Herbie Hancock - Lite Me Up (1982)
Herbie Hancock 1982

Herbie Hancock - Lite Me Up (1982)

Funk / Soul Funk Soul Disco

Herbie Hancock『Lite Me Up』(1982)

1982年に米Columbiaからリリースされたハービー・ハンコックの通算28作目のスタジオ・アルバム『Lite Me Up』。ジャズ/フュージョンの最高峰を走り続けてきた名鍵盤奏者が、当時のメインストリームを席巻していたポップ/アーバン・ブラック・コンテンポラリーへと正面から挑んだ意欲作である。本作の音楽的核となったのは、マイケル・ジャクソンやヒートウェイヴの世界的ヒットで名を馳せた名ソングライター/アレンジャーのロッド・テンパートン。表題曲「Lite Me Up」をはじめ収録曲の多くを手がけ、極上のグルーヴと洗練されたメロディをアルバム全体にもたらしている。

制作背景・エピソード

本作制作の大きな起爆剤となったのは、ハービーが盟友クインシー・ジョーンズの名盤『The Dude(愛のコリーダ)』(1981年)に参加したことだった。その華やかで洗練されたアーバン・ポップに感化されたハービーは、ロッド・テンパートンとの本格タッグを決断。さらにナラダ・マイケル・ウォルデンやジェイ・グレイドンといったヒットメイカーも楽曲提供や制作に関与した。演奏陣にはジェフ・ポーカロ、ジョン・ロビンソン、ルイス・ジョンソン、エイブラハム・ラボリエル、デヴィッド・フォスター、マイケル・ボディッカーなど、西海岸AOR/ブラック・ミュージックの精鋭が集結している。

特筆すべきは、ハービー自身が全編にわたって生歌のリード・ヴォーカルと得意のヴォコーダーを駆使している点だ。アルバムのフィナーレを飾る「Give It All Your Heart」では、パトリース・ラッシェンをゲストに迎えて甘美なヴォーカル・デュエットを披露。ジャズ畑の巨匠二人が織りなす極上のミディアム・バラードとして、本作随一のハイライトを生み出している。

時代の文脈

1970年代にザ・ヘッドハンターズでジャズ・ファンクの革新を起こし、『Sunlight』(1978年)以降はヴォコーダーをフィーチャーしてダンス・ミュージックへのアプローチを深めていたハービー。同時にV.S.O.P.クインテットなどでストレートアヘッドなジャズの極致も鳴らし続けていた彼にとって、80年代初頭のポスト・ディスコ/アーバン・ブギーの隆盛への傾倒は、常に時代の先端サウンドを貪欲に吸収してきた音楽的探求の自然な結実でもあった。

翌1983年にはビル・ラズウェルと手を組み、ヒップホップ/ブレイクビーツの金字塔「Rockit」を含む『Future Shock』で世界を震撼させることになるが、本作はその前夜に位置し、クインシー・ジョーンズ流のブラック・ポップとモダン・ファンクの最高到達点を記録した重要なミッシングリンクとなっている。

サウンド・聴きどころ

タイトに跳ねるリズム・セクションと、ハービーの小粋なフェンダー・ローズやシンセサイザー、そしてロッド・テンパートン印の洗練されたホーン/コーラス・アレンジの融合が素晴らしい。軽快なファンク・グルーヴが心地よいタイトル曲「Lite Me Up」、ナラダ・マイケル・ウォルデン作のエネルギッシュなブギー「The Bomb」、キレのあるシンセ・ベースとテンパートン節のフックが冴え渡る「Motor Mouth」など、当時の最先端ディスコ/ファンクの結晶と呼べるナンバーが並ぶ。

また、シンセサイザーの質感と生演奏のグルーヴが見事に調和したサウンドは、2000年代以降の80sブギー再評価やモダン・ファンク、ダフト・パンクやブルーノ・マーズ、タキシードらに連なる現代のエレクトロ・ファンク潮流の先駆的青写真としても今なお強い輝きを放っている。

評価・チャート

リリース時は米BillboardのTop R&B/Black Albumsで24位、Jazz Albumsで6位、Billboard 200で113位を記録。「Lite Me Up」や「Gettin' To The Good Part」がクラブやラジオで親しまれた。一時は純粋なジャズ・ファンからコマーシャルな作風として議論を呼んだものの、現代では80年代アーバン・ファンク/ブギーの屈指のマスターピースとして再評価が定着している。

トラックリスト

  1. A1 Lite Me Up 3:41
  2. A2 The Bomb 3:59
  3. A3 Gettin' To The Good Part 6:12
  4. A4 Paradise 4:30
  5. B1 Can't Hide Your Love 3:53
  6. B2 The Fun Tracks 4:03
  7. B3 Motor Mouth 3:59
  8. B4 Give It All Your Heart 7:39

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Herbie Hancock

Herbie Hancock

ハービー・ハンコック(Herbie Hancock、1940年4月12日 - )は、アメリカ・イリノイ州シカゴ出身の伝説的ジャズ・ピアニスト、キーボーディスト、作曲...

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