SZA - Ctrl (2017)
SZA『Ctrl』レビュー
2017年にTop Dawg EntertainmentとRCAから登場したSZAの『Ctrl』は、彼女にとってデビュー・スタジオ・アルバムとなる作品だ。セントルイス出身で、ニュージャージー育ちのシンガー/ソングライターとして知られるSZAは、この作品で当時のR&Bの流れの中でもかなり個人的な視点を前面に出している。Funk / Soul、Contemporary R&Bに分類されるアルバムだが、実際には曲ごとの温度差や語りの挟み方も含めて、かなり生活感のある一枚に仕上がっている。
『Ctrl』の大きな特徴は、恋愛、自己評価、迷い、20代の不安定さを、かなりそのままの形で置いているところにある。母親や祖母の語りが挟まれ、曲間も含めて一つの私的な記録のように流れていく構成。タイトルが示す通り、自分をコントロールしたい気持ちと、思うようにいかない感情の揺れが、アルバム全体に通っている。華やかなR&Bの装飾を積み上げるより、内面の細部をそのまま見せる作りで、そこがこの作品の輪郭をはっきりさせている。
制作背景とリリース時の位置づけ
このアルバムは2017年6月9日発売。もともと2015年末の発売が予告されていたが、完成までには時間がかかっている。制作は複数のスタジオで進み、録音はNo Excuses、Windmark Recording、Engineears Studios、Platinum Sounds Studios、The Lake House in Michiganなどにまたがる。各曲のクレジットを見ると、制作の広がりと同時に、SZAの周辺にいるプロデューサーやミュージシャンの輪郭も見えてくる。
リリース時の盤はゲートフォールド・スリーブ仕様で、8ページのブックレットとダウンロードコードが付属していた。2017年のUS盤としては、レーベルの主要作らしい丁寧なパッケージングだ。Top Dawg Entertainmentはヒップホップ色の強いレーベルとして知られるが、SZAの作品ではその枠を少し広げる役割も担っている。Interscopeとの配給関係を背景に、R&Bのアルバムとしても広く届いた作品でもある。
収録曲の手触り
冒頭の「Supermodel」から、自己像と対人関係の距離感がはっきり出る。「Love Galore」ではTravis Scottを迎え、録音も自宅スタジオやWindmark Recordingなど複数の場所で進められている。曲は大きく膨らませすぎず、淡々としたビートの上でSZAの声の細かな揺れが前に出る。「Doves In The Wind」にはKendrick Lamarが参加し、Redmanの「Let’s Get Dirty (I Can’t Get In Da Club)」のサンプルや、別曲のインターポレーションも使われている。ヒップホップの文脈が濃い曲だが、SZAのアルバム全体の中では、あくまで一つの切り口として置かれている印象が強い。
「Drew Barrymore」「Prom」「The Weekend」「Go Gina」「Garden (Say It Like Dat)」あたりは、この作品の中でも特にアルバムの温度を決める曲群だ。「The Weekend」にはJustin Timberlakeの「Set the Mood (Prelude)」の要素が含まれ、ミッドテンポの流れの中で関係の形を描く。「Broken Clocks」ではRiver Tiberの「West」の一部を取り入れ、「Anything」ではDonna Summerの「Spring Affair」がサンプルとして使われている。こうした引用は、単なる装飾ではなく、曲の時間感覚や身体感覚に結びついている。
終盤の「Wavy (Interlude)」はJames Fauntleroyのクレジットがあり、短い区切りながらもアルバムの流れを整える役割がある。「Pretty Little Birds」ではIsaiah Rashadが参加し、TDE周辺の空気感がそのまま共有されている。「20 Something」で締めくくられる流れは、タイトル通りの年代感をそのまま抱えた終わり方で、作品全体のテーマを最後まで引き戻している。
ヒット曲と評価
シングルとしては「Drew Barrymore」「Love Galore」「The Weekend」「Broken Clocks」「Garden (Say It Like Dat)」が挙げられる。中でも「Love Galore」と「The Weekend」はアルバムの顔として知られ、SZAの名前を広く押し上げた曲として扱われている。発売週にはBillboard 200で3位を記録し、その後も長くチャートに残った。女性アーティストのR&Bアルバムとしてロングランを続けた点も、この作品の重要な実績だ。
批評面でも評価は高く、Metacriticでは87点。第60回グラミー賞では最優秀新人賞を含む5部門にノミネートされた。2010年代のR&Bを語るうえで外せないタイトルとして扱われるのも、その後の影響の大きさを考えると自然だ。感情を整えきれないまま曲にしていく手つきは、同時代のR&Bやオルタナティブ寄りの作品群とも響き合っている。
まとめ
『Ctrl』は、SZAの初のフル・スタジオ・アルバムでありながら、最初から完成された私的な視点を持った作品だ。派手な展開より、言葉の置き方、声の崩し方、曲間のつなぎ方で聴かせるタイプのアルバムで、2017年のR&Bの中でもかなり個人の内側に寄った記録になっている。ゲスト参加はあるが、主役はあくまでSZA自身。恋愛の話でありながら、同時に自分をどう扱うかという話でもある。その二重性が、今もこの作品を強く見せている。
トラックリスト
- A1 Supermodel
- A2 Love Galore
- A3 Doves In the Wind
- A4 Drew Barrymore
- B1 Prom
- B2 The Weekend
- B3 Go Gina
- B4 Garden (Say It Like Dat)
- C1 Broken Clocks
- C2 Anything
- C3 Wavy (Interlude)
- D1 Normal Girl
- D2 Pretty Little Birds
- D3 20 Something