Herbie Hancock - Monster (1980)
Herbie Hancock 1980

Herbie Hancock - Monster (1980)

Jazz Funk / Soul Jazz-Rock Disco Jazz-Funk Soul-Jazz

Herbie Hancock『Monster』

1980年にColumbiaから出たHerbie Hancockの『Monster』は、前作『Feets, Don’t Fail Me Now』で進めていたダンス路線をさらに押し広げた作品だ。録音はロサンゼルスのThe Village Recorder、United Western Studios、サンフランシスコのThe Automattで行われ、制作はデヴィッド・ルビンソンとの共同プロデュース。クレジット上ではA product of Catero Sound Company, San Franciscoとも記されている。

制作背景・エピソード

このアルバムでは、ハンコックがショルダー型キーボード「Clavitar」を携え、ロックのダイナミズムを大胆に導入した。参加ミュージシャンも豪華で、オープニングの「Saturday Night」にはカルロス・サンタナが客演し、ラテン・ロック色の強いギターを聴かせる。リズム隊はアルフォンス・ムゾーン(ドラム)とフレディ・ワシントン(ベース)、ギターにワー・ワー・ワトソン、パーカッションにシーラ・E。ヴォーカルにはグレッグ・ウォーカーとギャヴィン・クリストファーが起用されている。

「Stars In Your Eyes」にはレイ・パーカー・ジュニアもソングライティングとギターで参加しており、さらに彼とともに、マキシン、ルーサー、オーレンのウォーターズ兄妹がArista Records所属としてクレジットされている。レコーディングの参加者がはっきり見える構成で、複数のスタジオをまたいで制作されたことも含め、当時のハンコックの制作規模の大きさがそのまま残っている。

時代の文脈

1980年初頭のハンコックは、1979年の『Feets, Don’t Fail Me Now』から続くエレクトリックな路線を進めていた。『Monster』はその延長線上にあり、ディスコ、ファンク、アリーナ・ロック、ブラック・コンテンポラリー、エレクトロニック・ポップが交錯する時期の作品として置かれている。ジャズの領域にいながら、最新の電子楽器やダンス・ビートを取り込んでいく流れの中で作られたアルバムだ。

この作品のあと、ハンコックは1983年の『Future Shock』で「Rockit」へつながる大きな展開を迎えるが、『Monster』はその前段にあたる。キャリアの中では、1960年代のアコースティックなジャズから、1970年代のフュージョン、そして1980年代のポップ/ダンス志向へと続く動きの一枚として記録されている。

収録曲と評価

収録曲では「Saturday Night」「Stars In Your Eyes」「Go For It」のプロモ盤が米ビルボード・ダンス・チャートで合算12位まで上昇。とくに「Stars In Your Eyes」は、デヴィッド・マンキューソ主宰の「The Loft」や、ラリー・レヴァンがプレイした「Paradise Garage」など、NYアンダーグラウンド・クラブ・シーンにおいて永遠のロフト/ガラージ・クラシックとして定着した。11分超に及ぶ12インチ「Special Disco Remix」は、後世のハウス・ミュージックやモダン・ブギー、レア・グルーヴのDJたちにマスターピースとして愛され続けている。

サウンド面では、アルフォンス・ムゾーンのパワフルなビートとフレディ・ワシントンの強靭なベースが土台を作り、その上にハンコックのエレピやシンセサイザーが重なるグルーヴが秀逸。「Saturday Night」でのサンタナの熱いギターソロ、「Stars In Your Eyes」におけるギャヴィン・クリストファーの甘美な歌声と洗練されたコードワーク、「Go For It」の爽快なダンス・ビートなど、フュージョン・ファンクと上質なAOR/ソウルが一体となった完成度を誇る。米ビルボードではジャズ・アルバム・チャート3位、R&Bチャート19位、総合アルバム・チャート94位を記録した。

ジャズの枠を軽やかに飛び越え、同時代のダンス・ミュージックやロックの熱気と真正面から共鳴した『Monster』。のちのクラブ・カルチャーへと受け継がれるキラー・チューンを収めた、1980年代初頭のハンコックの越境的アプローチを雄弁に物語る名盤だ。

トラックリスト

  1. A1 Saturday Night 7:13
  2. A2 Stars In Your Eyes 7:01
  3. A3 Go For It 7:28
  4. B1 Don't Hold It In 8:02
  5. B2 Making Love 6:23
  6. B3 It All Comes Round 5:50

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Herbie Hancock

Herbie Hancock

Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)は、1940年4月12日生まれ、アメリカ・イリノイ州シカゴ出身のジャズ・ピアニスト、キーボーディスト、作曲家...

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