Peter Brown - A Fantasy Love Affair (1977)
Peter Brown『A Fantasy Love Affair』(1977)
Peter Brownのデビュー・アルバム『A Fantasy Love Affair』は、1977年にUSのDriveレーベルから出た作品で、マイアミ・ディスコの空気をまといながら、宅録感覚とシンセサイザーの使い方で少し違う輪郭を持つ一枚だ。レーベルはHenry Stoneが立ち上げたT.K.系のDriveで、制作もミックスもマイアミ、ストリングス録音はニューヨーク、マスタリングはSterling Soundという流れ。地元マイアミのディスコ・サウンドに、スタジオ仕事の手触りがきっちり重なっている。
Peter Brownは1953年生まれのアメリカのディスコ・ミュージシャンで、シンガー、キーボーディスト、ソングライター、プロデューサーでもある。シカゴ近郊で育ち、若い頃からシンセサイザーや録音機材に親しんでいたという背景が、この作品の作りにそのまま出ている。プロデューサーのCory Wadeが彼を見出し、デビューへ導いたことも重要なポイントで、ここでは単なる歌い手ではなく、音作りの段階から関わるタイプのアーティストとして姿が見える。
代表曲「Do Ya Wanna Get Funky With Me」
このアルバムを語るうえで外せないのが「Do Ya Wanna Get Funky With Me」だ。Peter Brownが自宅の寝室で4トラック・レコーダーを使って作ったデモが出発点で、サックス・ソロ以外の楽器はほぼ本人が演奏したという。そこからフロリダの24トラック・スタジオでギター、バック・ボーカル、パーカッションを足して完成した流れが、作品の性格をよく表している。整ったディスコ作品でありながら、出発点に個人制作の匂いが残る。
この曲は1977年にBillboard Hot 100で18位、R&Bチャートで3位を記録し、アルバムの顔になった。さらに12インチ・シングルが商業フォーマットとして広がっていく時期の象徴的な一枚としても知られている。T.K.はこの12インチ版の売上が100万ドルに達したと発表しており、ディスコの現場とクラブ文化の結びつきを示す出来事としても扱われる。
アルバム全体の流れ
収録曲は、ヒット曲だけで押し切る作りではなく、アルバム単位で聴くとキーボード主体のフレーズ、リズムの刻み、ボーカルの置き方がまとまっている。演奏の中心に本人の鍵盤感覚があるため、ファンク寄りの推進力と、ディスコらしい反復が自然につながる。歌ものとしての分かりやすさもある一方で、音色の選び方には少し実験的な面があり、マイアミ・ディスコの中でもシンセの存在感が目立つ。
「Dance With Me」も重要な曲で、Betty Wrightがボーカルで参加したことが記録されている。1978年にポップ・チャートで8位、R&Bチャートで5位のヒットになり、続く「You Should Do It」もポップ・チャートで54位に入った。デビュー作でここまでシングルが立て続けに動いた点からも、Peter Brownが当時のディスコ市場で強い反応を得ていたことがわかる。
作品の位置づけ
『A Fantasy Love Affair』は、Peter Brownの初期キャリアを決定づけたアルバムだ。後年の『Do You Wanna Get Funky With Me』として知られる時期につながる出発点であり、本人の作曲・演奏・制作意識が前面に出た内容になっている。のちにRobert Ransと組んでMadonnaの「Material Girl」を共作することを思うと、この時点ですでにポップなフック作りの感覚はかなり明確だった。
同時代のT.K.系やマイアミ産ディスコと並べると、華やかなストリングスやダンスフロア向けの推進力を持ちながら、宅録から発展した制作背景が少し異なる。きっちりしたスタジオ・プロダクションの中に、個人の試行錯誤が残るタイプの作品で、その点がこのアルバムの輪郭になっている。ジャケットにはゲートフォールド仕様が採られ、盤のクレジットにはDrive 104、レーベル面には104表記が入る。1977年当時のT.K.グループの勢いも、そのままパッケージに刻まれている。
結果として『A Fantasy Love Affair』は、Peter Brownという名前を一気に広めたデビュー作であり、マイアミ・ディスコの中で宅録的な発想が商業的なヒットに結びついた例としても記憶される一枚だ。
トラックリスト
- A1 Fantasy Love Affair 3:53
- Do Ya Wanna Get Funky With Me? / Burning Love Breakdown 9:13
- A3 You Should Do It 3:55
- B1 The Singer's Become A Dancer 3:54
- B2 For Your Love 4:17
- B3 Dance With Me 5:18
- B4 It's True What They Say About Love 3:41
- B5 Without Love 3:12