Marillion - Clutching At Straws (1987)
Marillion『Clutching At Straws』(1987)
イギリスのネオ・プログレッシブ・ロック(ポンプロック)を牽引したマリリオン(Marillion)が、1987年6月にEMIから発表した通算4作目のスタジオ・アルバム。前作『Misplaced Childhood』の世界的成功に続き、ローリング・ストーンズ等で知られる名匠クリス・キムジー(Chris Kimsey)をプロデューサーに迎えてロンドンのウエストサイド・スタジオ(Westside Studios)で録音された。本作は初期マリリオンの顔であり、カリスマ的作詞家・ヴォーカリストとして君臨したフィッシュ(Fish:本名デレク・ウィリアム・ディック)在籍時最後のアルバムである。
制作背景・エピソード
全英1位を獲得した前作のメガヒットに伴う過密な世界ツアー、急激な名声の重圧、アルコールやドラッグへの依存、そしてバンド内の軋轢が極限まで高まる中で制作が進行した。プロデューサーのクリス・キムジーは緊迫する人間関係の緩衝材となりながら制作を指揮。過酷なスケジュールで疲弊したフィッシュの喉の負担をカバーするため、敏腕女性シンガーのテッサ・ナイルズ(Tessa Niles)をバッキング・ヴォーカルに起用した。本作を引っ提げたツアー終了後の1988年、フィッシュは惜しまれつつバンドを脱退した。
時代の文脈とコンセプト
前作『Misplaced Childhood』が描いた甘美で少年期的なノスタルジーとは対照的に、本作は「トーチ(Torch)」という名の酒浸りで精神的に追いつめられた29歳の落ちぶれたロック・シンガーを狂言回しに据えた、極めてダークでシニカルなコンセプト・アルバムとなっている。
過酷なツアー生活の孤独と破局を歌った名バラード「Sugar Mice」、セレブリティ文化の空虚さを自嘲と激しいビートで叩きつける「Incommunicado」、そして冷戦末期の混沌や台頭するネオナチズムへの痛烈な危機感を告発した重厚な「White Russian」など、1980年代後半の現実の暗部を容赦なく抉り出している。
サウンドと評価
スティーヴ・ラザリー(Steve Rothery)の咽び泣くような叙情派ギター・ソロ、マーク・ケリー(Mark Kelly)の色彩豊かなシンセサイザー、ピート・トレワヴァス(Pete Trewavas)とイアン・モズレイ(Ian Mosley)によるダイナミックなリズムセクションが、フィッシュの演劇的で鬼気迫る歌唱と完璧な調和を見せる。全英アルバム・チャート2位を記録しゴールド・ディスクを獲得、「Incommunicado」も全英トップ10入りを果たした。フィッシュ時代の芸術的頂点を示す傑作として、後年のプログレッシブ・ロックやオルタナティブ・ロック勢からも絶大な支持を集め続けている。
トラックリスト
- A1 Hotel Hobbies 3:37
- A2 Warm Wet Circles 4:23
- A3 That Time Of The Night (The Short Straw) 5:56
- A4 Just For The Record 3:08
- A5 White Russian 6:26
- B1 Incommunicado 5:14
- B2 Torch Song 4:05
- B3 Slàinte Mhath 4:40
- B4 Sugar Mice 5:44
- B5 The Last Straw: Happy Ending 5:48
動画プレイリスト
このアーティストについて
Marillion(マリリオン)は、1979年にイギリス・バッキンガムシャー州エイルズベリーで結成されたプログレッシヴ・ロックバンドである。1970年代のプ...
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