Jimmy McGriff - Electric Funk (1970)
Jimmy McGriff 1970

Jimmy McGriff - Electric Funk (1970)

Jazz Funk / Soul Jazz-Funk

Jimmy McGriff『Electric Funk』──ソウル・ジャズからジャズ・ファンクへ向かう1970年の一枚

ジミー・マグリフは、ハモンド・オルガンを軸にしたソウル・ジャズ/ブルース寄りの演奏で知られるオルガン奏者だ。1936年生まれ、フィラデルフィア出身。ピアノから出発し、その後オルガンに本格的に取り組んだ経歴を持つ。『Electric Funk』は、そんなマグリフがBlue Noteに残した最初の作品で、1970年にUS盤として登場した。録音は1969年9月、ニューヨークで行われている。

この時期のBlue Noteは、ハード・バップの時代からさらに進み、ソウル・ジャズやジャズ・ファンクの要素を強めていた。『Electric Funk』もその流れの中に置かれる作品で、短い収録時間の中に、オルガン・ジャズの粘りと、ファンク寄りのリズム、ブラスの切れ味がまとまっている。レーベルの看板だった60年代前半〜中盤の作品群とは少し表情が違い、より実用的で、グルーヴの輪郭がはっきりした内容だ。

アルバムの核にあるホレス・オットの仕事

このアルバムで重要なのが、アレンジャーでありエレクトリック・ピアノも弾くホレス・オットだ。『Back On The Track』『Chris Cross』『Miss Poopie』『Tight Times』といった曲はオットの作曲で、ブラス・セクションを使った簡潔なリフ主体の設計が目立つ。マグリフのオルガンを前に出しつつ、周囲は必要以上に密にならない。そのバランスがこの盤の性格を決めている。

カバー曲の『Spinning Wheel』は、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズのヒットで、デヴィッド・クレイトン=トーマス作。原曲の知名度を借りながらも、ここではロック寄りのヒット曲がそのまま流用されるのではなく、オルガン・コンボの文脈に置き換えられている。オリジナル曲と並べることで、当時のジャズ側がポップスやR&Bの素材をどう取り込んでいたかも見えやすい。

演奏の手触り

後年の資料では、ドラムにバーナード・パーディ、エレクトリック・ベースにチャック・レイニー、トランペットにブルー・ミッチェル、テナー・サックスにスタンリー・タレンタインが参加したとされる。オリジナル盤ではクレジットが明記されていないが、音だけを追っても、リズム隊の推進力とホーンの押し出しはかなり強い。パーディらしい前のめりのドラム・ブレイク、弾力のあるベース、くすんだ質感のオルガン、そこに短いフレーズで食い込むホーンという構図がはっきりしている。

聴感上は、長く引っ張るソロよりも、リフの反復と短い受け答えが中心だ。マグリフのオルガンは派手に暴れ回るというより、グルーヴの芯を支える役回りに近い。そこへブラスが入ることで、単なるオルガン・ジャズではなく、ジャズ・ファンクへ向かう時代の空気が前に出る。AllMusicのスティーヴン・トマス・アールワインが「60年代末のソウル・ジャズの中でも最もファンキーな部類」と評したのも、この手触りを指している。

Blue Noteでの位置づけ

Jimmy McGriffにとってBlue Noteでの初作という点も、このアルバムの意味を大きくしている。Blue Noteは本来、ハード・バップやモダン・ジャズの名門として語られることが多いが、60年代後半から70年代初頭にかけては、より商業性の高いソウル・ジャズやジャズ・ファンクも積極的に取り込んでいた。『Electric Funk』は、その転換期の空気をよく映している。

収録時間は30分強と短めで、そのぶん曲ごとの役割が明快だ。派手な展開を積み上げるタイプではないが、ソウル・ジャズからジャズ・ファンクへ移り変わる途中の、地に足のついたグルーヴが詰まっている。ホレス・オットのアレンジがマグリフを押し出しすぎず、むしろフレーズを引き出していく構造も、この盤の聞きどころになっている。

オリジナル盤について

1970〜71年頃のBlack/Blue label仕様で、盤面下部にはBlue Note表記とともにLiberty UA. Inc. Los Angeles, Californiaのクレジットが入る。ジャケットはU.S.A.印刷で、当時のBlue Noteがすでにレーベル体制の変化の中にあったことも感じさせる。オリジナル盤の素朴な佇まいと、収録内容の実用的なグルーヴ感がよく合っている。

『Electric Funk』は、マグリフの代表作を語るときに真っ先に挙がるタイプの作品ではないかもしれないが、オルガン・ジャズがファンクへ接続していく瞬間を、かなり明確に切り取ったアルバムだ。ブルー・ミッチェルやスタンリー・タレンタインのようなBlue Noteゆかりのミュージシャンの匂いもありつつ、全体は1970年らしい硬質なリズム感でまとまっている。ソウル・ジャズの延長線上にあるジャズ・ファンク盤として、時代の変わり目をそのまま閉じ込めた内容だ。

トラックリスト

  1. A1 Back On The Track 3:18
  2. A2 Chris Cross 3:46
  3. A3 Miss Poopie 3:16
  4. A4 The Bird Wave 4:02
  5. A5 Spear For Moon Dog - Part I 3:29
  6. B1 Spear For Moon Dog - Part II 4:04
  7. B2 Tight Times 3:58
  8. B3 Spinning Wheel 3:35
  9. B4 Funky Junk 3:47

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
Share
戻る

あわせて聴きたい "Jazz-Funk"

toast