Bohannon - Summertime Groove (1978)
Bohannon『Summertime Groove』(1978)レビュー
Hamilton Bohannonは、デトロイトのモータウン周辺で腕を磨いたドラマー/アレンジャーであり、のちに自分のバンドを率いてディスコ期のダンス・ミュージックを更新した人物だ。1973年のデビュー作以降、彼は一貫して重心の低いベース、反復するドラム、分厚いホーンやコーラスを軸にした作品を発表してきた。その流れの中で1978年に登場したのが『Summertime Groove』で、彼の代表曲「Let’s Start The Dance」を収めた重要作でもある。
このアルバムは、タイトルからして季節感のあるダンス・アルバムだが、内容もその印象に沿っている。Bohannonの作品に共通する、いわゆる“Bohannon’s Beat”の感触が前面に出ていて、四つ打ちの推進力を土台に、ファンク寄りの粘りとディスコの直進性が同居する構成になっている。派手に展開を変えるタイプではなく、同じリズムの上で少しずつ熱を上げていく作り。踊るための音楽として筋が通っている。
「Let’s Start The Dance」を軸にした1978年の一枚
本作を語るうえで外せないのが「Let’s Start The Dance」だ。Bohannonの代表曲として知られ、全米R&Bチャートで9位、ディスコ・チャートで7位を記録した。アルバム全体の存在感も、この1曲によってかなり強くなっている。後年には1981年にラップ・リミックス版もヒットしており、オリジナルの持つリズムの強さが時代をまたいで機能したことがわかる。
アルバム単位で見ても、1978年というディスコ全盛期の空気をかなり素直に受け止めた作品だ。BohannonはMotownで培った演奏感覚を持ちながら、ソウルの歌心だけに寄らず、反復とグルーヴを前に押し出す方向へ進んでいった。その姿勢は、同時代のダンス・オーケストラ系ディスコとは少し違い、より生演奏の圧を感じさせる。
演奏と制作の手触り
録音はアトランタのThe Master Sound Studio、ミックスも同スタジオとStudio Oneで行われている。クレジットを見ると、CarolineことCarolyn Crawfordがリードとバック・ボーカルで参加し、「The Street Dance」ではCarolineとSonia Rossmanがバックを担っている。女性コーラスが加わることで、Bohannonの硬質なリズムに対して、声の層が少し華やぎを与える構図だ。
聴感上は、音の隙間を埋めるように各パートが詰め込まれているというより、ドラムとベースの反復を中心に、ホーンやコーラスが要所で輪郭を足していく印象が強い。細かい装飾よりも、ビートの持続で引っ張るタイプの作り。ディスコという形式の中でも、Bohannonはかなり演奏主体のアプローチを続けている。
Motownの経験がそのまま出た人
Bohannonは、1960年代にStevie Wonderのバックで活動し、その後はMotownのスタジオ・ドラマーとしてMarvin Gaye、The Temptations、Diana Ross and the Supremesらのツアーバンドを率いた。Motownがロサンゼルスへ移ったあともデトロイトに残り、自身のバンドを結成した経歴がある。つまり『Summertime Groove』は、モータウン的な演奏感覚を持った人物が、ディスコという時代の中心へ自分の方法で入っていった時期の記録でもある。
同時代のディスコと比べると、Bohannonの音は、洗練されたスタジオ・プロダクション一辺倒ではなく、バンドの生々しさが残る。ファンクの骨格を保ったままディスコへ接続している点で、のちのハウスやサンプリング文化にもつながる素材感がある。実際、彼のリズム感は後年のダンス・ミュージックやヒップホップでも参照されていく。
Mercury盤としての位置づけ
このUS盤はMercuryからのリリースで、品番はSRM-1-3728。1978年のMercury LPらしく、いわゆる“skyscraper”系のレーベル・デザイン期にあたる。バック・スリーブには副次的なカタログ番号9110-074も記されている。クレジットには℗© 1978 Phonogram, Inc., a Polygram Company、配給はPolygram Distribution, Inc. とあり、当時のMercuryがPolyGram体制の中にあったことも確認できる。
Bohannonのキャリアの中では、1970年代後半のディスコ路線がもっとも広く知られている。その中でも『Summertime Groove』は、代表曲を収めた一枚としてだけでなく、彼のビート設計そのものを確認できる作品として残る。歌ものとしても、ダンス盤としても、Bohannonの持ち味がかなりはっきり出たアルバムだ。
収録曲に触れて
「Let’s Start The Dance」はもちろん、このアルバムの中心だが、タイトル曲「Summertime Groove」も含めて、全体が“踊るための反復”で統一されているのがこの作品の特徴だ。曲単位で劇的な変化を狙うというより、1曲ごとのビートの粘りを積み重ねてアルバムとしての流れを作っている。そこにBohannonらしさがある。
1978年のディスコ・アルバムとして見ても、そしてBohannonのディスコ期を代表する一作として見ても、輪郭のはっきりした内容だ。モータウン由来の演奏力、アトランタ録音の空気、Mercuryの当時のリリース体制、そして「Let’s Start The Dance」のヒット性。その要素がまとまった一枚になっている。
トラックリスト
- A1 Let's Start The Dance 5:30
- A2 Listen To The Children Play 4:22
- A3 Me And The Gang 5:16
- A4 Let's Start The Dance (Finals) 1:08
- B1 I Wonder Why 3:18
- B2 Summertime Groove 8:10
- B3 The Street Dance 7:55