高中正義 = Masayoshi Takanaka - An Insatiable High (1977)
Masayoshi Takanaka 1977

高中正義 = Masayoshi Takanaka - An Insatiable High (1977)

Jazz Funk / Soul Fusion Jazz-Funk

高中正義『An Insatiable High』――ロサンゼルスのフュージョン人脈と結びついた1977年作

高中正義の『An Insatiable High』は、1977年12月1日に日本のKitty Recordsから出た3作目のソロ・アルバム。サディスティック・ミカ・バンド、サディスティックスを経てソロへ進んだ高中が、ギターを中心に据えたインストゥルメンタル作品として仕上げた一枚で、同年に『SEYCHELLES』『TAKANAKA』と続いた流れの中でも、制作規模の大きさが目を引く作品になっている。ロサンゼルスのフュージョン・シーンとの接続、そして日本側の音楽家との組み合わせが、このアルバムの輪郭をはっきりさせている。

制作背景と録音メンバー

本作の録音は、カリフォルニア州ノース・ハリウッドのLarrabee Sound Studiosで行われた。参加したのは、当時のロサンゼルスを代表するセッション・ミュージシャンたちで、ギターにLee Ritenour、キーボードにPatrice Rushen、ドラムにHarvey MasonとEd Greene、ベースにChuck RaineyとAbraham Laboriel、パーカッションにPaulinho da CostaとSteve Formanが名を連ねる。さらに「Sexy Dance」「E.S.P.」「M5」の3曲では、Tower of Powerのホーン・セクションであるEmilio Castillo、Lenny Pickett、Steve Kupka、Greg Adams、Mic Gilletteも加わっている。コーラスにはJim Gilstrapらが参加し、日本側からは深町純がキーボードとストリングス・アレンジ、浜口茂外也と村上“ポンタ”秀一が打楽器で参加している。

プロデュースは高中本人。自作の方向性を自分でまとめながら、ロサンゼルスの一線級プレイヤーを集め、ギターを前面に出したフュージョン作品へまとめ上げた構図が見える。タワーレコードの紹介では、本作は「高中とジェントル・ソウツとの共演アルバム」とされ、Lee Ritenourとのギター・コンビネーションも聴きどころとして挙げられている。ジェントル・ソウツは、Ritenourが日本のJVCの依頼で録音したダイレクト・カッティング盤『Gentle Thoughts』の際のバンド名で、Patrice Rushen、Harvey Mason、Steve Formanら本作の中心メンバーと重なっている点も興味深い。

1977年という時代の中で

1977年は、高中にとってソロ活動を加速させた年でもある。前年の1976年7月に『SEYCHELLES』でソロ・デビューし、1977年3月に『TAKANAKA』、そして12月に本作という流れで、1年に2枚という速いペースで作品を出している。この動きは、当時の日本のレコード制作とロサンゼルスのフュージョン系ミュージシャンが直接つながっていた状況とも重なる。JVCがLee Ritenourのバンドにダイレクト・カッティング盤を録音させていたのと同じく、日本のレーベルやアーティストが、アメリカ西海岸の現場と近い距離で制作を進めていた時期だった。

高中はサディスティック・ミカ・バンド出身のギタリストであり、ロック・バンドで培った感覚を持ちながら、本作ではインストゥルメンタルのフュージョンへ軸足を置いている。ロサンゼルスの面々との共演によって、ジャズ、ファンク、洗練されたスタジオ・ワークが同居する構成になり、同時代の日本のフュージョンや、シティ・ポップに隣接する領域とも接点を持つ作品として受け止められてきた。

代表曲「MALIBU」と後世への広がり

収録曲の中では「MALIBU」が代表曲としてよく挙げられる。タワーレコードの紹介でも「永遠の名曲」とされており、このアルバムを語るうえで外せない一曲になっている。

本作を含む高中の音楽は、2010年代半ば以降、日本国外の若い世代がオンラインで発見したことをきっかけに再評価が進んだ。海外のレコード店では、ジャズ・フュージョン、ファンク、トロピカルな色彩、磨かれたスタジオ・ワークを一枚にまとめ、今も高揚感があってモダンに響く作品として紹介されている。日本のジャズ・ファンクや、シティ・ポップ周辺のフュージョンを掘る流れの中で参照されることも多い。

再発面でも動きがある。2024年には高中の人気作4枚がリマスターされ、180g重量盤のカラー・アナログで再発されている。また、ユニバーサル ミュージック ジャパンがオリジナル・マスターテープをもとに制作し、Abbey Road StudiosのAlex Whartonがリマスターとラッカー・カッティングを手がけたクリア・イエロー盤も登場した。オリジナル盤はシングル・ジャケットに帯とクレジット・インサートが付いた仕様で、1977年当時の日本盤らしいまとまりを持っていた一方、近年の再発では音質面とコレクション性の両方が意識されている。

まとめ

『An Insatiable High』は、高中正義がソロ活動の初期に、ロサンゼルスのフュージョン人脈と結びつきながら作り上げた作品。ギター主体のインストゥルメンタルとしての明快さと、Tower of Powerのホーンや日本側ミュージシャンの参加による厚みが同居している。1977年という、日本とアメリカ西海岸の音楽制作が近づいていた時代を映す一枚でもある。

トラックリスト

  1. A1 Sexy Dance 5:51
  2. A2 Malibu 6:16
  3. A3 An Insatiable High 10:08
  4. B1 E.S.P. 4:11
  5. B2 M5 4:23
  6. B3 Sundrops 5:10
  7. B4 Good (Bad?) Old Days 5:25

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Masayoshi Takanaka

Masayoshi Takanaka

Masayoshi Takanakaは、東京生まれの中国系日本人ギタリストだ。出生名はMasayoshi Liuで、4年生のときに帰化して現在の名前になった。音楽活動の初期...

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