Karin Jones - Under The Influence Of Love (1982)
Karin Jones『Under The Influence Of Love』
フィラデルフィア出身の実力派女性ソウル・シンガー、Karin Jones(カリン・ジョーンズ)が1982年にHandshake Records And Tapesから発表した唯一のスタジオ・アルバム(カタログ番号:FW 38155)。教会仕込みのゴスペルに根ざした豊かな歌唱力を誇り、マーヴィン・ゲイの不朽の名曲「Got to Give It Up」(1977年)でバッキング・ヴォーカルを務めるなどセッションやツアーで活躍した彼女が、ニューヨークとフィラデルフィアの最高峰の制作陣とともに吹き込んだ80sモダン・ソウル/ブギーの至高の名盤である。
制作背景と参加陣
本作のプロデュースは、元CBSの幹部ジム・ティレル(Jim Tyrrell)と、名門グループMtume周辺で腕を振るった敏腕ドラマー/プロデューサーのハワード・キング(Howard King)が担当した。アレンジ面では、The O'Jays関連の諸作をはじめフィリー・ソウル黄金期を支えたダン・ピアソン・ジュニア(Dunn Pearson Jr.)やデニス・ウィリアムズ(Dennis Williams)が参加。洗練されたホーンやストリングス、そしてエレクトリックなベースとシンセサイザーが高次元で調和するサウンドを構築した。
レーベルのHandshake Recordsは、元CBS幹部ロン・アレクセンバーグやディスコの先駆者ピーター・マイゼルらによって設立され、CBS配給のもとで当時の最先端ダンス・ミュージックを送り出していた。本作はその音楽的結晶として世に出たものの、レーベルの流通問題等も重なり当時は広く知られることなく埋もれることとなった。
サウンドと聴きどころ
本作の白眉であるタイトル曲「Under The Influence Of Love」は、脈打つベースラインと小気味よいシンセ・スタブが疾走する極上のアーバン・ブギー・ダンサー。後に伝説的クラブDJのティー・スコット(Tee Scott)が手掛けた12インチ・リミックスでも知られ、ニューヨークのガラージ/ロフト・シーンを代表するフロア・クラシックとして神格化された。
さらにアルバムには、The O'Jaysの看板ヴォーカリストであるエディ・レヴァート(Eddie Levert)を迎えた珠玉のデュエット・バラード「Ready, Ready Love」が収録されており、2人の圧巻のヴォーカル・インタープレイが深い感動を呼ぶ。また、流麗なグルーヴが心地よいモダン・ダンサー「Here I Go Again」、フィリー・マナーの甘美なスロー「You Know Me, I Know You」、AOR的な都会派のメロウネスが薫る「Last Night In My Dreams」など、全編にわたって一切の捨て曲が存在しない。
時代の文脈と後世への影響
1982年は、70年代の生演奏主体のフィリー・ソウルやディスコから、シンセサイザーとエレクトリック・ベースを基調としたエレクトロ・ファンク/NYブギーへとダンス・ミュージックが急激に進化を遂げた転換期であった。『Under The Influence Of Love』はその時代の空気を余すところなく捉えている。
カリン・ジョーンズ本人は本作発表から間もない1984年頃に若くして逝去したと伝えられており、彼女が唯一残したリーダー作として希少性が極まり、オリジナル盤LPは世界中のソウル・コレクターが探し求める「聖杯(Holy Grail)」となった。現在では80年代初頭の女性モダン・ソウル/アーバン・ブギーの頂点に君臨する大名盤として高く評価されている。
トラックリスト
- A1 Under The Influence Of Love 5:35
- A2 You Know Me, I Know You 3:35
- A3 Here I Go Again 3:52
- A4 So Right 4:26
- B1 Last Night In My Dreams 5:16
- B2 Ready, Ready Love 4:24
- B3 If You're In A Hurry 3:43
- B4 Ooh! Baby Don't 4:27