Pete Jolly - Seasons (1970)
Pete Jolly『Seasons』
ピート・ジョリーが1970年にA&M Recordsから発表した『Seasons』は、彼のキャリアの中でもかなり特殊な位置にある作品だ。ジャズ・ピアニスト/アコーディオン奏者として知られ、テレビや映画の仕事でも活動してきたジョリーが、このアルバムではピアノだけでなくウーリッツァーのエレクトリック・ピアノ、フェンダー・ローズ、ハモンド・オルガン、アコーディオン、ミュゼット、Sano Voxまで弾き分けている。
制作背景・エピソード
本作のプロデュースはA&Mの共同創設者ハーブ・アルパート。録音にはジョリーのほか、チャック・バーグホーファー(ベース)、ポール・ハンフリー(ドラムス)、ジョン・ピサーノ(ギター)、ミルト・ホランドとエミル・リチャーズ(パーカッション)が参加した。セッションはわずか4時間で12曲を即興的に演奏し、そのテープを編集したうえで、一部にオーバーダビングを加えて完成したという。
バーグホーファーは「何ひとつ譜面に書かれていなかった。少しずつ自分で見つけていった」と振り返っており、ジョリーが主導してその場で組み立てていった録音だったことがわかる。後から音を重ねたのはジョリーとアルパートだったのではないか、という証言も残る。一方で、メンバー選びについては、アルパートがジョリーの選択だったと語るのに対し、バーグホーファーはアルパートが決めたと話していて、ここは証言が食い違っている。
収録曲のうち、リチャード・ロジャース&オスカー・ハマースタインの「Younger Than Springtime」と、表題曲「Seasons」(ロジャー・ニコルズ作)を除く曲はジョリーのオリジナル。「Indian's Summer」のブラス・アレンジだけはビル・ホルマンが担当している。ライナーノーツでは、本作を豪華なアレンジやスタジオの小細工がない「根本的な方向転換」と紹介している。
時代の文脈
ジョリーは本名Peter A. Ceragioli Jr.。幼い頃にはラジオ番組『Hobby Lobby』で「The Boy Wonder Accordionist」として登場し、13歳でギタリストのハワード・ロバーツと知り合い、生涯の盟友となった。1952年にロサンゼルスへ移ってからは、ショーティ・ロジャースらとともにウエストコースト・ジャズの現場で活動し、1950年代半ばから後半にかけてはダウンビート誌の読者投票でたびたび上位3位に入っている。1963年には自作「Little Bird」でグラミー賞にノミネートされた。
その後は『Get Smart』『Mannix』『M*A*S*H』などのテーマ曲や映画音楽のスタジオ・ワークでも知られるようになる。そうした経歴の流れの中で『Seasons』は、アルバム紹介でも「異色作」「驚くべき方向転換」とされている。A&Mにとっても、この時期は1969年に英国法人、1970年にカナダ法人が設立されるなど、レーベルの拡大が進んでいた時期にあたる。
後世への影響
発売当時の売れ行きは振るわず、アルパートも「期待したほどには売れなかった」と認めている。アナログ盤は1970年以来再発されず、CD化も2007年に一度あっただけだったが、2024年にはLight in the Atticから再発が実現した。2023年1月にはオリジナル盤がInstagramで出品され、5分で売れたというエピソードも残る。
作品の存在感を後押ししたのがサンプリングだ。「Leaves」はデ・ラ・ソウル、サイプレス・ヒル、レッドマンに、「Springs」はナイトメアズ・オン・ワックスとUgly Ducklingに、「Seasons」は元Cannibal OxのVast Aireに使われている。Light in the AtticのDave Segalは本作を「独特で謎めいた」作品、「サンプリングしたくなる豊かさ」や「サブリミナルなファンク」を備えた、ジョリーの最高傑作と評している。
ヒップホップ側からの参照と、長く再発が限られていた状況が重なって、オリジナル盤の希少性も高まっていった作品。1970年のA&M盤として出たこの『Seasons』は、ジョリーのディスコグラフィーの中でも後から注目が集まった1枚になっている。
トラックリスト
- A1 Leaves 1:43
- A2 Younger Than Springtime 2:14
- A3 Bees 2:54
- A4 Rainbows 1:11
- A5 Plummer Park 4:25
- A6 Springs 3:06
- B1 Seasons 3:45
- B2 Sand Storm 2:02
- B3 Autumn Festival 3:14
- B4 Prairie Road 2:50
- B5 The Indian's Summer 3:40
- B6 Pete Jolly 1:45