Fred Ventura - East & West (1989)
Fred Ventura『East & West』
Fred Venturaが1989年にイタリアのTime Recordsから発表した唯一のフル・アルバムが『East & West』。ミラノ出身のシンガーソングライター/プロデューサーとして、1979年にパンク/ニューウェイヴのドラマーから始まり、80年代前半にはミラノのアンダーグラウンド・シーンで活動したのち、ソロでの制作へ進んだ人物だ。4トラックのカセット機材、Roland Juno 60、Oberheim DXを使った初期の作業から出発し、やがてダンス向けの方向へ移っていった経歴が、この作品の背景にある。
制作背景・エピソード
本作は、1986年の「Wind Of Change」を含むシングル群と新曲をまとめたアルバムとして組み立てられている。「Wind Of Change」はMauro FarinaとGiuliano Crivellenteの制作で知られ、Fred Venturaの代表曲のひとつとして扱われている。『East & West』では、Time Recordsの主宰者Giacomo Maioliniとの共同プロデュースで仕上げられ、アレンジにはDave Rodgers(Giancarlo Pasquini)やRoberto Ricciが関わっている。バック・ヴォーカルにはClara Moroniが参加している。
収録曲には「Imagine」「Heartbeat」「Lost In Paris」などの既発シングルに加え、新曲が並ぶ。オープニングの「It's My Time」は1990年に日本でCanyon InternationalからCDシングルとして出ており、アルバムからの展開がイタリア外にも及んでいたことがうかがえる。サウンド面では、哀愁を帯びたメロディと冷ややかなヴォーカル、キャッチーなシンセ・リフが特徴で、Pet Shop BoysやNew Orderといった英国シンセ・ポップのエレガンスとイタロ・ディスコのビートが融合している。フロア向けのアップテンポなシングルだけでなく、メランコリックな「Late Night Train」などのアルバム曲を含め、トータル・アルバムとしての完成度も高い。
レコードの内袋には全曲歌詞、白黒写真、全クレジット、そして多数の“Special thanks”が掲載されている。厚手の紙が使われた内袋も、この盤の仕様として記録されている。
時代の文脈
1989年のTime Recordsは、Italo Discoの重要レーベルとして知られ、Fred Venturaもそのカタログの中で早い段階から存在感を示したひとりだった。本人は1983年から1989年にかけて11枚の12インチ・シングルと1枚のアルバムを発表し、複数の別名義でも活動している。イタロ・ディスコの制作現場では、Mauro FarinaやGiuliano Crivellente、Clara Moroni、Laurent Gelmettiらが大きな役割を担っていたが、Fred Venturaは作詞・作曲・歌唱を自分でこなす形で活動していた点が特徴的だ。
当時の彼は、クラブ向けの展開を続けながらも、後にシカゴ・ハウスなどのクラブ・サウンドへ関心を向けていく前段階にいた。本作は、1980年代のイタロ・ディスコの活動をまとめたアルバムとして、彼のキャリアの節目に置かれている。
後年の動き
90年代以降、Fred Venturaはテクノ/ハウス制作、A&R、プロデュースへ活動を広げ、その後も別名義で音楽制作を続けた。2000年代以降のイタロ・ディスコ再評価の流れの中では、Paolo GozzettiとのItaloconnectionでの活動や、Dark Entries、Cloneといった再発レーベルとの関わりでも知られるようになる。『East & West』自体もコレクターズ・アイテムとして扱われ、2016年にはリマスターCDが再発されている。
収録曲の中では「Wind Of Change」「Imagine」「Heartbeat」が特に広く流通し、イタリア国内だけでなくオランダ、ドイツ、スペイン、メキシコ、アメリカのディスコ/クラブでも親しまれた。
トラックリスト
- A1 It's My Time 4:35
- A2 Lost In Paris 3:47
- A3 Never Too Late 4:08
- A4 Heartbeat 5:13
- B1 One Day 3:29
- B2 No More Lies 4:06
- B3 Imagine 3:57
- B4 Wind Of Change 4:25
- B5 Late Night Train 4:36