Roberta Flack - Feel Like Makin' Love (1975)
Roberta Flack 1975

Roberta Flack - Feel Like Makin' Love (1975)

Funk / Soul Soul Rhythm & Blues

Roberta Flack『Feel Like Makin' Love』(1975)――静かな熱量をたたえた5作目

Roberta Flackの『Feel Like Makin' Love』は、1975年にAtlanticから出た5作目のスタジオ・アルバムである。前年にシングルとして先行したタイトル曲の大ヒットを軸にしながら、ソウル、R&B、ジャズの境目を行き来する内容でまとめられている。Flackの作品の中でも、歌の強さを前面に出すというより、声の置き方や間の取り方、曲の空気そのものをじっくり聴かせる一枚だ。

Roberta Flackにとっての位置づけ

Roberta Flackは、1969年以降に複数のソロ作やデュエット作を重ね、“Killing Me Softly”や“The First Time Ever I Saw Your Face”で広く知られるようになった。『Feel Like Makin' Love』は、そうした流れの中で、本人が初めて自らプロデュースしたアルバムとして重要な位置を占める。クレジット上は「Rubina Flake」という変名が使われている。

制作には14か月を費やし、ニューヨークのHit Factory、Bell Sound Studios、Soundtekで録音された。本人が後年、制作過程について「たくさん間違いをした」と振り返ったという記録も残るが、その試行錯誤がそのまま作品の密度につながっている印象がある。整いすぎない、しかし粗くもない、その中間のバランスがこのアルバムの芯になっている。

タイトル曲「Feel Like Makin' Love」

このアルバムを語るうえで、やはりタイトル曲は外せない。Gene McDaniels作のこの曲は、1974年5月にシングルとして先行発売され、Billboard Hot 100で1位を獲得した。Roberta Flackにとって3曲目の全米1位であり、代表曲のひとつとして定着している。

曲そのものは、派手な展開よりも、声の柔らかさと演奏の余白で引っ張るタイプ。聴き進めると、メロディの輪郭より先に、フレーズの置き方や呼吸の深さが残る。後年も多くのアーティストが取り上げたのは、この曲が単なるヒット曲ではなく、歌い手の解釈を受け止める余地を持っていたからだろう。Marlena Shawが1975年にカヴァーした例もある。

収録曲の構成とアルバムの流れ

本作には、Stevie Wonder作の12分48秒に及ぶ「I Can See The Sun In Late December」が収録されている。長尺曲をアルバムの中核に置く構成は、当時のソウル作品の中でもかなり目を引く。演奏の展開を追うというより、曲の時間そのものを味わうタイプのトラックで、Flackのアルバムがポップ・ヒットだけで成立していないことを示している。

B面には、Ralph MacDonaldとWilliam Salterによる「Mr. Magic」も入る。Grover Washington Jr.が1974年にヒットさせた曲として知られ、当時のクロスオーバー的な空気を感じさせる選曲だ。全体として、ヒット曲を中心に据えつつ、ジャズ寄りの感触やR&Bの流れを自然につないでいる。

録音とクレジット

ライナーや盤面の情報を見ると、B1とB3はBell Sound Studios、B4はSoundtek Recording Studio、それ以外はHit Factoryで録音され、リミックスもHit Factoryで行われた。アルバムには「This album is affectionately dedicated to my friend Quincy Jones.」という献辞もある。Quincy Jonesとの関係性を踏まえると、当時のR&Bやポップスの制作現場と地続きの作品として読むことができる。

また、本盤はAtlantic SD 18131の1975年リプレスで、レーベル外周の表記にWarner系の「W」ロゴが入る仕様である。オリジナル期の1973〜75年仕様のレーベルから、年末寄りのデザインに移った盤で、見た目の違いもコレクターには分かりやすい。なお、ラベルには「PR」サフィックスが入っている。

チャート面と同時代の文脈

アルバムはBillboard 200で24位、R&Bアルバム・チャートで5位、ジャズ・アルバム・チャートで11位を記録した。ポップ、ソウル、ジャズの各チャートにまたがる反応は、Roberta Flackの立ち位置そのものを示している。強いビートで押すソウルではなく、歌声と演奏の距離感で聴かせるタイプの作品として受け止められたのだろう。

同時代のソウル/R&Bの中でも、FlackはAretha Franklinのようなゴスペル由来の高揚感とは別の軸にいる。Bill WithersやDonny Hathawayに近い、内省を含んだ歌の作法、あるいはジャズの間合いを持つ歌い方が、このアルバムでもよく出ている。派手な装飾より、声の温度と曲の構造を聴かせる作り。

1975年盤としての聴きどころ

この1975年盤は、タイトル曲のヒットを知ったうえでアルバム全体を聴くと、単なるシングル中心作ではないことがはっきりする。A面の長尺曲、B面のカヴァー曲、録音スタジオの切り替え、そしてRoberta Flack自身のプロデュースという条件が重なり、作品全体に落ち着いた緊張感がある。音の輪郭は柔らかいが、内容はかなり作り込まれている。

『Feel Like Makin' Love』は、Roberta Flackの代表曲を抱えたアルバムであると同時に、彼女が自分の歌の置き場所をより明確にした一枚でもある。ヒット曲の存在感だけで終わらず、アルバムとして聴いたときに、1975年のソウル/R&Bが持っていた広がりと、Flackという歌い手の独自性が見えてくる作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Feelin' That Glow 5:48
  2. A2 I Wanted It Too 2:51
  3. A3 I Can See The Sun In Late December 12:48
  4. A4 Some Gospel According To Matthew 2:37
  5. B1 Feel Like Makin' Love 2:55
  6. B2 Mr. Magic 3:55
  7. B3 Early Ev'ry Midnite 5:54
  8. B4 Old Heartbreak Top Ten 4:22
  9. B5 She's Not Blind 5:24

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

Roberta Flack

Roberta Flack

Roberta Flackは、アメリカ・ノースカロライナ州ブラック・マウンテン出身のソウル・シンガー/ソングライターだ。1937年2月10日生まれで、2025年2月2...

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