REO Speedwagon - Hi Infidelity (1980)
REO Speedwagon 1980

REO Speedwagon - Hi Infidelity (1980)

Rock Pop Rock AOR

REO Speedwagon『Hi Infidelity』――バンド最大の転機になった1980年作

REO Speedwagonの『Hi Infidelity』は、1980年に発表された9作目のスタジオ・アルバムで、バンドにとって決定的な意味を持つ作品だ。アメリカのロック・バンドとして70年代から活動を続けてきた彼らが、このアルバムで一気に大衆的な成功をつかみ、80年代のAOR/ポップ・ロックを代表する存在へと踏み込んだ。日本盤はEpicからのリリースで、東京のEpic/Sonyによる製造表記が入る初期の国内盤として流通している。

REO Speedwagonはイリノイ州シャンペーンで結成されたバンドで、70年代の間は着実に支持を広げながら、アルバム単位で評価を積み上げてきた。そんな流れの中で出た『Hi Infidelity』は、バンド最大のヒット作になった。特に重要なのが「Keep On Loving You」と「Take It on the Run」の2曲で、前者はバンド初の全米1位シングル、後者もトップ5入りを記録している。アルバム全体の成功を決定づけたのは、この2曲の存在が大きい。

アルバムの位置づけ

『Hi Infidelity』は、REO Speedwagonにとって“それまでの実力派バンド”という見られ方から、“広く知られるヒット・バンド”へ移る境目の作品だ。1981年にはBillboardアルバム・チャートで1位を獲得し、長く上位にとどまった。累計売上は1000万枚規模に達し、バンドの代表作として定着した。70年代の段階でロック・バンドとしての基盤はできていたが、この作品でその輪郭が一気に広がった印象がある。

制作背景にも特徴がある。Kevin Croninは後年、この時期のメンバーが私生活で混乱や不安を抱えていたと振り返っている。そうした空気が曲調や歌詞のまとまりに反映され、意図したコンセプト・アルバムではないものの、結果として統一感のある内容になったという。感情の揺れがそのまま曲に出る場面が多く、ロックの骨格の上に、メロディを前へ出した作りがはっきりしている。

収録曲と聴きどころ

この作品でまず耳に残るのは、やはり「Keep On Loving You」だ。夜中に思いついた3つのピアノ・コードから生まれたというエピソードが残っており、実際に聴くと、そのシンプルな導入が曲全体の推進力になっているのがわかる。ピアノを軸にした立ち上がり、厚みのあるコーラス、サビでの押し出しが明快で、80年代初頭のアメリカン・ロックらしい作りがそのまま形になっている。

「Take It on the Run」は、ギター・ロックとしての輪郭がより前に出る曲で、メロディの運びがわかりやすい。ここでも歌のフックが強く、ラジオで広く浸透した理由が見えやすい。アルバム全体を通して、派手な装飾よりも、歌とリフ、コーラスの配置で引っ張る場面が多い。AORやポップ・ロックの文脈で語られるのは、この整理された曲づくりがあるからだ。

実際に通して聴くと、ヒット曲だけが突出しているというより、アルバム全体が同じ温度で進む印象がある。ギターの鳴り、鍵盤の置き方、ボーカルの前に出る感じがそろっていて、曲ごとの役割分担がはっきりしている。70年代のハード寄りなロックから、より広い層に届く方向へ重心が移っているのがわかる。

同時代の文脈

『Hi Infidelity』が出た1980年は、アメリカン・ロックが大きく変わっていく時期だった。パワー・バラードやメロディ重視のロックが大きく伸び、同時代にはJourney、Foreigner、Kansas、Styxのようなバンドも広い層に届く作品を出していた。REO Speedwagonもその流れの中にありながら、より素直な歌の強さで存在感を出した印象がある。

後年の回想では、この成功がバンド内部や周囲の関係を変えたとも語られている。大きなヒットを得たことで、REO Speedwagonは80年代の代表的なロック・バンドの一つとして見られるようになったが、その入口にあるのがこの『Hi Infidelity』だ。日本盤の1980年オリジナル期リリースは、その熱がまだ冷めきらないタイミングの空気を閉じ込めた一枚として、資料的にも聴取体験としても興味深い。

日本盤について

本盤は日本でEpic/Sonyから製造された初期盤で、クレジットには「℗1980 CBS, Inc.」「Manufactured by Epic/Sony Inc., Tokyo, Japan」とある。オリジナルの1980年作品としての性格がはっきりした盤で、のちの再発盤と比べると、当時の国内流通の雰囲気がそのまま残る。Epicの日本支社が独立した体制を持っていた時期のリリースでもあり、80年代初頭の洋楽輸入・国内製造の流れを感じさせる。

『Hi Infidelity』は、REO Speedwagonの中でも最も広く知られた作品であり、バンドのそれ以前と以後を分ける分岐点でもある。ヒット曲の強さだけでなく、アルバム全体のまとまり、制作時の空気、そして1980年代ロックの変化が一枚の中に収まっている。

トラックリスト

  1. A1 Don't Let Him Go 3:44
  2. A2 Keep On Loving You 3:19
  3. A3 Follow My Heart 3:47
  4. A4 In Your Letter 3:14
  5. A5 Take It On The Run 3:59
  6. B1 Tough Guys 3:48
  7. B2 Out Of Season 3:05
  8. B3 Shakin' It Loose 2:24
  9. B4 Someone Tonight 2:39
  10. B5 I Wish You Were There 4:26

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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