The J.B.'s - Hustle With Speed (1975)
The J.B.'s『Hustle With Speed』(1975)
The J.B.'sは、ジェームス・ブラウンのバック・バンドとして知られる一方で、単独名義でも強い存在感を残したグループだ。『Hustle With Speed』は1975年にPeople Recordsから出たアルバムで、フレッド・ウェズリーを中心にした時期の作品にあたる。ブラウンのレーベル運営の中でもPeople Recordsは重要な位置を占めていて、この時期のJ.B.'sは、いわゆるJBファンクの骨格を保ちながら、70年代半ばの空気を取り込んだ録音を続けていた。
People Records期のJ.B.'sらしさ
People Recordsは1971年にジェームス・ブラウンが立ち上げたレーベルで、The J.B.'sやLyn Collinsらの拠点になった。『Hustle With Speed』は、そのカタログの後半に置かれる一枚で、1970年代前半のファンクの流れを受けつつ、ディスコの要素も視野に入れた内容になっている。録音はサンフランシスコのWally Heider Studios、ニューヨークのA&R RecordingやSound Ideas Studiosで行われ、ミックスとマスタリングもニューヨークでまとめられている。
盤のクレジットを見ると、プロデュースはチャールズ・ボビットとドン・ラヴ、ジェームス・ブラウンは作曲やアレンジにも関わっている。J.B.'sの作品ではおなじみの、ホーン隊を軸にした細かいキメ、リズムの押し引き、ベースとドラムの粘りが前面に出た作り。派手な装飾より、演奏の密度で聴かせるタイプのアルバムだ。
聴きどころと収録曲
冒頭の「(It's Not The Express) It's The J.B.'s Monaurail」は、このアルバムの顔になっている曲で、勢いのあるスタートを切る。ジャケットのモノレールのイメージとも結びついたこの曲は、タイトルからして遊び心があり、実際の音もホーンが前に出る構成で、J.B.'sらしい推進力がはっきりしている。
続く「Here We Come, Here We Go, Here We Are」は、ジャム色の強い展開が耳に残る。ホーンのフレーズが曲の輪郭を作り、リズム隊がその下で粘る。さらに「All Aboard The Soul Funky Train」では、タイトル通り“列車”のイメージを使いながら、トロンボーンを前面に押し出した進行が印象的だ。フレッド・ウェズリーの存在感がよく出ている一曲で、J.B.'sが単なる伴奏バンドではなく、楽曲単位で強い推進力を持つ集団だったことがわかる。
シングルとしては「(It's Not The Express) It's The J.B.'s Monaurail」と「Thank You For Letting Me Be Myself And You Be Yours」がPart 1 / Part 2に分けて出ている。アルバム全体の中でも、こうした分割シングルの扱いは当時のファンク作品らしい作りで、曲をラジオ向けに切り出しながら、アルバムでは長めの流れで聴かせる発想が見える。
作品の位置づけ
『Hustle With Speed』は、J.B.'sの中でもフレッド・ウェズリー体制の終盤に近い時期の作品として見られている。1975年の時点で、バンドはJBファンクの手法を保ちながらも、時代の変化に対応しようとしていた。AllMusicのバイオグラフィーでも、この頃のバンドには士気の低下があったとされ、ウェズリーは同年7月にグループを離れてジョージ・クリントンの陣営へ移っている。メイシオ・パーカーも同じ1975年に離脱しており、本作はラインナップの変化が進む前夜の記録としても読める。
商業的には大きなヒット作ではなかったが、後年はヒップホップのサンプリング素材として存在感を増した。Jay-Z、Nas、Eric B. & Rakim、Ultramagnetic MCs、EPMDなどに使われているという事実は、このアルバムのリズムやホーンの切れ味が、後の時代にも参照されたことを示している。JB系の音源がサンプリングの定番として扱われる流れの中でも、本作はその一角に入るタイトルだ。
盤としての情報
今回のUS盤はPeople (8)のPE 6606で、Columbia Pitman Plantプレス。ラベルやマトリクスに「CP」が入ることで識別できる。背表紙とラベルの表記は「PE 6606」、ジャケット裏面には「PE 6606」と「2391 194」の両方が記載されている。People Recordsは1976年に終了しているので、この1975年盤はレーベル後期の一枚でもある。
『Hustle With Speed』は、J.B.'sのファンクが70年代半ばにどう変化していたかを、比較的はっきりした形で示すアルバムだ。ホーンの切れ、リズムの粘り、列車やモノレールを連想させる推進力。そうした要素がまとまっていて、ジェームス・ブラウン周辺の作品群の中でも、時代の移り変わりがそのまま刻まれている一枚になっている。
トラックリスト
- A1 (It's Not The Express) It's The J.B.'s Monaurail 8:14
- A2 Here We Come, Here We Go, Here We Are 4:26
- A3 All Aboard The Soul Funky Train 4:30
- A4 Transmograpfication 4:00
- B1 Thank You For Letting Me Be Myself And You Be Yours 9:40
- B2 Taurus, Aries & Leo 6:25
- B3 Things & Do 5:32