Steve Hackett - Please Don't Touch! (1978)
Steve Hackett 1978

Steve Hackett - Please Don't Touch! (1978)

Rock Art Rock

Steve Hackett / Please Don’t Touch! (1978, Japan Press)

スティーヴ・ハケットの『Please Don’t Touch!』は、ジェネシス脱退後のソロ活動を本格化させた時期に出た1978年作で、彼のソロ・キャリアの中でも存在感の大きい一枚だ。前作『Voyage of the Acolyte』で示した作曲家としての手腕を引き継ぎつつ、本作では曲ごとの性格をよりはっきり描き分けた構成になっている。プログレッシブ・ロックの文脈にありながら、アコースティックな手触りやポップ寄りの輪郭も見える内容で、ハケットが“元ジェネシスのギタリスト”ではなく、独立したアルバム・アーティストとして動いていた時期の記録として重要な作品。

作品の位置づけ

制作は1977年11月から1978年2月にかけて進められ、ロサンゼルスとロンドンの複数スタジオで録音された。共同プロデュースはスティーヴ・ハケットとジョン・アコック。参加者も幅広く、チェスター・トンプソン、トム・フォウラー、ジョン・ハケット、スティーヴ・ウォルシュ、リッチー・ヘイヴンス、ランディ・クロフォードらが名を連ねる。こうした人選だけでも、ハケットがギター中心のソロ作に閉じず、曲ごとに必要な声や演奏を集めていったことが分かる。

ハケット本人は歌唱を前面に出すタイプではないため、曲によってボーカリストを使い分けているのも本作の特徴。単独のバンド作品というより、作曲者としての視点で全体を組み立てたアルバムで、当時の英国プログレに見られる組曲的な大作志向とは少し距離を取りつつ、細かな音色の切り替えで聴かせる作りになっている。

聴きどころ

冒頭の「Narnia」は、本作を語るうえで外せない代表曲。C.S.ルイスの『ナルニア国物語』から着想を得た楽曲で、ハケットらしいギターの線の細さと、曲の展開を支えるアレンジが印象に残る。シングルとしての動きも意識された曲で、作品全体の入口として機能している。

タイトル曲「Please Don’t Touch!」は、アルバムの中でも異なる温度感を持つ一曲。鋭さよりもリズムの推進力と遊びのある展開が前に出ていて、ハケットのソロ作の中でも耳に残りやすい。全体を通して聴くと、派手な技巧の誇示より、フレーズの配置や音色の切り替えで場面を作っていく印象が強い。

また、収録曲の一部はジェネシスのセッションで試されたこともあり、ハケットのソロ活動とバンド時代の接点も見える。とはいえ本作では、そうした素材がそのまま流用された感じは薄く、ソロ名義の作品としてきちんと組み直されている。

当時の反応とチャート

英国アルバム・チャートでは最高38位、5週間チャートイン。前作『Voyage of the Acolyte』の最高26位と比べると順位は下がるが、ソロ第2作としては一定の存在感を保った。初のチャート入りは1978年5月6日。ジェネシスの知名度を背景にしつつも、ハケット個人の作品として受け止められた記録が残っている。

同時代の英国プログレの中では、ジェネシス周辺の作曲感覚を持ちながら、より個人の趣味と室内的な編成に寄った作品として耳に入る。派手なシンフォニック路線だけでなく、アコースティックな小品や歌ものの設計に力を入れている点が、同時期のソロ作の中でも目立つ。

日本盤について

この日本盤は1978年リリース、Charismaの品番RJ-7372。帯、印刷内袋、インサート付きで、Made in Japan表記。ランアウトはスタンプ刻印とのこと。日本盤としては、当時の国内流通向けにきちんとパッケージされた仕様で、コレクション面でも分かりやすい一枚だ。ジャケットや付属物を含めて、1978年当時の空気をそのまま残している。

『Please Don’t Touch!』は、ハケットがジェネシスの元メンバーという枠を越え、作曲者・編曲者としての輪郭を示した作品。ギターの名手としての顔だけでなく、曲の構造を組み立てる側の視点がはっきり出ていて、1970年代後半の英国プログレの中でも、個人名義アルバムの作法がよく見える内容になっている。

トラックリスト

  1. A1 Narnia
  2. A2 Carry On Up The Vicarage
  3. A3 Racing In A
  4. A4 Kim
  5. A5 How Can I?
  6. B1 Hoping Love Will Last
  7. B2 Land Of A Thousand Autumns
  8. B3 Please Don't Touch
  9. B4 The Voice Of Necam
  10. B5 Icarus Ascending

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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