Carey Harris And Michael Orr - Spread Love (1976)
Harris & Orr 1976

Carey Harris And Michael Orr - Spread Love (1976)

Funk / Soul Soul Disco

Carey Harris And Michael Orr『Spread Love』(1976)

Carey Harris And Michael Orr名義の『Spread Love』は、1976年にUSのSunstarから出たソウル作品で、マイケル・オーとキャリー・ハリスの2人による自主制作アルバムとして知られている。シンガー/キーボード奏者のオーと、ベーシストのハリスが幼なじみ同士という成り立ちで、制作の背景からリリースまで、かなり個人の意志が強く出た1枚だ。レーベルのSunstar自体も、1970年代のミシガン州アナーバー周辺のソウル系レーベルとして位置づけられていて、この作品もそのローカルな空気を強く持っている。

DIYで組み立てられたソウル盤

このアルバムの面白さは、録音以前のエピソードにある。オーが郡の職員として働きながら、昼休みに自宅で曲を書いていたこと、そこから生まれた「Feelings」をグラディス・ナイト向けに送ったことが、制作のきっかけになった。ナイト本人は曲を気に入ったものの、当時の方向性には合わず見送られたという流れで、そこから2人は自分たちでアルバムを作る決意を固めた。資金はオーの妻が私物を売って工面し、レコーディングはクリーヴランドのAgency Recording Studioで実施。録音にはリカルド・“リッキー・スピード”・ニクソン、バーナディーン・ミッチェル、マイケル・ニール、バーナード・ジェイムスらが参加している。ジャケットの絵を義姉妹が描き、Sunstarのロゴを兄弟がデザインしたという話も含め、かなり徹底した手作りの作品だ。

サウンドの核にあるもの

内容面では、ソウルを軸にジャズ、ファンク、ゴスペル、初期ディスコの要素が混ざった構成。クインシー・ジョーンズの音楽観に触発されたという背景もあり、単なるローカル・ソウルではなく、アレンジや演奏の組み立てに広がりがある。マイケル・オーは幼少期からピアノを学び、レイ・チャールズ、スティーヴィー・ワンダー、ディオンヌ・ワーウィックに影響を受けた人物で、14歳で教会の聖歌隊に参加していたという経歴を持つ。そのため、声の運びや鍵盤の置き方にはゴスペル由来の感覚が見えやすい。

タイトル曲「Spread Love」は、この作品を代表する1曲として語られてきた。のちにケニー・ドープやケブ・ダージといったDJに支持され、ルーク・ウナのコンピレーション『É Soul Cultura Vol. 3』にも収録されたことで、クラブ/コレクター文脈でも存在感を強めた。オリジナル盤がレア盤として高値で扱われるようになったのも、この曲の再評価が大きい。派手なヒット曲というより、DJや掘り起こし系のリスナーが拾い上げたことで広がったタイプの代表曲だ。

当時は広がらず、後年に評価が固まった作品

リリース当時は、BuddahなどのレーベルやラジオDJにも十分には届かず、オー自身が車で店を回って売ったという。結果として大きな流通には乗らず、オーはその後しばらく音楽活動から離れることになる。ここは、70年代の自主制作ソウル盤にしばしば見られる流通の弱さと、そのまま埋もれていく経緯をよく示している。

一方で後年は、コレクターやDJの間でカルト的な人気を獲得した。再発も複数あり、2000年のCounterpoint盤、P-VINEによる再発、さらにオーと息子ジャマルがリマスターしたTidal Waves Music盤などが出ている。オリジナル盤と再発盤の違いとしては、当然ながらオリジナルは1976年の初出物としての資料価値が大きく、再発盤は音源に触れる入口としての役割が強い。特にこの作品は、作品の来歴そのものが魅力の一部になっている。

70年代ソウルの周縁にある濃い1枚

『Spread Love』は、メジャーな成功作というより、個人の事情と地域の人脈、そして手作りの熱量がそのまま形になったアルバムだ。ソウル、ディスコ、ファンクの境目を行き来する1976年らしい感触がありながら、制作背景を知るとさらに輪郭がはっきりする。大きな産業の外側で生まれた作品であり、のちにDJ文化の中で価値が掘り起こされた作品でもある。そうした二重の時間差が、このレコードのいちばんの特徴になっている。

トラックリスト

  1. A1 Ecstasy, Fantasy & Dreamland 3:23
  2. A2 Let Me Be With You Awhile 4:05
  3. A3 Here I Go (Through These Changes Again) 3:05
  4. A4 Feelings 4:55
  5. A5 A Piece Of Mine 5:26
  6. B1 Spread Love 5:13
  7. B2 Keep My Fire Burning 5:24
  8. B3 You Opened My Eyes To The World 6:27
  9. B4 Afterwhile 2:56

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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