The Jesus And Mary Chain - Darklands (1987)
The Jesus And Mary Chain 1987

The Jesus And Mary Chain - Darklands (1987)

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The Jesus And Mary Chain『Darklands』レビュー

The Jesus And Mary Chainは、スコットランド出身のオルタナティブ・ロック・バンドで、兄弟のJim ReidとWilliam Reidを軸に1983年に結成された。ノイズの壁のようなギターと、甘いメロディを同居させた初期像で知られるが、1987年の2作目『Darklands』では、その方向を少し整理し、曲そのものの輪郭を前に出している。オリジナルは1987年作、今回の盤も同年のヨーロッパ盤で、レーベルはBlanco Y Negro。UKインディの文脈を背負いながら、メジャー寄りの流通網でも出回った一枚という位置づけになる。

ノイズの圧力を少し引き、曲を立てた2作目

前作『Psychocandy』がギターのフィードバックと轟音で強い印象を残したのに対し、『Darklands』はドラムマシンや整ったリズム、メロディの明瞭さが目立つ。バンド自身の転換点として語られることが多く、William Reidが後年に“よりクリーンな響き”の作品として触れているのも、このアルバムの性格をよく示している。聴感上も、音の層を重ねて押し切る場面より、歌とコード進行の流れを追いやすい場面が多い。荒さが完全になくなったわけではないが、前作よりも落ち着いた輪郭がある。

制作クレジットを見ると、Wessex Studios、Southern Studios、Livingston Studiosなど複数の現場が使われている。各曲で録音・ミックスの場所が分かれており、曲ごとの質感差もはっきりしている。たとえばA2はLivingstonでエンジニアリングされ、Wessexでリミックスされている。アルバム全体としては統一感がありつつ、細部では少しずつ温度が違う。その差が、単調さではなく、曲ごとの表情として出ている。

代表曲「April Skies」とアルバムの広がり

この作品を語るうえで外せないのが「April Skies」だろう。UKシングル・チャートで8位まで上昇し、アルバムの中でも最も広く知られた曲になった。メロディの流れがはっきりしていて、The Jesus And Mary Chainの名前を初めて知る入口としても機能しやすい。ノイズ・バンドという先入観だけで聴くと、かなり印象が違うかもしれない。逆に言えば、この曲があることで『Darklands』は“騒音を抑えた実験作”ではなく、“曲を書く力を前に出した作品”として見えやすい。

そのほかの曲も、轟音一辺倒ではない。リズムの反復、低く保たれた歌、ギターのざらつきが、ポップソングの枠の中で機能している。実際に通して聴くと、派手な展開で押すアルバムというより、同じ温度を保ちながら少しずつ景色を変えていくタイプに近い。耳に残るのは大きなサビだけではなく、短いフレーズや、音の隙間に置かれた余韻のほうでもある。

1987年当時の評価とバンドの位置づけ

1987年当時の評価は概ね好意的だった。たとえばWashington Postは、初期作で印象的だった“鋼たわしのようなギター”や“轟くドラム”を後退させながらも、なお作品を高く評価している。商業的にも前作より良い結果を残し、UKアルバム・チャートでは最高5位を記録、7週間チャートにとどまった。批評と成績の両面で、バンドの前進を示したアルバムと見てよさそうだ。

ジャンルの文脈で見ると、『Darklands』は後のシューゲイズやインディ・ロック、ノイズ・ポップの流れの中で重要な位置を占める。My Bloody ValentineやRideのような後続バンドを直接ひとまとめにする必要はないが、歪みとメロディを同居させる発想、暗い色調の中でポップな輪郭を保つやり方には、同時代以降の多くのバンドが学んだ要素がある。The Jesus And Mary Chain自身にとっても、この作品は“騒々しさ”だけで語られないための土台になった一枚だろう。

このヨーロッパ盤について

今回の盤はEuropeリリースの1987年盤で、Blanco Y Negroからの発表。ジャケットはグロス仕様で、背表紙の文字が上辺にも繰り返し入る。デボス加工のWarnerロゴ、歌詞入りのトップオープン型プリント内袋、黒地に白文字のレーベル面など、当時の流通盤らしい作りになっている。中には、後のシングル「Sidewalking」を告知する12インチ大の片面インサート付き個体もあったという。音そのものだけでなく、1980年代後半のUK/欧州盤らしいパッケージ感も含めて、時代の手触りがある。

『Darklands』は、The Jesus And Mary Chainが“ノイズのバンド”から“曲を持つバンド”へ移る途中で残した記録として見えてくる。派手な変化ではないが、バンドの輪郭を長く残す方向へ進んだ作品。そんな印象のアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Darklands 5:29
  2. A2 Deep One Perfect Morning 2:43
  3. A3 Happy When It Rains 3:36
  4. A4 Down On Me 2:36
  5. A5 Nine Million Rainy Days 4:29
  6. B1 April Skies 4:00
  7. B2 Fall 2:28
  8. B3 Cherry Came Too 3:06
  9. B4 On The Wall 5:05
  10. B5 About You 2:31

動画プレイリスト

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