Earth And Fire - Gate To Infinity (1977)
Earth And Fire『Gate To Infinity』──1977年、オランダ産シンフォニック・ロックのひと区切り
Earth And Fireは、オランダのVoorschoten / Voorburg周辺で活動したバンドで、女性ヴォーカルのJerney Kaagmanを中心に、Chris KoertsとGerard Koertsの双子、Bert Ruiter、Ton van der Kleijらが支えたグループだ。60年代末から70年代前半にかけて「Seasons」「Ruby is the One」「Wild & Exciting」「Memories」などのヒットを重ね、オランダ国内ではポップ・バンドとしての知名度を早い段階で固めている。
1977年作の『Gate To Infinity』は、その流れの中で出てきた5作目のアルバム。バンドの公式略歴でも触れられているように、この時期のEarth And Fireは、シングル「7,8th Avenue」で示されるように、従来のヒット志向と、より組曲的な構成を両立させていた。作品全体にはシンフォニック・ロックの要素が残りつつ、70年代半ば以降のポップ・ロック寄りの整理された作りも見える。
制作背景と盤の情報
この盤はオランダ盤で、Polydorのカタログ番号は2925 065。ラベルには「Made in Holland」とあり、Frans Peters Studios, Hilversumで1977年に録音されたことが記されている。内袋には歌詞とクレジットが印刷され、Appie TamboerとArjan Gemundへの特別クレジットも入る。オリジナルの1977年盤として出たもので、後年の再発ではない。
Polydorのオレンジ系の時代感を引き継ぎつつ、1970年代後半の西欧ロック作品らしい整ったパッケージング。Earth And Fireのアルバムの中でも、フォーク寄りの初期や、より大きな組曲性を持った前期作から少し離れ、当時の主流ロックに近い輪郭を持つ一枚として扱われている。
音楽性と聴きどころ
『Gate To Infinity』でまず目立つのは、キーボードの存在感だ。バンドはこの時期、Hammond organに加えてMellotronやシンセサイザーを取り入れており、音の層を広げている。とはいえ、音数をただ増やす方向ではなく、曲の骨格を崩さない範囲で配置している印象が強い。派手に押し切るより、メロディを前に出す作り。
先行シングルの「7,8th Avenue」は、タイトル通り7/8拍子で書かれた曲として知られる。変拍子を使っていても、聴感上は難解さを前面に出すより、リズムの引っかかりを曲の推進力に変えている。Earth And Fireらしいところは、こうした技巧を、Jerney Kaagmanの歌声とポップなフックの中に収めてしまう点にある。
アルバム全体を通してみると、長尺の組曲的な展開を持ちながらも、70年代前半の大作志向よりは少し落ち着いた構えがある。Planet Mellotronなどの回顧でも、この作品は前作よりメインストリーム寄りで、バンドの勢いがやや控えめになった時期として整理されている。実際、初期の『Song of the Marching Children』や『Atlantis』のような強い推進力とは少し違い、音の整理と曲作りのバランスに意識が向いている。
当時の位置づけ
Earth And Fireにとって『Gate To Infinity』は、70年代前半の国内ヒット連発期から、次の段階へ移る前の区切りに置かれる作品だ。バンドの公式年表をたどると、この後の数年で停滞感が生まれ、1978年にはリズム隊の入れ替えも起こる。そうした流れを踏まえると、このアルバムは、シンフォニックな要素を保ちながらも、よりシンプルでダンサブルな方向へ向かう直前の位置にある。
同時代のオランダ勢や欧州のシンフォニック・ロックと比べても、Earth And Fireはプログレ色を持ちながらポップスの骨組みを失わないバンドだった。長尺構成やキーボードの厚みは、同じ時代のCamelやCamel寄りの叙情派、あるいはオランダ国内の他のロック・アクトと並べて語られることが多いが、Earth And Fireの場合はJerney Kaagmanの存在が曲の輪郭をかなり明確にしている。
まとめ
『Gate To Infinity』は、Earth And Fireのディスコグラフィーの中で、初期の大ヒット路線と後期の方向転換のあいだをつなぐ1977年の作品だ。変拍子の「7,8th Avenue」、キーボードを増した編成、組曲的な構成、そしてオランダ国内での一定のチャート実績。そうした要素が、70年代後半のバンドの現在地をそのまま示している。派手な転換作というより、これまでの積み重ねを整理しながら次へ進むためのアルバム、という印象が残る。
トラックリスト
- Gate To Infinity 17:19
- B1 78th Avenue 3:02
- B2 Smile 3:11
- B3 Green Park Station 2:59
- B4 Dizzy Raptures 3:17
- B5 Driftin' 5:36