The Psychedelic Furs - Mirror Moves (1984)
The Psychedelic Furs 1984

The Psychedelic Furs - Mirror Moves (1984)

Rock New Wave Alternative Rock

The Psychedelic Furs『Mirror Moves』――ポストパンクの輪郭を、より洗練された形で結晶させた1984年作

The Psychedelic Fursの『Mirror Moves』は、1984年8月21日にColumbia/CBSから発表された4作目のスタジオ・アルバムである。英国ロンドンで結成されたこのバンドは、ポストパンクを出発点にしながら、やがてニュー・ウェイヴの文脈でも語られる存在になっていくが、本作はその流れの中でも重要な位置にある一枚だ。荒さを前面に出すというより、演奏や音像の整理が進み、曲の輪郭がはっきり見える作品になっている。

アーティストの中心にいるのは、Richard Butlerの歌と、Tim Butlerのベースだ。そこにギターの硬質なラインや、当時のポストパンクらしい冷たさが重なり、The Psychedelic Furs特有の、都会的で少し距離のある感触が形になっている。『Mirror Moves』は、その持ち味を保ったまま、より聴きやすい構成へ寄せた時期の記録として見てよさそうだ。

アルバム全体の印象

この作品でまず目立つのは、曲ごとの役割がかなり明確なことだ。派手に押し切るのではなく、テンポや音の置き方で引っ張っていく場面が多い。Richard Butlerのボーカルは、感情を大きく振り切るというより、語尾や間で緊張感を作るタイプで、そこにバンドの乾いた演奏がよく合っている。聴き進めると、メロディの分かりやすさと、少し陰のある質感が同居しているのが分かる。

1980年代前半の英国ロックを見渡すと、ポストパンクからニュー・ウェイヴへ移る途中の作品は多いが、『Mirror Moves』はその中でもかなり整理された部類に入る。The Cure、Echo & the Bunnymen、Duran Duranのように同時代の別方向へ進んだバンドと比べると、The Psychedelic Fursはもっとロック寄りで、歌の押し出しが強い。とはいえ、単純なギター・ロックでもなく、音の隙間を使う感じが残っている。

注目曲「The Ghost in You」

本作を代表する曲としてまず挙げられるのが「The Ghost in You」だ。アルバムの中でも特に流れが滑らかで、メロディの印象が強い。The Psychedelic Fursの代表曲として扱われることが多いのも納得しやすい一曲で、バンドの持つ冷ややかさと、ポップな抜けの両方が見える。シングルとしての存在感もあり、アルバム全体の入口として機能している。

この曲では、Richard Butlerの声が感情を説明しすぎないまま前に出てくる。リズム隊は過度に主張せず、ギターやキーボードの配置で空気を作っていくため、曲の中心がはっきりしているのに、どこか余白が残る。その余白が、このバンドらしさでもある。聴き手の側で情景を補う余地がある曲だ。

注目曲「Heaven」

「Heaven」も本作を語るうえで外しにくい楽曲だ。アルバムの中では比較的ストレートな推進力があり、サビへ向かう流れが分かりやすい。The Psychedelic Fursは、初期にはもっとざらついた質感で知られるが、この時期になると、メロディの見せ方にかなり意識が向いていることが伝わる。曲単体で耳に残る力がある。

ただし、ただ明るく開けるわけではなく、音の表面にはまだ冷たさが残る。そこがこのバンドの面白さで、甘さだけに寄らない。1984年という年の作品らしく、クラブ感覚の強いニュー・ウェイヴとも接点を持ちながら、ギター・バンドとしての骨格もきちんと保っている。

作品の位置づけ

『Mirror Moves』は、The Psychedelic FursがUKのポストパンク・バンドから、より広いロック/ニュー・ウェイヴの文脈へ移っていく途中の一枚として見ることができる。初期の尖った質感をそのまま残すのではなく、楽曲の完成度や響きの整え方に比重を置いた作品だ。後年、彼らの名を広く知らしめることになる代表曲群への橋渡しとしても重要だろう。

また、本作はCBSの英国盤として1984年に出たオリジナル期のリリースで、当時のヨーロッパ市場におけるCBSの流通網の中に置かれていた作品でもある。レーベル面でも、80年代前半の大手メジャーがポストパンク以後のバンドをどう扱っていたかが見える。音楽性は鋭いままだが、パッケージとしてはかなり整ったアルバムだ。

まとめ

『Mirror Moves』は、The Psychedelic Fursの中でも、メロディと冷ややかな質感のバランスがよく出たアルバムだ。派手な変化球ではなく、バンドの持ち味を洗練させた結果としての一枚、と捉えると分かりやすい。代表曲「The Ghost in You」や「Heaven」を軸に聴くと、1984年の時点で彼らがどこまでポップな輪郭を手に入れていたかが見えてくる。

ポストパンクの緊張感と、ニュー・ウェイヴの聴きやすさ。そのあいだを行き来する感触が、このアルバムの核にある。

トラックリスト

  1. A1 The Ghost In You 4:17
  2. A2 Here Come Cowboys 3:57
  3. A3 Heaven 3:27
  4. A4 Heartbeat 5:17
  5. B1 My Time 4:27
  6. B2 Like A Stranger 4:00
  7. B3 Alice's House 3:53
  8. B4 Only A Game 4:13
  9. B5 Highwire Days 3:58

動画

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