Placebo - Placebo (1974)
Placebo『Placebo』
ベルギーの鬼才キーボード奏者/プロデューサーであるマーク・ムーラン(Marc Moulin)が率いたジャズ・ロック/ジャズ・ファンク・バンド、プラシーボ(Placebo)の通算3作目にしてラスト・スタジオ・アルバム(通称『1974』)。1974年2月にブリュッセルで録音され、EMI傘下の名門プログレッシヴ・レーベルであるハーヴェスト(Harvest)からリリースされた。オリジナルLPは極少プレスであったため、長年にわたり世界中のレコード・コレクターが探し求める幻の激レア盤として知られている(なお、1990年代結成のイギリスのオルタナティヴ・ロック・バンドとは同名異グループ)。
制作背景・エピソード
本作は、ブリュッセルにてEAR Productionの手により制作された。メンバーにはマーク・ムーランを中心に、ジャズ・ギターの名手フィリップ・カテリーン、リシャール・ルスレ(トランペット/フリューゲルホルン)、フランシス・ワイエル(ギター)、そしてブルーノ・カステルーチとガルシア・モラレスによる重量級のツイン・ドラム/パーカッション編成など、ベルギー最高峰のジャズ/スタジオ・ミュージシャンが集結している。高度なインタープレイと緻密なアレンジが、スタジオ・セッションの中で研ぎ澄まされた作品である。
時代の文脈とサウンド
1970年代初頭から中盤にかけて、マイルス・デイヴィスのエレクトリック・ジャズやウェザー・リポート、ハービー・ハンコックのヘッドハンターズが切り拓いたエレクトリック・ジャズ・ファンクの潮流はヨーロッパにも大きな衝撃を与えた。本作はその影響を色濃く反映しつつ、アメリカの泥臭いファンクとは異なる、ヨーロッパ特有の知性とシニカルなユーモア、実験精神が息づく独自のジャズ・ロックを創出している。
ムーランが奏でるフェンダー・ローズの甘美で浮遊感に満ちたエレピや、モーグやARPなどの黎明期アナログ・シンセサイザーの独創的なトーン、鋭角的なホーン・リフ、そしてタイト極まりないツイン・ドラムの躍動が最大の聴きどころである。オープニングを飾る疾走感あふれる「N.W.」、ミニマルでトリッキーなビートが癖になる「Plotseling」、粘り気のあるグルーヴが心地よい「Dag Madam Merci」や「S.U.S.」など、全編にわたってシネマティックで高密度なジャズ・ファンクが展開されている。ムーランはプラシーボ解散後、1970年代末に先鋭的シンセポップ・グループのテレックス(Telex)を結成して世界的成功を収めるが、本作はその先鋭的なエレクトロニクスへの嗅覚とジャズの即興美が見事に交差した頂点といえる。
後世への影響
1990年代以降のアシッド・ジャズ/レア・グルーヴ・ムーヴメントおよびヒップホップのディギング・カルチャーにおいて、プラシーボの残したカタログは世界中のトップDJやプロデューサーから熱狂的に支持された。J・ディラやピート・ロックが初期作『Ball of Eyes』収録の「Humpty Dumpty」をサンプリングしたことで知られるが、本作『Placebo』からも「S.U.S.」がマッドリブ(Madlib)に、「Dag Madam Merci」がコモン(Common)に、「N.W.」がフランスのMCソラー(MC Solaar)「Insha'allah」にサンプリングされるなど、ヒップホップ黄金期のクリエイターたちに絶大なインスピレーションを与えた。
後年の公式リイシューやコンピレーションを通じてその全貌が広く知れ渡り、現在では1970年代ヨーロッパ産ジャズ・ロック/レア・グルーヴの最高峰に位置づけられる歴史的名盤である。
トラックリスト
- A1 N.W. 6:38
- A2 Plotseling 7:37
- A3 Bosso 3:20
- A4 Dag Madam Merci 3:10
- B1 Hop Hop 4:32
- B2 Tanga 3:33
- B3 Stomp 7:35
- B4 S.U.S. 4:20
動画プレイリスト
このアーティストについて
Placeboは、ベルギーのジャズ・ピアニスト/作曲家Marc Moulinを中心に結成されたジャズ・ファンク・バンドだ。活動期間は1971年から1976年までで、ベ...
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