Janet Jackson - Janet Jackson (1982)
Janet Jackson『Janet Jackson』(1982) レコード紹介
ジャネット・ジャクソンのデビュー作『Janet Jackson』は、1982年9月21日にA&M Recordsから出た1枚で、のちに大きく飛躍する前の出発点にあたるアルバムだ。16歳という若さで世に出た作品で、まだソロの個性が前面に立つ以前の、80年代初頭のR&B、ファンク、ディスコの空気をまとった内容になっている。ジャネット本人の名前をそのまま冠したタイトルも、まずは“この人は誰か”を提示する導入として機能している。
この時期のジャネットは、すでにジャクソン家の一員として知られていたが、ソロ・アーティストとしての立ち位置はまだ固まっていない。制作面では父ジョセフ・ジャクソンが関わり、プロデュースにはRené & Angelaを中心に、フォスター・シルヴァース、ボビー・ワトソン、ジェリー・ウィーヴァーらが参加している。A&Mらしい整った録音感の中で、若い歌声をR&B寄りのポップスに載せた、当時のメジャー・レーベル作品らしい作りだ。
収録曲とシングル
収録は全8曲。オリジナル盤では「Say You Do」がA面の冒頭を飾り、「Young Love」「Come Give Your Love To Me」といったシングル曲が並ぶ。中でも「Young Love」は、このアルバムを代表する曲としてまず挙がる1曲で、後年のジャネットを知る耳で聴くと、まだ声の置き方やフレーズの運びに初々しさが残る。R&Bチャートで6位、Billboard Hot 100で64位を記録しており、デビュー作の中では最も広く認知された曲になっている。
続く「Come Give Your Love To Me」もシングル化され、Hot 100で58位を記録した。「Say You Do」もシングルとして出され、ダンス・チャートで11位、R&Bチャートで15位まで入っている。こうして見ると、アルバム全体は大ヒット作ではないものの、少なくとも当時の市場の中ではシングル単位で反応を取っていたことがわかる。
なお、曲順や収録時間にはメディア差がある。「Say You Do」はLPや一部カセットでは5分20秒だが、CDでは6分49秒と長く収録されている。レコードで聴くと、A面の流れが比較的コンパクトにまとまっている印象だ。
音の作りと同時代の位置
このアルバムの音は、のちの『Control』以降にあるような鋭さや自己主張の強さとはかなり違う。ブギー感のあるベース、軽く跳ねるリズム、ディスコ由来の整ったグルーヴが軸で、80年代初頭のR&Bポップの文法に沿った作りだ。René & Angelaが関わった楽曲には、同時代のアーバン・コンテンポラリーの流れがそのまま入っている。耳を引くのは派手な展開よりも、歌を前に置いた、きれいに整った伴奏のほうだ。
録音場所も複数に分かれていて、A1からA4はAllen Zentz Recorders、Conway Studios、Spindletop、Media West、Davlen Studiosで録音され、Sunset Sound StudioとAllen Zentz Recordersでミックス、Allen Zentz Recordersでマスタリングされている。B面はStudio Masters、Wally Heider Studios、Larrabee Soundで録音され、Sunset Sound Studiosでミックス、Capitol Recordsでマスタリング。80年代前半のロサンゼルス録音らしい、分業の細かさが見えるクレジットだ。
評価とその後の位置づけ
発売当時の評価や売上は、のちのジャネットの大成功と比べると控えめだった。全米Billboard 200では最高63位、R&Bアルバム・チャートでは6位。全世界の売上は約30万枚とされ、当時は期待ほど伸びなかった作品として扱われている。批評面でも厳しく見られ、後年の回顧では「個性がまだはっきりしない」といった指摘がされている。
ただ、作品の位置づけとしては重要だ。ここには、のちに『Control』で前面に出るジャネットの輪郭が、まだ外から与えられた形で残っている。ジャクソン家の文脈、A&Mという大手独立系レーベルの環境、80年代初頭のファンク/ディスコ寄りの制作、そしてシングルでの小さな成功。そうした要素が重なった、キャリアの最初のページである。
レコードとして見るポイント
このUS盤はA&M RecordsのSP6-4907。A&MはHerb AlpertとJerry Mossによって1962年に始まったレーベルで、70年代から80年代にかけて多くのポップ/R&B作品を送り出した。ジャネットのデビュー作も、そのA&Mのカタログの中で、若手アーティストの第一歩として置かれている。1982年のオリジナル盤として手元に置くと、のちの大ブレイク以前の記録として見えてくる部分が多い。華やかな完成形ではなく、まだ形を探している段階のジャネットが残る1枚だ。
トラックリスト
- A1 Say You Do 5:20
- A2 You'll Never Find (A Love Like Mine) 4:08
- A3 Young Love 4:56
- A4 Love And My Best Friend 4:48
- B1 Don't Mess Up This Good Thing 3:54
- B2 Forever Yours 4:58
- B3 The Magic Is Working 4:08
- B4 Come Give Your Love To Me 5:03