Saint Tropez - Belle De Jour (1978)
Saint Tropez『Belle De Jour』(1978)
Saint Tropezの『Belle De Jour』は、1978年にUSのButterfly Recordsから出たディスコ作品で、同グループにとって2作目のアルバムにあたる。プロデュースはLaurin RinderとW. Michael Lewis。いわゆるRinlew productionとして知られる制作で、彼らが手がけたEl CocoやLe Pamplemousseと同じく、緻密なリズム隊とストリングス主体のアレンジ、そしてダンスフロア向けの推進力が前面に出た内容になっている。
Saint Tropezは、70年代ディスコに多かったスタジオ・プロジェクト型のグループで、実態としては複数のセッション・シンガーを組み合わせた女性グループだった。前作『Je T'aime』に続く本作でも、その作りは変わらない。演奏面はほぼRinderとLewisが担い、歌唱にはMona Lisa Young、Phyllis Rhodes、Lyndie White、Carmen Twillie、Pam Feenerら複数のボーカリストが参加している。クレジットを見るだけでも、当時のディスコ制作がかなり分業化していたことがわかる。
作品の輪郭
『Belle De Jour』は、フランス語の題名が示す通り、欧州風の色づけを持ったディスコ・アルバムだが、実際の中身はかなりアメリカ的なダンス・プロダクションである。Record Worldの当時の評でも、前作より輪郭がはっきりした作品として受け止められていた。スロー寄りの曲ではJean-Paul Vignonの声が前に出て、ダンス曲では女性ボーカルが中心になる構成で、曲ごとの役割分担が明確な一枚という印象が強い。
収録曲の中では「One More Minute」が特に重要で、先行シングルとして動いたこの曲はBillboard Hot 100で71位、Cash Boxで70位まで上昇している。クラブやラジオの両方で回ったことが数字にも表れている。曲調としては、跳ねるクラヴィネットとワウの絡みが目立ち、ディスコというよりファンク寄りのドライブ感を持った一曲。実際に耳にすると、ビートの押し出しが強く、ストリングスの装飾よりもリズムの刻みが先に立つタイプに感じられる。
「Fill My Life With Love」とタイトル曲
もう一つの軸が「Fill My Life With Love」。こちらはボンゴ、タンバリン、うなるようなシンセが前へ出て、同時代のディスコ作品の中でも打楽器の存在感がはっきりしている。華やかさはあるが、音の作りはかなりタイトで、踊るための推進力を優先した設計に見える。アルバム全体を通しても、この曲が持つリズムの粘りは印象に残りやすい。
タイトル曲「Belle De Jour」は、作品の雰囲気を象徴する位置づけだろう。フレンチ・ムードを前面に押し出しつつ、ディスコの拍を崩さない作りで、アルバムの“映画的な”側面を担っている。Saint Tropezの作品には、前作から続くフレンチ・ノワール風のストーリーがあり、このアルバムでもその流れが保たれている。シリーズとしての連続性を意識した構成で、単なる楽曲集というより、ひとつの物語を伴ったスタジオ作品という性格が見える。
収録曲とカバーの位置づけ
本作にはGloria Gaynorの「Most Of All」のカバーも入っている。こうした選曲からは、当時のディスコ・シーンで共有されていた楽曲資源を、Saint Tropez流のアレンジで再構成する姿勢がうかがえる。オリジナル曲とカバー曲が同じ質感で並ぶのも、この時代のディスコ・アルバムらしいところだ。
また、当時の宣伝資料ではRinlew Productionとしてクレジットされ、Butterfly Recordsの流通にはMCAが関わっていた。ラベル自体も70年代後半のUSディスコ・レーベルらしい動きで、こうした配給網の広さが、シングル「One More Minute」のような曲をクラブからラジオへ押し上げる土台になっていたと考えられる。
Saint Tropezの中での位置づけ
Saint Tropezにとって『Belle De Jour』は、前作『Je T'aime』の流れを受けつつ、より整理された形で打ち出された2作目になる。のちに1982年の『Hot and Nasty』へつながるが、その前段階として見ると、ここで確立された“シンフォニックなディスコ”と“物語性のある構成”が、グループの基本線だったことがわかる。
70年代後半のディスコには、Donna Summer周辺の大規模プロダクションや、Chicのようなミニマルで硬質なファンク・ディスコが並立していたが、Saint Tropezはそのどちらとも少し異なる。ストリングスを厚く使いながら、リズムはしっかり踊らせる。そのうえでフランス語や映画的な題材を織り込む、そうした作りが『Belle De Jour』の特徴といえる。
派手な大ヒット盤というより、当時のディスコ制作の手法や、Rinder & Lewisの仕事ぶりを知るうえで手がかりの多い一枚。シングル「One More Minute」の小ヒットと、アルバム全体の統一感が、この作品の存在感を支えている。
トラックリスト
- A1 Fill My Life With Love 6:14
- A2 One More Minute 7:04
- A3 Hold On To Love 4:45
- A4 Think I'm Gonna Fall In Love With You 5:20
- B1 Belle De Jour 7:20
- B2 Most Of All 5:51
- B3 When You Are Gone 5:05