Ken Laszlo - Ken Laszlo (1987)
Ken Laszlo『Ken Laszlo』(1987)レビュー
イタロ・ディスコを語るうえで、Ken Laszloは外せない名前のひとつだ。イタリア・マントヴァ出身、本名Gianni Coraini。幼い頃から音楽の才能を見せ、フルートを学び、音楽院も修了している。10代からディスコやクラブで歌い演奏していた経歴を持ち、1984年の「Hey Hey Guy」で一気に存在感を広げた。この1987年のセルフタイトル作『Ken Laszlo』は、その初期の代表曲群をまとめ、当時の活動をひとつのアルバムとして整理した作品になっている。
Memory Recordsの看板アーティストとしての一枚
本作が出たのはイタリアのMemory Records。1983年に設立されたイタロ・ディスコの重要レーベルで、Hipnosis、Koto、Cyber Peopleなどを送り出したことで知られる。Ken Laszloもその中核を担う存在で、このアルバムはレーベルのカラーと本人の持ち味がかなりはっきり出た内容だ。制作はS. CundariとC. Cattafesta、アレンジはS. OlivaとG. Cariaが担当している。録音・ミックスはArlequin StudioとMemery Studiosで行われ、クレジット面からもMemory Records周辺の制作体制がそのまま見える。
ジャケットや盤面の表記も当時のイタリア盤らしい情報量がある。裏ジャケットには制作、録音、写真、カバー、配給まで細かく記され、A面ラベルにはSIAEスタンプも入る。収録時間の表記にA3の4分30秒と4分00秒の違いがある点も、実際のプレスや表記の揺れとして興味深い部分だ。こうした細部は、80年代イタリア盤の空気をそのまま残している。
収録曲はヒット曲の再構成が中心
このアルバムの核は、1984年以降に発表したシングル群の再提示にある。「Hey Hey Guy」「Tonight」「Don’t Cry」といった代表曲が収められ、それぞれリミックスや別バージョンで配置されている。特に「Tonight (Remix)」「Don’t Cry (Remix)」「Hey Hey Guy (USA Remix)」の並びは、当時すでにヒット曲だった楽曲を、アルバムの流れに合わせて再編集した構成として分かりやすい。
一方で、「1-2-3-4-5-6-7-8」「Glasses Man」といった新曲も入っており、単なるベスト盤的なまとめでは終わっていない。既発曲の再録・再編集と新曲を混ぜることで、Ken Laszloの1987年時点の像を1枚に収めた作りになっている。シングルで追ってきた人には整理版として機能し、アルバム単位で触れると当時の制作のまとまりが見えやすい。
音の印象と時代感
実際に聴くと、打ち込みのリズム、シンセの輪郭、ボーカルの抜け方が非常に分かりやすい。イタロ・ディスコ特有の機械的なビートに、メロディを前へ押し出す作りで、Ken Laszloの声がその中心に置かれている。音の密度は高いが、過剰に重くはならず、クラブ向けの推進力と歌ものとしての分かりやすさが両立している。
「Hey Hey Guy」は彼の代表曲として今も名前が挙がりやすいが、このアルバムではそのヒット曲が単独で浮かず、同系統の楽曲群の中に置かれているのが面白い。1980年代中盤のイタロ・ディスコは、ダンスフロア向けの反復と、耳に残るフレーズの両方が重要だったが、本作はその作法がはっきり出た一枚だ。KotoやHipnosisのような同レーベル勢と並べても、Ken Laszloはよりボーカル主体で、曲の輪郭がはっきりしている。
Ken Laszloの位置づけ
Ken Laszloにとってこのアルバムは、1984年のブレイク以降に積み上げたヒットを、1987年時点でひと区切りとしてまとめた作品として見やすい。本人の代表曲がすでに広く知られていた時期に、Memory Recordsの看板アーティストとしての立ち位置を固定した内容でもある。ヨーロッパだけでなく、アジアやベネズエラでも支持を得たという経歴を踏まえると、この盤はローカルなイタリア盤にとどまらず、当時の国際的なイタロ・ディスコ流通の一端を示すものでもある。
派手な物語を前面に出すタイプの作品ではないが、80年代イタロ・ディスコの制作現場、レーベルの設計、ヒット曲の扱い方がそのまま見える一枚。Ken Laszloの初期キャリアを追ううえで、かなり要点がまとまったアルバムだ。
トラックリスト
- A1 Tonight (Remix) 6:50
- A2 Let Me Try 4:23
- A3 Black Pearl 4:00
- A4 Glasses Man 4:07
- B1 1-2-3-4-5-6-7-8 4:30
- B2 Talkin 4:20
- B3 Don't Cry (Remix) 4:09
- B4 Hey Hey Guy (USA Remix) 5:42