The Psychedelic Furs - The Psychedelic Furs (1980)
The Psychedelic Furs 1980

The Psychedelic Furs - The Psychedelic Furs (1980)

Rock New Wave Alternative Rock Punk

The Psychedelic Furs『The Psychedelic Furs』(1980) レコード解説

The Psychedelic Fursのデビュー・アルバム。1980年3月7日にUKでリリースされた本作は、ロンドンのポストパンク文脈から現れたバンドの出発点として位置づけられる。後年の彼らに通じる硬質なギター、低く粘るボーカル、曲の輪郭をあえてはっきりさせすぎない編曲が、この時点ですでに表れている。1980年のUK盤はCBSからの初出で、レーベル番号は84084。CBSのUK盤らしい、当時の英ロック/ニューウェイヴ周辺の空気をそのまま閉じ込めた一枚でもある。

バンドの初期像がそのまま出たデビュー作

The Psychedelic Fursは1977年にロンドンで結成された。中心はティム・バトラーとリチャード・バトラーの兄弟で、後に80年代を通じて活動を広げていくが、このデビュー作ではまだバンドの輪郭が荒く、曲ごとの温度差も大きい。そこが面白いところで、整った完成品というより、当時の空気をそのまま押し込んだ記録に近い。ポストパンクの緊張感、ニューウェイヴの乾いた感触、パンクの直線性が同居している。

制作面でも特徴がある。楽曲ごとに複数のプロデューサーが関わっており、Steve LillywhiteやMartin Hannettの名前が見える。LillywhiteはSiouxsie and the BansheesやXTC、HannettはJoy Divisionで知られる人物で、どちらも当時の英国ロックの質感を決定づけた存在だ。本作では、その両者の感覚が曲ごとに少しずつ違う角度で出ている。録音は1979年にロンドンのRAKスタジオで行われ、短い期間でまとめられたとされるが、その結果として演奏の生々しさが前に出ている。

収録曲と聴きどころ

このアルバムでまず触れられることが多いのが「Sister Europe」。長い余韻を残すギターと、リチャード・バトラーの抑えた声が印象に残る曲で、のちのThe Psychedelic Furs像を先取りしている。派手なフックで押すタイプではないが、リフと歌の距離感が独特で、当時のUKロックの中でも少し位置がずれる。シングル的な分かりやすさより、曲の流れ全体で引っ張る作り。

一方で「We Love You」や「Flowers」などは、パンクの衝動を残しながらも、単純な疾走だけには寄らない。リズム隊が前に出る場面と、ギターが空間を広く使う場面が交互に現れ、アルバム全体の緊張を保っている。こうした作りは、同時代のUKポストパンクやニューウェイヴの中でも、Gang of Fourの切れ味やSiouxsie and the Bansheesの陰影とはまた違う、やや曖昧で湿度のある感触を持っている。

なお、US盤では曲順や収録内容に差があり、「Blacks / Radio」の代わりに「Susan's Strange」と「Soap Commercial」が入る。英国盤とアメリカ盤で表情が変わる点は、この時代の輸出盤らしいところだが、本作の場合はその違いがアルバムの印象にも少し影響している。

評価と位置づけ

批評面では好意的に受け止められ、UKアルバムチャートでは最高18位を記録した。大ヒット作というより、バンドの名前を広く知らしめる入口になった作品で、ここから「Pretty in Pink」や「Love My Way」につながる流れが見えてくる。特に「Pretty in Pink」は後年、John Hughesの映画タイトルに採用されたことで別の層にも届いたが、その前段階として本作の存在は大きい。

2020年にはRolling Stone誌が「1980年の名盤80選」の一つに選んでいる。そこでも触れられていたように、本作は整然としたポップ・ロックではなく、少し粗いままのアイデアをそのまま通したような感触がある。そこがこのアルバムの核で、The Psychedelic Fursというバンドが最初から持っていた、都会的でありながら簡単には整理できない質感につながっている。

この1980年UK盤について

今回の盤は1980年当時のUKオリジナル。CBSレーベルの初期プレスらしい時代感があり、のちの再発盤のようなボーナストラック追加はない。アルバム単体の流れをそのまま聴ける仕様で、デビュー作としてのまとまりを確認しやすい。バンドの初期衝動、制作の荒さ、曲ごとの温度差が、そのまま残っている一枚である。

The Psychedelic Fursの出発点を知るには、まずこのアルバムが基本になる。後年の洗練された楽曲群に比べると、ここにはまだ輪郭の定まらない部分が多い。それでも、80年代UKロックの中で彼らがどこから立ち上がったのかを示す記録として、今も十分に意味を持つ作品だ。

トラックリスト

  1. A1 India 6:18
  2. A2 Sister Europe 5:38
  3. A3 Imitation Of Christ 5:27
  4. A4 Fall 2:38
  5. A5 Pulse 2:38
  6. B1 We Love You 3:27
  7. B2 Wedding Song 4:22
  8. B3 Blacks / Radio 6:55
  9. B4 Flowers 4:13

動画プレイリスト

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