Spock's Beard - The Oblivion Particle (2015)
Spock's Beard『The Oblivion Particle』——新体制が固まった2015年作
Spock's Beardは、1992年にロサンゼルスで結成されたアメリカのシンフォニック・プログレッシブ・ロック・バンド。複雑な構成、長尺曲、変拍子、歌ものとしての分かりやすさを同時に抱えた作風で知られている。『The Oblivion Particle』はその12作目のスタジオ・アルバムで、2013年作『Brief Nocturnes and Dreamless Sleep』に続くTed Leonard参加後2作目の作品になる。バンドの新しい編成が、単発の試みではなく定着した段階の記録として聴ける一枚だ。
オリジナルは2015年。ここで取り上げるのは2022年のヨーロッパ盤で、Construction Recordsからのリリース。ゲートフォールド仕様で、Transparent Green、Solid White、Blackのカラーバリエーションが用意されている。盤の体裁としてはコレクション性の高い作りで、アルバム本編を手元でじっくり追うタイプの再発盤になっている。
アルバムの位置づけ
この時期のSpock's Beardは、Neal Morse在籍期のイメージだけで語れない段階に入っている。Ted Leonardがリード・ヴォーカルを担い、バンドの中心に新しい声が入ったことで、曲の運びやコーラスの質感に変化が出ている。『The Oblivion Particle』は、その変化が自然に機能している作品として受け止められている。前作に続いて制作面ではRich Mouserが関わり、メンバー間の連携が強い状態でまとめられたという流れも、このアルバムの輪郭をはっきりさせている。
Dave Merosが当時の取材で、この作品では自分が作曲に加わっていないと語っている点も興味深い。Spock's Beardはメンバーの持ち寄り感が強いバンドだが、この作品では別の組み立て方が採られている。結果として、曲ごとの役割分担が明確で、アンサンブルの密度が前に出る仕上がりになっている。
聴きどころ
収録曲の中では「Bennett Built a Time Machine」が象徴的な存在として語られている。物語性と発明の感触を共有する曲で、バンドがこの時期に意識していたテーマを端的に示す楽曲だ。全体を通しては、組曲的な展開、細かく切り替わる拍子、メロディの積み上げがはっきりしていて、Yes、Genesis、ELP、Jethro Tullといった古典的プログレの系譜を思わせる要素が並ぶ。
ただし、単に過去の文法をなぞるだけではない。Ted Leonardの歌唱が入ることで、楽曲の輪郭が整理され、複雑な展開の中でも歌の存在感が保たれている。Spock's Beardの持ち味である技巧とフックの両立が、この時期の編成でどこまで自然に鳴るか、その確認作のようにも聴こえる。
評価と反応
発表当時の評価はおおむね好意的だった。LouderやClassic Rock系のレビューでは、変拍子や複雑な構成を含みながら、古典的プログレの魅力をよく体現した作品として扱われている。2015年のプログレ系批評家ランキングでも上位に入り、同年のシーンの中で確かな存在感を示した。一般市場での大ヒット作ではないが、プログレ専門の文脈ではしっかり注目されたアルバムだ。
チャート面では、英国のOfficial Chartsでアルバム・チャート72位、スコットランド・アルバム・チャート97位、プログレッシブ・アルバム・チャート7位を記録している。数値だけ見ても、メインストリームよりは専門性の高いリスナー層に届いた作品として整理できる。
2022年ヨーロッパ盤について
この2022年盤は、2015年オリジナルの内容を手元で聴くための再登場という性格が強い。Construction Recordsはオランダのプログレ/メタル系レーベルで、同系統の作品をカラーヴァイナルや見開きジャケットで丁寧に出している。『The Oblivion Particle』もその流れにあり、作品そのものの価値に加えて、物理メディアとしてのまとまりがある。
なお、Mediabook版とUS盤にはボーナス・トラック「Iron Man」が収録されているが、このヨーロッパ盤は本編中心の構成になる。アルバム本来の流れをそのまま追うなら、この形がわかりやすい。
まとめ
『The Oblivion Particle』は、Spock's BeardがTed Leonard加入後の体制を固めた2015年の重要作。技巧、構成、歌、アンサンブルのバランスがきっちり組まれていて、古典的プログレの文法を現代のバンドとして整理し直した印象が残る。Neal Morse在籍期の延長線で聴くこともできるし、現編成の到達点として見ることもできる。2022年のヨーロッパ盤は、その内容をカラーヴァイナルとゲートフォールド仕様で手元に残すための再発盤として位置づけやすい。
トラックリスト
- A1 Tides Of Time 7:47
- A2 Minion 6:54
- B1 Hell’s Not Enough 6:25
- B2 Bennett Built A Time Machine 6:53
- B3 Get Out While You Can 4:58
- C1 A Better Way To Fly 9:00
- C2 The Center Line 7:08
- D1 To Be Free Again 10:24
- D2 Disappear 6:41