James Brown - The Payback (1973)
James Brown『The Payback』(1973)
James Brownの『The Payback』は、1973年にUSのPolydorからリリースされたスタジオ・アルバムで、彼の70年代を代表する一枚としてよく語られる作品だ。ファンクの推進力を前面に出しながらも、ただ踊らせるだけでは終わらない粘りのある展開が続き、Brownのキャリアの中でもかなり重要な位置を占めるアルバムになっている。タイトル曲の存在感が特に大きく、アルバム全体の印象を決定づけている。
70年代James Brownの中核にある作品
James Brownは1960年代にソウルの流れを更新した人物として知られるが、1970年代に入ると、その表現はさらに硬質で、反復の強いファンクへと深まっていく。『The Payback』はその流れがはっきり見える作品で、長めのグルーヴ、細かいブレイク、演奏の隙間を活かした構成が目立つ。オーケストラ的に広げるというより、リズムの芯を何度も叩きつけるような作りで、James Brownらしいバンドの鳴りが前面に出ている。
この時期のBrownはPolydor移籍後に精力的な録音を続けており、『The Payback』はその成果のひとつといえる。70年代のBrown作品の中でも、完成度と存在感の両方で語られることが多く、彼のディスコグラフィーを追ううえで外せないタイトルになっている。
タイトル曲の強さ
アルバムの中心はやはり表題曲「The Payback」だ。のちにシングルとしても存在感を示し、R&Bチャートで1位を記録した代表曲として知られる。曲の進行は派手な展開で押すタイプではなく、同じフレーズを粘り強く反復しながら、少しずつ熱量を上げていく構成。James Brownのボーカルも、メロディをなぞるというより、言葉の切り方や間の取り方でグルーヴを作っていく。
この曲は後年のヒップホップやR&Bで頻繁に参照され、サンプリング源としても非常に重要な位置にある。James Brownの音源がどれだけ後続世代に使われたかを考えると、「The Payback」はその代表例のひとつといえるだろう。ファンクの定型を固定しただけでなく、後のブラック・ミュージックの素材としても機能した点が大きい。
制作背景とアルバムの輪郭
このアルバムは、もともと映画『Hell Up in Harlem』向けに進められていた素材を土台にしていたとされる。結果的には映画には採用されず、独立したアルバムとして形になった。そうした経緯もあってか、曲の並びにはサウンドトラック的な断片性よりも、ひとつの流れとして聴かせるまとまりがある。James Brownの作品の中でも、70年代の現実感や緊張感がそのまま音に出ている一枚という印象が強い。
演奏面では、フレッド・ウェズリーやジャボ・スタークスら、Brownのファンクを支えたプレイヤーたちの名前が重要になる。リズム隊の密度、ギターの刻み、ホーンの差し込み方がきっちり組み合わさり、各曲が短いアイデアの集合ではなく、ひとつのグルーヴとして立ち上がる。James Brownのバンド・サウンドを追う楽しさが、このアルバムにはある。
チャートと評価
『The Payback』は発売後、Soul Albumsチャートで1位を記録し、Pop Albumsチャートでも上位に入った。James Brownにとっても商業的に重要な作品で、彼のスタジオ・アルバムとして唯一のゴールド認定を受けた作品でもある。ヒット曲の強さだけでなく、アルバム全体としてのまとまりが評価された結果と見てよさそうだ。
当時のJames Brownは、ソウルからファンクへと流れが変わる中で、自分の方法を崩さずに進んでいた時期にあたる。Sly & The Family StoneやGeorge Clinton周辺のP-Funkが広がる時代でもあり、その中でBrownはよりタイトで、よりリズム中心のアプローチを突き詰めていた。『The Payback』は、その立ち位置をはっきり示す作品だ。
盤の情報について
このUS盤はPolydorのカタログ番号PD 2-3007で、見開きジャケット仕様。ラベル表記にはタイプセットの違いがあるバリエーションがあり、リリース情報としては1973年の作品として扱われる。盤面の刻印は主にエッチングで、Sterlingのスタンパーが確認されるタイプだ。こうした初期US盤の仕様は、作品そのものの評価とは別に、当時のオリジナル感を伝える要素になっている。
総括
『The Payback』は、James Brownのファンクが最も粘り強く、最も実戦的に鳴っていた時期を切り取ったアルバムだ。タイトル曲の強さが突出している一方で、アルバム全体にも同じ温度が通っていて、70年代のBrownを理解するうえでの軸になる。ソウルからファンクへ、そしてその先のサンプリング文化へとつながる線の中で、この作品が果たした役割はかなり大きい。
トラックリスト
- A1 The Payback 7:35
- A2 Doing The Best I Can 7:50
- B1 Take Some – Leave Some 8:22
- B2 Shoot Your Shot 8:08
- C1 Forever Suffering 5:42
- C2 Time Is Running Out Fast 12:37
- D1 Stone To The Bone 10:05
- D2 Mind Power 10:35