Deodato - Love Island (1978)
Deodato『Love Island』(1978年・US盤)
ブラジル出身のキーボード奏者、エウミール・デオダートが1978年にWarner Bros. Recordsから発表したアルバム。ジャズを土台にしながら、ファンク、ディスコ、ラテンの要素を自然に混ぜるのがデオダートの持ち味で、この『Love Island』もその路線をはっきり示す1枚になっている。大編成のアレンジを前面に出しつつ、演奏の重心はダンス・ミュージック寄り。1970年代後半のクロスオーバー・ジャズの空気を、そのまま記録したような作品だ。
作品の位置づけ
デオダートは1970年代にソロ・アーティストとして大きく存在感を示した人物で、同時に多くのプロデュースやアレンジでも知られる。本作は、そうした活動の中でもフュージョンとディスコの接点に寄った時期の作品として聞こえる。ジャズ・ファンクの緻密さと、当時のクラブ向けのビート感が同居していて、彼の音楽が単なる技巧派のクロスオーバーではなく、実際に身体を動かす音楽として作られていたことが分かる。
録音はカリフォルニアとニューヨーク周辺の複数スタジオで行われている。西海岸のCapitol RecordingやHollywood Sound、Warner Bros. Recording Studiosに加え、東海岸ではHouse of MusicやMediasoundが使われている。こうした分散した録音環境もあって、音の輪郭ははっきりしている一方、空間の広がりも確保されている。
収録曲と聴きどころ
曲名からして南国ムードを前面に出した楽曲が並ぶ。Area Code 808、Tahiti Hut、Pina Colada といったタイトルは、アルバム全体のイメージをそのまま示している。なかでも Whistle Bump は代表曲として知られ、シングルとしても動きがあった。リズムの押し出しが強く、ホーンやキーボードのフレーズが細かく絡みながら進む構成で、デオダートらしいアレンジの密度がある。
Tahiti Hut にはアース・ウィンド&ファイアーのメンバーが参加しており、モーリス・ホワイト、ヴァーダイン・ホワイト、フレッド・ホワイト、フィリップ・ベイリーの名前がクレジットされている。ここでは当時のファンク・バンドらしい推進力が前に出ていて、デオダートのオーケストレーションとぶつかり合うというより、しっかり噛み合っている印象が残る。
また、ジョージ・ベンソン、ラリー・カールトン、ハーヴィー・メイソン、アル・マッケイ、ランディ・ブレッカー、ヴィクター・フェルドマンら豪華な参加陣も目を引く。ギター、ドラム、ホーンのそれぞれが役割を明確に持ち、ソロが前に出る場面でも全体のグルーヴが崩れない。最後をデューク・エリントンの Take the A Train で締める流れも含めて、ジャズの伝統と70年代の都会的なダンス感覚をつなぐ作りになっている。
サウンドの特徴
実際に聴くと、ベースラインの跳ね方とドラムの刻みがかなり重要で、そこにデオダートの鍵盤が厚みを足していく。単に派手なだけでなく、各パートの入り方や抜き方が計算されていて、曲の展開が細かい。ジャズ・ファンクの硬さと、ディスコ期らしい滑らかな流れが同居しているため、同時代のフュージョン作品の中でも、よりダンサブルな方向に寄っている。ジョージ・ベンソンの『Breezin'』のような洗練されたクロスオーバーや、当時のEW&F周辺のファンク感と並べて聴くと、輪郭の違いが見えやすい。
タイトル曲 Love Island と Tahiti Hut は、アルバムの中でも特にテーマ性が分かりやすい。南国、リゾート、夜のクラブといったイメージを、音の配置だけで組み立てている。単に明るいだけの音ではなく、ホーンの重なりやリズムの粘りがあるため、軽快さの中に演奏の手応えが残る。
USオリジナル盤について
このUS盤はWarner Bros. RecordsのBSK 3132。1978年のリリース時点では、同レーベルの後期パームツリー系デザイン期にあたる。ゲートフォールド仕様で、ランアウトにはMASTERDISKの刻印やCapitol Los Angelesプレスを示す要素がある。こうした点からも、当時のメジャー・レーベルの制作体制が見えてくる。盤としては、同じ1978年の作品をそのまま受け取るオリジナル期の仕様で、後年の再発盤とはレーベル面の意匠やプレスの違いが出やすいタイプだ。
まとめ
『Love Island』は、デオダートのジャズ・ファンク志向が、1978年のディスコ期の空気ときれいに接続したアルバム。豪華な参加ミュージシャン、複数スタジオでの録音、南国イメージを軸にした曲名、そして Whistle Bump のような代表曲がそろい、作品全体の輪郭はかなり明確だ。デオダートの70年代を追ううえでも、当時のジャズとファンクがどこで交差していたかを見るうえでも、重要な位置にある1枚。
トラックリスト
- A1 Area Code 808 6:44
- A2 Whistle Bump 4:31
- A3 Tahiti Hut 4:27
- A4 San Juan Sunset 4:15
- B1 Love Island 6:38
- B2 Chariot Of The Gods 3:07
- B3 Pina Colada 5:54
- B4 Take The A Train 3:48