Prince And The Revolution - Parade (1986)
Prince And The Revolution『Parade』――華やかさと緊張感が同居する1986年作
Prince And The Revolution名義の『Parade』は、1986年に発表されたPrinceの8作目のスタジオ・アルバムであり、The Revolution名義では3作目にして最後の作品でもある。映画『Under the Cherry Moon』のサウンドトラックという位置づけを持ちながら、単なる映像作品の付属物には収まっていない。ファンクを軸にしつつ、ポップ、ソウル、室内楽的なアレンジ、フランス的な空気感まで取り込んだ、Princeの作品群の中でもかなり輪郭のはっきりした一枚だ。
日本盤はWarner-Pioneerからのリリースで、ゲートフォールド仕様。英語・日本語併記のクレジット・インサート、歌詞インサート、アンケートはがきが付属する。帯には「Prince 8th」とあり、当時の位置づけがそのまま伝わる。シール付きシュリンクには映画『Under the Cherry Moon』との連動が示され、ヒット曲「KISS」が大きく打ち出されている。
作品の輪郭と音像
『Parade』を聴くとまず感じるのは、前作までの強いファンクの推進力を残しながら、音の置き方がかなり変わっていることだ。リズムは細かく刻まれていても、全体の鳴りはせわしなくならない。ホーン、ストリングス、鍵盤、ギターの配置が整理され、曲ごとの色がはっきり分かれている。Minneapolis Soundの代表例として語られることも多いが、この作品ではその輪郭がより洗練され、ポップ・ロック的な明快さと、ファンクの粘りが同じアルバムの中で共存している。
特に南仏を舞台にした映画との結びつきが、音の設計にも反映されている。英語曲だけでなく、フランス語のヴォーカルやヨーロッパ的な香りを帯びた曲が入り、アルバム全体に独特の流れを作っている。Princeの作品の中でも、ここまで舞台設定とサウンドの方向が一致したタイトルは多くない。
「KISS」が持つ中心性
このアルバムを語るうえで外せないのが「KISS」だ。極端に削ぎ落とされた編成、跳ねるギター、鋭いリズム、短いフレーズの反復。そのミニマルな作りが、逆に強い引力を生んでいる。もともとの素材をPrinceが仕上げ直して完成させた曲としても知られ、結果的に全米シングル1位を記録した代表曲になった。『Parade』の中でも、この1曲がアルバム全体の評価を押し上げた面は大きい。
「KISS」は派手なサウンドで押すタイプではない。それでも、音数の少なさがむしろ細部を際立たせ、Princeの声の置き方や間の取り方まで耳に入る。こういう作りは、同時代のファンクやポップの中でもかなり特異で、後のミニマルなR&Bやファンクの感覚にもつながっていく。
Princeにとっての位置づけ
『Parade』は、Prince and The Revolutionとしての最後のアルバムという点でも重要だ。バンド編成のまとまりがある一方で、すでにPrince個人の主導性はかなり強く、作品の方向性も彼自身の音楽観に深く寄っている。The Revolutionのメンバー、Lisa Coleman、Matt Fink、Brownmark、Wendy Melvoin、Bob Rivkinらの存在が、サウンドに厚みと色を与えているのは確かだが、アルバム全体の設計はPrinceの手触りが前面に出ている。
1980年代半ばのPrinceは、ファンク・ミュージックの枠を広げながら、ポップ・スターとしての届きやすさも両立させていた時期にあたる。『Parade』はその流れの中でも、とくに構成が練られた作品で、楽曲単位で聴いてもアルバム単位で聴いても、印象の変化が大きい。『Purple Rain』のような大きな成功作の後にありながら、同じ方向へ寄り切らず、別の景色を見せている点が面白い。
同時代の文脈
1986年という時代を思うと、ファンクはすでに細分化が進み、ポップとR&B、ロックの境界も曖昧になっていた。そんな中で『Parade』は、単に流行へ寄せたアルバムではなく、Prince自身が持っていた黒人音楽の感覚、ロックの推進力、ポップの即効性を、かなり独自のバランスでまとめた作品として響く。ジャズ、ソウル、ポップ、シャンソン的な要素まで引き寄せる構成は、当時のメインストリームの中でもかなり目立つ。
批評面で高く評価されたのも納得しやすい。映画の評価とは別に、アルバム単体では創造力の密度が高く、曲の並びにも無駄が少ない。華やかさがあるのに、軽く流れない。音の隙間に緊張感が残る。その感触が『Parade』の芯になっている。
まとめ
日本盤の『Parade』は、1986年当時のPrinceの到達点を、かなり明快な形で伝える一枚だ。ヒット曲「KISS」を核にしながら、映画との連動、フランス的な空気、ファンクの切れ味、ポップとしての強さを一つにまとめている。Prince and The Revolution名義の終着点としても、Princeの作品群の中で独特の位置を占めるアルバムである。
トラックリスト
- Intro
- A1 Christopher Tracy's Parade 2:11
- A2 New Position 2:21
- A3 I Wonder U 1:40
- A4 Under The Cherry Moon 2:57
- A5 Girls & Boys 5:30
- A6 Life Can Be So Nice 3:12
- A7 Venus De Milo 1:54
- End
- B1 Mountains 3:58
- B2 Do U Lie? 2:43
- B3 Kiss 3:38
- B4 Anotherloverholenyohead 3:58
- B5 Sometimes It Snows In April 6:50