Tatsu Yamashita = 山下達郎 - Ride On Time = ライドオン・タイム (1980)
山下達郎『Ride On Time』— 1980年の転機を刻んだ代表作
山下達郎の『Ride On Time』は、1980年9月19日にAir Recordsから発売された5作目のスタジオ・アルバムである。シティポップ、ソウル、ファンク、ディスコの要素を、当時の日本のポップスの文脈にきっちり接続した作品として知られている。前年までの活動で職人的な制作姿勢を積み上げてきた山下が、ここで広く一般の耳にも届くヒットを手にした点が大きい。
このアルバムを語るうえで外せないのが、先行シングル「RIDE ON TIME」である。1980年5月1日に発売され、MaxellのカセットテープCMソングとして使われ、本人もCMに出演した。オリコン週間シングルチャートでは3位を記録し、山下にとって初の大きなヒットになった。アルバムはその勢いの中で制作され、結果としてオリコン週間LPチャート1位も獲得している。
作品の位置づけ
『Ride On Time』は、山下達郎のキャリアの中で、作家性と大衆性が強く結びついた節目の作品として扱われることが多い。本人は、ヒット後の喧騒に流されないよう、内容面では玄人好みの方向を意識していたとされる。実際、耳当たりのよいメロディを持ちながら、演奏やアレンジにはかなり手数が多く、細部まで組み立てられた印象が残る。
収録曲には「いつか (Someday)」「Silent Screamer」「夏への扉 (The Door Into Summer)」「My Sugar Babe」「雲のゆくえに (Clouds)」などが並ぶ。邦題と英題を併記する形は、当時の山下作品らしい整理された見せ方で、輸入ポップスやソウル、AORへの意識もにじむ。アルバム全体としては、リズムの強さとコーラスの密度が前に出ていて、単なるシングル中心の構成ではない。
演奏と制作
演奏面では、青山純のドラムス、伊藤広規のベースを軸に、椎名和夫のギター、難波弘之のキーボードなど、当時の日本のポップス/フュージョン周辺で信頼の厚いミュージシャンが参加している。山下自身もギター、キーボード、パーカッションなどを担当しており、制作の中心に立ちながら、バンド的な推進力も確保している。
録音はCBS SONY六本木スタジオA・BとNICHION STUDIOで行われた。音の輪郭は明瞭で、ベースとドラムの押し出しがはっきりしている一方、上物のシンセやギター、ブラスが混み合いすぎない。実際に聴くと、踊れるテンポ感の曲でも、細かな音の配置が詰め込まれていることがわかる。派手さだけで押すのではなく、各パートがきれいに噛み合う作り。
タイトル曲とヒットの背景
表題曲「RIDE ON TIME」は、このアルバムを象徴する1曲である。MaxellのCMで使われたこともあり、音だけでなく映像の記憶と結びついている人も多いはずだ。シングルでのヒットがアルバム全体の注目度を押し上げ、山下達郎の名前をより広い層に浸透させた。1980年という時点で、国内のポップスが洋楽的なサウンドを本格的に取り込んでいく流れの中、その中心に近い場所へ立った作品でもある。
「My Sugar Babe」は1980年10月にシングルカットされ、テレビドラマのテーマ曲としても使われた。アルバム内では比較的軽やかな推進力を持つ曲で、山下のメロディメイカーとしての強さが見えやすい。こうした楽曲が複数入っていることで、アルバムはヒット曲1曲だけの作品に収まっていない。
ジャケット仕様と初回盤
初回LPは、Maxellカセットテープ広告のイメージを取り入れた巻きつけ式のジャケット仕様で、オビが付属していた。中古市場ではこの巻きつけカバーが欠けている個体も多い。なお、白背景に山下達郎が立つ写真はジャケットではなく、内袋のデザインとして使われている。こうした仕様面も含めて、1980年当時の発売物としての存在感が強い。
同時代の文脈
この時期の日本では、都会的なポップスやソウル、ディスコの要素を吸収した作品が増えていた。山下達郎はその中でも、アメリカのジャズ、ソウル、ビッグバンドへの深い関心を制作に落とし込み、演奏の精度で作品を支えるタイプのアーティストとして際立っている。『Ride On Time』は、その姿勢がヒットと結びついた具体例として見やすい。
以後の山下達郎の代表曲「Christmas Eve」を思い浮かべると、ここで確立された緻密なアレンジ感や、コーラスとリズムの設計はすでにかなり明確である。『Ride On Time』は、山下達郎を“知る人ぞ知る職人”から“広く認識されるポップ・アーティスト”へ押し上げた作品として、今も重要な位置にある。
トラックリスト
- A1 いつか = Someday 5:46
- A2 Daydream 4:27
- A3 Silent Screamer 5:27
- A4 Ride On Time 5:51
- B1 夏への扉 = The Door Into Summer 4:39
- B2 My Sugar Babe 4:09
- B3 Rainy Day 5:16
- B4 雲のゆくえに = Clouds 5:37
- B5 おやすみ = Kissing Goodnight 1:34
動画プレイリスト
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いつか (Someday) - Tatsuro yamashita
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Daydream - Tatsuro yamashita
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Silent Screamer - Tatsuro yamashita
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Ride On Time - Tatsuro yamashita
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夏への扉 (The Door Into Summer) -Tatsuro yamashita
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My Sugar Babe - Tatsuro yamashita
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Rainy Day - Tatsuro yamashita
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雲のゆくえに (Clouds) -Tatsuro yamashita
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おやすみ (Kissing Goodnight) - Tatsuro yamashita