Sampha - Process (2017)
Sampha『Process』
サウス・ロンドン出身のシンガー・ソングライター/ピアニスト/プロデューサー、サンファ(Sampha Sisay)が2017年2月にヤング・タークス(Young Turks)から発表したソロ・デビュー・アルバム『Process』。同年の英国最高峰の音楽賞「マーキュリー賞(Mercury Prize)」を受賞し、2010年代のオルタナティブR&B/エレクトロニック・ソウルにおける記念碑的傑作として世界的な絶賛を浴びた一枚である。
制作背景と喪失のプロセス
サンファは本作以前から、SBTRKTとのコラボレーションで脚光を浴び、ドレイクの「Too Much」、カニエ・ウェストの「Saint Pablo」、フランク・オーシャンの『Endless』、ソランジュの『A Seat at the Table』など、名だたるトップスターたちの重要作にヴォーカルや鍵盤奏者として参加。「現代の音楽シーンで最も求められる唯一無二の歌声」として確固たる名声を築いていた。
そうした中で満を持して制作された本作は、ザ・エックス・エックスなどを手掛けたローダイド・マクドナルド(Rodaidh McDonald)を共同プロデューサーに迎えて制作。長年闘病していた最愛の母ベティを癌で亡くした深い喪失感、自身の死生観や不安と真正面から向き合い、その痛切な感情をありのままに音楽へと昇華させた。
親密なピアノと先鋭的な電子音の融合
アルバムの中核を成すのは、実家の居間にあったアップライト・ピアノと亡き母への深い思慕を歌った名バラード「(No One Knows Me) Like the Piano」である。ピアノの静かな打鍵とサンファの震えるようなファルセットが、聴き手の胸を打つ普遍的な美しさを生み出している。
一方で、追われる者の焦燥感と緊張感をパーカッシブなビートに乗せたリード曲「Blood on Me」、カニエ・ウェストとの共作によるソウルフルな「Timmy's Prayer」、西アフリカの伝統弦楽器コラのリズムを取り入れた「Kora Sings」など、親密なアコースティック・ピアノとUKベース・ミュージック由来の鋭利なエレクトロニクスが高次元で融合している。
時代の文脈と後世への影響
トラップや派手なエフェクトが主流化していた2010年代半ばのR&Bシーンにおいて、ピアノという最もパーソナルな楽器を中心に据え、人間の脆さと哀哀を赤裸々に描き出した『Process』は、静かでありながら決定的な衝撃を世界に与えた。
全英アルバム・チャートで7位を記録し、2017年のマーキュリー賞ではエド・シーランやザ・エックス・エックス、ストームジーらの有力作を抑えて栄冠を獲得。各国の音楽メディアでも年間ベスト・アルバムの上位を総なめにした。喪失と再生の過程(プロセス)を真摯に記録した、2010年代を代表する名盤である。
トラックリスト
- A1 Plastic 100 °C
- A2 Blood On Me
- A3 Kora Sings
- A4 (No One Knows Me) Like The Piano
- A5 Take Me Inside
- B1 Reverse Faults
- B2 Under
- B3 Timmy’s Prayer
- B4 Incomplete Kisses
- B5 What Shouldn’t I Be?
- CD-1 Plastic 100 °C
- CD-2 Blood On Me
- CD-3 Kora Sings
- CD-4 (No One Knows Me) Like The Piano
- CD-5 Take Me Inside
- CD-6 Reverse Faults
- CD-7 Under
- CD-8 Timmy's Prayer
- CD-9 Incomplete Kisses
- CD-10 What Shouldn't I Be?