレイクを決定づけた3作目
Eurythmicsの『Touch』は、1983年にUKのRCAからリリースされた3作目のアルバムである。Annie LennoxとDavid A. Stewartによるこのデュオは、80年代前半のシンセポップを代表する存在として知られ、『Sweet Dreams (Are Made Of This)』のヒットで一気に注目を集めたあと、この作品でさらに大きく存在感を広げた。前作で掴んだ成功を、より明確な楽曲性と音像の整理されたアルバムとして結実させた一枚、という位置づけが見えてくる。
UK盤はRCA(NL 90369)からの発売で、レーベル表記は当時のRCAらしいシンプルなもの。盤面クレジットには「Recorded & mixed on Soundcraft」「(C)+(P) RCA Music Ltd.」「Direct Metal Mastering DMM ® Teldec」とあり、録音とミックスの工程、そして当時のカッティング技術まで含めて作品の物理的な輪郭がはっきりしている。1983年という時期は、RCAブランドのCDが登場した年でもあり、アナログ末期からデジタル移行へ向かう空気の中に置かれた作品でもある。
短期間で仕上げられた、ロンドンの自前スタジオ作品
本作の制作背景も興味深い。楽曲は『Sweet Dreams』ツアーの移動中に書き溜められ、録音とミックスは1982年に拠点を移していたロンドン・クラウチエンドの元教会を改装したスタジオ「The Church」で、わずか3週間ほどで行われた。アーティスト自身の制作環境を持ち込んで短期集中で仕上げたアルバムであり、80年代前半のシンセポップに多かった、機材主導の実験性とポップソングの明快さが同居している。
冒頭を飾る「Here Comes The Rain Again」は、その象徴的な一曲。オーケストラ・アレンジはMichael Kamenが担当している。KamenはStewartが「The Church」の改装中に訪ねていた彼の元妻を通じて紹介されたという経緯があり、制作の偶然性もこの曲の印象を形づくっている。British Philharmonic Orchestraの録音では、スタジオの狭さゆえに奏者たちが一室に収まりきらず、チェロは廊下、ヴァイオリンはキッチン、ヴィオラはバスルームに分かれて録音されたというエピソードも残る。電子楽器中心の作品に、こうした生音の配置が加わることで、音の層に独特の距離感が生まれている。
ヒット曲を複数含む、アルバム単位での強さ
『Touch』は1983年11月のリリース後、Eurythmicsにとって初の全英アルバムチャート1位を獲得した。全米でも7位、ニュージーランドでは1位を記録している。シングルとしては「Here Comes The Rain Again」「Right By Your Side」「Who's That Girl?」の3曲が全英トップ10入りし、アルバム全体の勢いを支えた。特定の一曲だけが突出するのではなく、複数の楽曲がそれぞれ役割を持ちながらアルバムの輪郭を作っている点が、この作品の強みになっている。
聴いていくと、Annie Lennoxの声の置き方がかなり重要だと分かる。前に出す部分と、あえて引く部分の使い分けがはっきりしていて、David A. Stewartのシンセやリズムの組み方とぶつかるのではなく、曲ごとの推進力に変わっている。派手な音色で押し切るより、フレーズの反復と空間の取り方で引き込む作りで、同時代のシンセポップの中でも、Depeche ModeやThe Human Leagueのような機械的な感触とは少し違う、柔らかさと緊張感の混ざった仕上がりになっている。
80年代Eurythmicsの輪郭を決めた一枚
Eurythmicsは、元々The Catch、その後のThe Touristsを経て、1981年にデュオとして本格始動した。初期は認知を得るまで時間がかかったが、『Sweet Dreams』で突破口を開き、『Touch』でその成功をアルバム単位の完成度へつなげた流れが見える。以降の活動でより幅広い音楽性へ進んでいく前段階としても、このアルバムは重要な位置を占める。
後年、この作品は『Here Comes The Rain Again』をはじめとする代表曲の存在に加え、80年代ポップ/シンセポップの文脈で繰り返し参照されてきた。電子的な打ち込み、オーケストラの導入、短期間での集中制作、そしてシングルの強さ。そうした要素が、1983年という時代の空気の中で、きれいにまとまったアルバムである。
トラックリスト
- A1 Here Comes The Rain Again 4:54
- A2 Regrets 4:43
- A3 Right By Your Side 4:05
- A4 Cool Blue 4:48
- A5 Who's That Girl? 4:46
- B1 The First Cut 4:44
- B2 Aqua 4:36
- B3 No Fear, No Hate, No Pain (No Broken Hearts) 5:24
- B4 Paint A Rumour 7:30
動画プレイリスト
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Here Comes the Rain Again (2018 Remastered)
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Regrets (2018 Remastered)
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Right By Your Side (2018 Remastered)
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Cool Blue (2018 Remastered)
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Who's That Girl (2018 Remastered)
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The First Cut (2018 Remastered)
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Aqua (2018 Remastered)
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No Fear, No Hate, No Pain (No Broken Hearts) [2018 Remastered]
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Paint a Rumour (2018 Remastered)