Jackson 5 - Third Album (1970)
Jackson 5『Third Album』(1970) レビュー
Jackson 5の3作目にあたる『Third Album』は、1970年のモータウンを代表する一枚として見ておきたい作品です。デビューから続く勢いをそのままに、ソウル、ファンク、ポップの要素をモータウン流の整った制作でまとめ上げた内容で、グループの人気が全米規模で定着していた時期の空気がそのまま入っている。ジャクソン5は、兄弟5人によるヴォーカル・グループとして、マイケル・ジャクソンの存在感を中心に一気にスター街道を進んでいた時期で、このアルバムもその流れの中にある。
1970年のジャクソン5を映す作品
本作は1970年4月から7月にかけて録音され、同年9月8日にモータウンから発売された。プロデュースはベリー・ゴーディ率いる制作チーム「ザ・コーポレーション」とハル・デイヴィス。モータウンの強い管理体制と、当時のヒット制作のノウハウがそのまま反映された一枚で、音の作りはきわめて明快だ。リズム隊は前へ出すぎず、歌を立てる配置になっていて、子どもグループとしての親しみやすさと、当時のブラック・ポップとしての洗練が両立している。
チャート面でも強い。Billboardのアルバム・チャートで最高4位、R&Bアルバム・チャートとCashboxのアルバム・チャートでは1位を記録している。デビュー以来の勢いがまだ衰えていないことを示す成績で、ジャクソン5が単なる一発屋扱いではなく、モータウンの主力として機能していた時期の記録でもある。
「I'll Be There」の存在感
先行シングルの「I'll Be There」は、このアルバムを語るうえで外せない。1970年8月28日発売で、ジャクソン5にとってデビュー以来4作連続となる全米1位を獲得した。Billboard Hot 100では1970年10月17日から11月14日まで5週連続1位、R&Bシングル・チャートでも6週1位。マイケルとジャーメインがリード・ヴォーカルを分け合い、子どもらしい声質の中に、すでに感情の切り替えの細かさが見える。
制作の経緯も面白い。ベリー・ゴーディはタイトルを気に入ったものの元の曲に満足せず、ハル・デイヴィスが深夜にウィリー・ハッチへ連絡。ハッチが徹夜で曲を作り直し、朝8時にゴーディへ届け、そのままジャクソン5のヴォーカル・アレンジを任されたという。作者はゴーディ、デイヴィス、ボブ・ウェスト、ハッチの4人。録音は1970年6月、ロサンゼルスのHitsville Westで行われている。後年、2011年にグラミーの殿堂入りを果たしたことも含め、この曲が本作の核であることはかなりはっきりしている。
カヴァー曲の選び方
『Third Album』はオリジナル曲だけで押し切る構成ではなく、カヴァーの選曲も目立つ。デルフォニックスの「Ready or Not Here I Come」はマイケルがリードを取り、エドウィン・スターが書いたシェイズ・オブ・ブルーの「Oh How Happy」はジャーメインが歌う。さらにサイモン&ガーファンクルの「Bridge Over Troubled Water」ではジャーメインがリードを担当し、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの「The Love I Saw in You Was Just a Mirage」も収録されている。
この選曲からは、当時のモータウン作品が自社レーベル内のヒットだけでなく、ソウルやポップの周辺にある楽曲も吸収していたことが見えてくる。ジャクソン5のアルバムは、同時代の他のモータウン・アクトと比べても、カヴァーを通じて歌の見せ方を揃える設計がはっきりしている。
音の手触りと評価
実際に聴くと、声の分担がかなり明確で、マイケルの若い声が前に出る曲と、ジャーメインのやや落ち着いた声が支える曲で印象が変わる。合唱のまとまりは強く、1曲ごとの起伏も分かりやすい。モータウンの整った録音でありながら、曲ごとにリードの性格が違うため、アルバム全体が単調になりにくい。
評価面では、AllMusicのリンゼイ・プレイナーが5点満点中4点を付け、モータウンの基本形を保ちながら、他の重要な影響も取り込んで音楽性を広げていると評している。ロバート・クリストガウはB−。このあたりからも、当時のポップな成功だけでなく、R&B作品としての見られ方もあったことが分かる。
1970年モータウンの中で
『Third Album』は、ジャクソン5がモータウンの看板の一つとして機能していた時期の記録であり、同時に1970年前後のソウルの流れをよく残した作品でもある。ヒットシングルを軸にしながら、カヴァーを交えてグループの声の個性を見せる構成。モータウンの制作チームが持っていた計算と、兄弟グループならではの一体感、その両方がはっきり残るアルバムである。
US盤のオリジナルはMotown MS-718。インディアナポリス・プレスはランアウトに「I」が入る仕様で、細かな盤の違いもある。1970年という年のモータウン作品として見たとき、ジャクソン5の勢いとレーベルの制作力がそのまま結びついた一枚として置いておきたい。
トラックリスト
- A1 I'll Be There 3:35
- A2 Ready Or Not Here I Come (Can't Hide From Love) 2:30
- A3 Oh How Happy 2:13
- A4 Bridge Over Troubled Water 5:45
- A5 Can I See You In The Morning 2:59
- B1 Goin' Back To Indiana 3:30
- B2 How Funky Is Your Chicken 2:40
- B3 Mama's Pearl 3:01
- B4 Reach In 3:20
- B5 The Love I Saw In You Was Just A Mirage 4:20
- B6 Darling Dear 2:38