Nosound - A Sense Of Loss (2009)
Nosound 2009

Nosound - A Sense Of Loss (2009)

Rock Prog Rock

Nosound『A Sense Of Loss』について

Nosoundの『A Sense Of Loss』は、2009年に発表された3作目のスタジオ・アルバムで、Giancarlo Erraを中心にしたこのユニットの方向性がよく見える作品だ。Nosoundはイタリアを拠点に活動してきたバンドで、オルタナティヴ・ロック、ポストロック、アンビエント、アートロックの要素を横断しながら、派手な展開よりも音の余白や質感を重ねていくタイプの音楽で知られている。本作もその流れにあり、プログレッシブ・ロックの棚に置かれながら、実際の聴感は静かな内省と音響的な広がりに重心がある。

リリース元はKscope。2008年に立ち上がったロンドンのレーベルで、当時の先鋭的なプログレ/オルタナティヴ系アーティストを扱っていた流れの中で、Nosoundも迎えられた。『A Sense Of Loss』はそのKscope期を代表する1枚として扱われることが多く、バンドにとっても外部からの注目が本格化した時期の作品として位置づけられている。盤としては2017年のドイツ盤で、ゲートフォールド仕様に加えてCDも付属する構成。オリジナルの2009年盤から時間を置いた再発で、作品を手元で聴く導線が整えられた形だ。

音の印象

このアルバムでまず目につくのは、音数の少なさではなく、音の置き方の慎重さだ。ギター、鍵盤、弦のレイヤーが前に出すぎず、曲の輪郭を少しずつ浮かび上がらせる。レビューでもしばしば触れられている通り、全体のムードは明るくはなく、沈んだ感情をそのまま押しつけるのでもなく、静かな温度で保たれている。Pink Floyd、Brian Eno、Tangerine Dream、Porcupine Treeといった名前が引き合いに出されるのも納得できる。ロックの推進力より、空間の作り方や音の持続に耳が向く。

聴いていると、旋律が前面に出る場面でも過度に感情を煽らない。メロディはきれいに流れるが、すぐに消えていく音像の中に置かれているため、印象は強いのに主張は強くない。AllMusicがこの作品を「憂鬱で、浮遊感のある」作風と評したのも、そのあたりを指しているのだと思う。弦楽四重奏の導入によって音像に厚みが出ている点も重要で、バンド編成だけでは出しにくい陰影が加わっている。

アルバムの立ち位置

『A Sense Of Loss』は、Nosoundの初期作の中でも、構成の精密さと静けさのバランスがはっきりした作品として見られている。前作『Lightdark』と比べて、より簡素で、より静謐な方向に寄ったという受け止め方が多い一方で、音の密度が下がったわけではない。むしろ、余分な装飾を削ったことで、弦や残響、ギターの減衰がより細かく聞こえる。派手なリフや展開で押すタイプではなく、曲が進むほどに空気の層が変わっていく感覚がある。

この時期のNosoundは、Giancarlo Erraの個人プロジェクト的な性格がまだ強く、録音や制作面でもErraが中心に関わっていた。後にライブ活動が広がり、メンバー編成も固まっていくが、『A Sense Of Loss』はその前段階の、作家性が強く出た時期の記録として読むと分かりやすい。作品全体に一貫しているのは、感情を大きく見せることより、抑えた語り口のまま長く残る響きを作る姿勢だ。

同時代の文脈

2000年代後半のKscope周辺には、ポストロックやアンビエント、室内楽的な要素を持つ作品が多く、Nosoundもその流れの中で受け止められた。とはいえ、本作は単純に“静かなプログレ”という言葉で片づけるには要素が多い。ロックのバンド演奏が土台にありながら、電子音や残響処理、弦の使い方が前景と背景を行き来する。その作りは、同時代の英国プログレ勢や、シネマティックな音作りを志向するアーティスト群とも響き合っている。

影響源としては、バンド自身が挙げているRadiohead、Sigur Rós、Pink Floyd、Arvo Pärt、Brian Eno、Bark Psychosisなどが、実際の音の感触にもつながっている。特に、メロディの切なさと空間処理のバランス、そして極端にドラマティックになりすぎない構成の取り方に、その痕跡が見える。

まとめ

『A Sense Of Loss』は、Nosoundが持つ内省性と音響感覚を、比較的まとまった形で提示したアルバムだ。2009年のオリジナル発表時点で、すでにバンドの個性は明確だったが、この作品ではその個性がより静かな形で整理されている。2017年のドイツ盤はゲートフォールド仕様でCDも付くため、アルバム単体として手に取りやすい構成になっている。派手な起伏ではなく、音の層と間合いで聴かせる1枚として記憶される作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Some Warmth Into This Chill
  2. A2 Fading Silently
  3. B1 Tender Claim
  4. B2 My Apology
  5. B3 Constant Contrast
  6. C1 Winter Will Come
  7. D1 The Slow Deceit
  8. D2 Fading Silently ( alt )

動画プレイリスト

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