Sylvester - Stars (1979)
Sylvester『Stars』(1979年、Fantasy)
Sylvesterの『Stars』は、1979年にFantasy Recordsから出たアルバムで、全4曲を収めた短尺のLPだが、内容はかなり濃い。収録曲は「Stars」「Body Strong」「I (Who Have Nothing)」「I Need Somebody To Love Tonight」の4曲のみで、合計約33分半。いわゆる通常のアルバムというより、12インチ・シングル級の長いダンス・トラックをまとめた構成になっている。Sylvesterのディスコ期をそのまま切り取ったような作品で、彼の代表的な時期を知るうえで外せない1枚だ。
アルバムの位置づけ
Sylvesterは1947年生まれのアメリカのディスコ/ソウル・シンガーで、初期のHi-NRGアーティストの一人、そしてディスコにおける「男性ディーヴァ」として知られる。『Stars』は、そのイメージがかなりはっきり形になっている時期の作品で、歌唱力、クラブ向けの長尺構成、そして楽曲のドラマ性が前面に出ている。プロデュースはHarvey FuquaとSylvester本人。制作の中心に本人がいることで、作品全体の方向性がぶれにくい。
録音はバークレーのFantasy StudiosとロンドンのIsland Studiosで行われ、ミックスはDifferent Fur Studios、Fantasy Studios、Conway Studiosと複数のスタジオを使って仕上げられている。ダンス・ミュージックの制作現場らしく、音の置き方やミックスの処理にかなり手が入っている印象が強い。クレジット上では、Disc sideごとに長さやBPMも示されていて、クラブでの使われ方を意識した作品だったことがわかる。
収録曲の流れ
1曲目の「Stars」は、Patrick Cowley作曲のナンバーで、10分を超える長尺。SylvesterとPatrick Cowleyの組み合わせは、この時期のディスコ/Hi-NRG文脈では重要で、後のクラブ・ミュージックにもつながるような推進力を持っている。冒頭からビートが前に出て、ボーカルがその上で伸びる構成。テンポは速めで、曲の長さのわりに展開が散らばらず、ダンスフロア向けの設計がはっきりしている。
続く「Body Strong」も同系統の長尺トラックで、こちらもBPMは速い。リズムの押し出しとコーラスの反復が中心で、アルバムの前半はこの2曲でかなり強いグルーヴを作る。「I (Who Have Nothing)」はベン・E・キングで知られる曲のディスコ・カバーで、ここではオリジナルのバラード感を残しつつ、クラブ寄りのアレンジに置き換えている。実際、この曲はシングルとしても存在感が強く、Billboard Hot 100で40位、Hot Soul Singlesで27位、Hot Dance Club Playで4位を記録した。Sylvesterの代表曲のひとつとして扱われることが多い。
最後の「I Need Someone To Love Tonight」もPatrick Cowley作曲。こちらはアルバムの締めくくりとして、前3曲とは少し違う推進の仕方を見せる。全体としては、曲数の少なさを感じさせない構成で、1曲ごとの尺を使ってボーカルとビートをじっくり聴かせる作りだ。
当時のディスコ/クラブ文脈
1979年はディスコのピークとその後の揺り戻しが重なる時期だが、『Stars』はその中でもかなりクラブ寄りの仕上がりに振れている。レーベルのFantasyはジャズやソウル、ロックの再発で知られる一方、この時期はStax系カタログの取得なども進めていた時期で、そうした大手インディーの流通力の中でディスコ作品が出ていたのも興味深いところ。Sylvesterの歌は、同時代の華やかなディスコ・シンガーの中でも、より強い声の輪郭と感情の押し出しがある。
チャート面でもこの作品は目立っていて、アルバムはBillboard 200で63位、Top Soul LPsで27位。「I (Who Have Nothing)」のヒットに加えて、「Stars」「Body Strong」もHot Dance Club Playで4位に入っている。アルバム全体がクラブで機能していたことを示す数字だ。
オリジナル盤の仕様
この1979年盤はFantasy F-9579。レーベル表記は内側ラベルがF-9579、ジャケット裏がFANTASY F-9579となっている。ピンク・ヴィニール盤も存在し、インナーには写真面とクレジット面を持つカラー紙ジャケが付属する仕様。コレクター視点では、このあたりのパッケージも含めて当時のクラブ・アルバムらしい作りになっている。
Sylvesterのディスコ期をまとめて知るには、かなり分かりやすい1枚だ。4曲だけで構成されているぶん、各曲の存在感がそのまま盤の印象に直結する。長尺のダンス・トラック、カバー曲の再解釈、そして強いボーカル。その3つがしっかり揃ったアルバムである。
トラックリスト
- A1 Stars 8:06
- A2 Body Strong 8:10
- B1 I (Who Have Nothing) 10:40
- B2 I Need Somebody To Love Tonight 6:38