The Nice - Attention!  (1973)
The Nice 1973

The Nice - Attention! (1973)

Rock Prog Rock Art Rock

The Nice『Attention!』――初期ナイスの歩みをまとめた日本盤コンピレーション

The Niceの『Attention!』は、1973年に日本でリリースされた編集盤である。Keith Emersonを中心に、クラシック音楽の引用や長尺の展開をロックの形式へ持ち込んだThe Niceの初期音源を、コンパクトにまとめた内容になっている。バンド本体は1960年代後半から1970年にかけて活動し、すでに解散後の時期にあたるため、この盤は当時の新作というより、The Niceの代表的な仕事を改めて整理した一枚として見るのが自然だ。

日本盤らしく帯とインサート付きで出された点も、この時代の輸入紹介盤らしい特徴である。Charismaレーベルのカタログが日本市場に入ってきた流れの中で、The Niceの存在をまとめて伝える役割を担ったタイトルでもある。ジャケットや選曲の印象は、アルバム単位で聴くというより、バンドの主要な側面をつかむための入口に近い。

The Niceというバンドの位置づけ

The Niceは、初期プログレッシブ・ロックの中でも、クラシックの素材をロックに組み込む作法を早い段階で押し進めたグループとして知られる。中心人物のKeith Emersonは、後にEmerson, Lake & Palmerでさらに大きな成功を収めるが、その前段階にあたるThe Niceで、すでに演奏の派手さと構成の大きさを前面に出していた。ピアノ、ハモンド・オルガン、そしてバンド全体のアンサンブルが、ロックバンドという枠の外側まで広がっている。

出発点はソウル歌手P.P. Arnoldのバック・バンドで、そこから独立してThe Niceとなった経緯も重要だ。初期メンバーにはDavid O’List、Ian Hague、Lee Jacksonが並び、のちにBrian “Blinky” Davisonが加わって編成が固まる。こうした変遷を経て、The Niceは演奏技術の高さとステージ上の強い存在感で評価を集めた。Emersonの過激なパフォーマンスは有名で、ハモンドにナイフを突き立てて音を出したという逸話も残っている。

収録曲の背景と聴きどころ

『Attention!』は編集盤なので、The Niceの初期代表曲や、バンドの方向性を示す楽曲が並ぶ構成になっている。中でも知られるのは、バンド名を広めた初期シングル「The Thoughts of Emerlist Davjack」や、クラシックの要素を強く押し出した長編曲群である。The Niceの魅力は、単にクラシックを引用することではなく、そこにロックの推進力を与えている点にある。旋律の断片を並べるだけでなく、展開の途中でテンポや質感が変わり、曲全体が組曲のように進む。

聴感上は、のちのELPほど巨大な音像ではないが、そのぶんバンド内の動きが見えやすい。オルガンの鋭いフレーズ、ベースのうねり、ドラムの切り替えが前に出てくる。The Niceの初期音源をまとめて聴くと、プログレの定型がまだ固まり切る前の、荒さと構成力が同居した感触がある。ジャズ寄りの推進とクラシック由来の厳密さが、同じ曲の中でぶつかる場面も多い。

1973年という時期の意味

1973年のリリースという点も、この盤を理解するうえで外せない。The Nice本体はすでに解散していたが、Keith EmersonはELPで一気に名前を広げていた時期である。つまり『Attention!』は、過去のバンドを懐古的に並べたものではなく、Emersonの存在感が高まったタイミングで、The Niceの源流を再提示した編集盤として機能している。

同時代の文脈で見ると、クラシックとロックの接続を試みた動きは、YesやGenesisのような英国プログレ勢とも重なる。ただしThe Niceは、より演奏の前面性が強く、鍵盤がバンドの中心に立つ。後のプログレに与えた影響も大きく、特に「長い器楽曲をロックのフォーマットで成立させる」発想の先行例として重要な位置にある。

日本盤としての魅力

この日本盤は、オリジナルの空気をそのまま封じ込めた再現というより、日本のリスナー向けにThe Niceの輪郭を見やすくした一枚である。Charismaのカタログの中でも、The NiceはELP以前のKeith Emersonを知るうえで欠かせない存在であり、『Attention!』はその入口としてわかりやすい。オリジナル・アルバムを追うのとは別に、バンドの性格を短い時間で把握できる編集の仕方が、この盤の実用性につながっている。

The Niceのディスコグラフィの中では、代表作を横断して聴くための編集盤という位置づけがはっきりしている。1973年という時期、そして日本盤という流通の形まで含めると、The Niceが単なる過去のバンドではなく、プログレ史の中で再確認されていたことが見えてくる。Keith Emersonの原点、そして初期プログレの実験精神を手早く示す記録として残る一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Third Movement Pathetique
  2. A2 The Thoughts Of Emerlist Davjack
  3. A3 America (2nd Amendment)
  4. B1 My Back Pages
  5. B2 Country Pie / Brandenburg Concerto No. 6
  6. B3 One Of Those People

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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