Irma Thomas - Wish Someone Would Care (1964)
Irma Thomas『Wish Someone Would Care』
「ニューオーリンズのソウル・クイーン」と称されるアーマ・トーマスが、1964年にImperialから発表した歴史的ファースト・アルバム『Wish Someone Would Care』。ニューオーリンズのローカル・シーンで名を馳せていた彼女が、プロデューサーのエディ・レイ(Eddie Ray)と名匠H.B.バーナム(H.B. Barnum)の手腕のもと、全米屈指の女性ソウル・シンガーとして決定的な存在感を示した名盤である。
制作背景と収録曲のエピソード
アルバムの冒頭を飾る表題曲「Wish Someone Would Care」は、当時わずか22歳でありながら複数の幼い子どもたちを抱え、日々の生活苦と孤独に向き合っていたアーマ自身が切々と心情を吐露するように書き下ろした自作曲。切ない語り口と劇的なサビの昂揚が胸を打つ屈指のバラードである。
さらに注目すべきは、ジェリー・ラゴヴォイ(ノーマン・ミード名義)作の「Time Is On My Side」。アーマのエモーショナルな歌唱と曲頭のスポークン・イントロに強く魅了されたローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)が、同年秋にほぼ同じアレンジでカバー録音を敢行。ストーンズにとって全米初のトップ10ヒット(Billboard Hot 100で6位)を記録する世界的出世作となった。
また、ジャッキー・デシャノンとシャロン・シーリーのペンによる軽快なアップテンポ・ナンバー「Break-A-Way」は、シングル「Wish Someone Would Care」のB面に配されたのち、ノーザン・ソウル・シーンで愛聴され、1983年にはトレイシー・ウルマン(Tracey Ullman)によるカバーが全英4位を記録するなど、時代を超えて歌い継がれるスタンダードとなった。
時代の文脈とサウンドの深み
1964年はモータウンがポップ・チャートを席巻し、スタックスやアトランティックをはじめとするサザン/ディープ・ソウルが大きなうねりを生み出していた変革期だった。ミニット(Minit)時代にアラン・トゥーサンと培ったニューオーリンズ特有のアーシーな哀愁やゴスペルの熱気はそのままに、H.B.バーナムによる重厚なストリングスやホーン・セクションが加わることで、全国区のポップ・マーケットにも通用するスケール感豊かなモダン・ソウルへと見事に結実している。
リトル・ウィリー・ジョンのブルース「I Need Your Love So Bad」で聴かせるオーティス・レディングにも通じる情熱的なシャウトや、クライド・マクファターの「Without Love (There Is Nothing)」におけるカントリー・ソウル的アプローチまで、アーマの卓越した表現力が惜しみなく発揮されている。
後世への影響
タイトル曲「Wish Someone Would Care」は全米Billboard Hot 100で最高17位を記録し、アーマにとってキャリア最大のヒット曲となった。ロック史とソウル史を架橋した「Time Is On My Side」やポップ・クラシックとなった「Break-A-Way」の原点としても極めて重要な位置を占めており、60年代女性ディープ・ソウルの最高峰の一枚として今なお色褪せない輝きを放ち続けている。
トラックリスト
- A1 Wish Someone Would Care 2:20
- A2 I Need Your Love So Bad 3:10
- A3 Without Love (There Is Nothing) 2:57
- A4 Please Send Me Someone To Love 2:28
- A5 Another Woman's Man 3:03
- A6 Sufferin' With The Blues 2:18
- B1 Time Is On My Side 2:53
- B2 While The City Sleeps 2:25
- B3 Straight From The Heart 2:26
- B4 I've Been There 2:39
- B5 I Need You So 2:21
- B6 Break-A-Way 2:30
動画プレイリスト
このアーティストについて
Irma Thomasは、1941年2月18日生まれのアメリカのソウル歌手で、ルイジアナ州ポンチャトゥーラ出身。ニューオーリンズを拠点に活動し、「Soul Queen o...
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