Isopoda - Taking Root (1982)
Isopoda『Taking Root』(1982)レビュー
ベルギー・アールスト出身のプログレッシブ・ロック・バンド、Isopodaが1982年に残した2作目が『Taking Root』である。前作『Acrostichon』に続く作品として位置づけられ、同郷のシーンでは「70年代にはフラマン語圏のGenesis」と呼ばれていたバンドの流れを受けるアルバムでもある。レーベルはベルギーのLark、プロデュースはバンドの歩みそのものが強く反映された一枚、という印象が強い。
本作は、録音から完成までに時間を要した作品として知られている。学業や軍務、資金面、リハーサルや録音の都合が重なり、制作は断続的に進んだ。さらに、途中でギタリストのモチベーション低下が問題になり、最終的には別のギタリストを迎えている。ただし録音はすでに進行しており、その新メンバーはアルバム本編には参加していない。このあたりの経緯も含めて、整然と作られた作品というより、現場の事情を抱えたまま形になった記録として聴こえる。
音楽性は、アート・ロックとプログレッシブ・ロックの軸がはっきりしている。シンフォニックな構想を持ち、アラン・パーソンズ・プロジェクトやCamelに刺激を受けたという背景もある。さらに、地元アールストの交響楽団と共演する形で新作の披露を計画し、指揮者オクターヴ・ブーンに編曲を依頼したというエピソードも残る。ロック・バンドの編成にクラシック楽器の発想を持ち込む試みで、メンバーにとっては学びの多い作業だったようだ。
実際の音の印象としては、装飾だけで押し切るタイプではなく、曲の組み立てや展開に重心が置かれている。前作と比べて芸術性の面で語られることが多い『Acrostichon』に対し、『Taking Root』はその後を受けて、より制作の現実と向き合った作品として見られている。派手なヒット曲で押すアルバムではなく、アルバム全体の流れで聴かせる構成。プログレッシブ・ロックらしい長めの展開や、アンサンブルの呼吸が前に出るタイプの一枚である。
発売当時の反応は厳しかった。フラマン語ラジオでは短い断片しか流れず、しかも否定的なコメントが付いたと伝えられている。プレスや流通の遅れもあり、十分な宣伝ができなかった。売上は1000枚未満にとどまり、バンド側には大きな失望が残ったという。こうした事情を踏まえると、『Taking Root』は商業的な成功作というより、ベルギーのローカルなプログレ・シーンの中で、試行錯誤ごと保存された作品として見えてくる。
ジャケットには友人の写真家ゲールト・カレボートの写真が使われ、地元の青春の空気や仲間意識がにじむ仕上がりになっている。音楽面だけでなく、制作環境や人間関係まで含めて作品の輪郭ができている点も、このアルバムの特徴である。
メンバーはArnold De Schepper、Luc Vanhove、Dirk De Schepper、Geert Amant、Marc Van Der Schueren、Guido Rubbrecht、Walter de Berlangeer。ベルギーのプログレッシブ・ロック史を追ううえで、Isopodaは大きな流通規模で知られるバンドではないが、地元シーンの文脈では無視しにくい存在である。『Taking Root』は、その活動の途中経過をそのまま刻んだような1982年の記録として残っている。
トラックリスト
- A1 Taking Root
- A2 The Usual Start
- A3 Endless Streets
- A4 Sunset Alley
- B1 Harbinger
- B2 Girls Will Be Girls
- B3 The Fall
- B4 O.K. With Me
- B5 Join With The Stream