ESG - Come Away With ESG (1983)
ESG 1983

ESG - Come Away With ESG (1983)

Funk / Soul Funk New Wave

ESG『Come Away With ESG』(1983) について

ESGの『Come Away With ESG』は、1983年にUSの99 Recordsから出たファースト・フル・アルバムである。南ブロンクス出身の姉妹を中心にしたESGは、ヴォーカルとパーカッションを軸に、ベースとギターを最小限の構成で鳴らすバンドとして知られる。この作品でも、その基本形ははっきりしている。音数は多くないが、演奏の重なり方と間の取り方が細かく、ダンス・ミュージックとしての機能と、アート・パンク寄りの硬さが同じ場所に置かれている。

このアルバムが出た1983年は、ニューヨークのインディー/アート系の動きと、クラブ向けのファンクやディスコの感覚が近い距離にあった時期である。99 RecordsはEd Bahlmanが立ち上げたレーベルで、当時のNYアート/パンク・シーンを記録した存在として語られることが多い。ESGはそのレーベルの中でも、ジャンルの輪郭を少しずつずらすようなグループだった。本作は、その活動初期のまとまった形として位置づけられる一枚である。

音の作りと聴きどころ

『Come Away With ESG』でまず目立つのは、リズムの組み立て方である。姉妹たちのパーカッションは、派手なソロや展開よりも、短いフレーズを反復して曲の骨格を作る方向に寄っている。そこにベースが入り、ギターが細い線でリフを重ねる。ロックのように前へ押し出すのではなく、同じパターンを保ちながら少しずつ圧をかける作りで、聴いていると拍の感覚がかなり前面に出てくる。

代表曲としてよく挙げられる「UFO」や「Come Away」は、その特徴が端的に出ている曲である。どちらも尺は長くないが、短い時間の中でリズムの反復が強く印象に残る。メロディを大きく広げるタイプではない一方、ビートの輪郭がくっきりしていて、聴き終わったあともフレーズだけが残る感じがある。実際に聴くと、音数の少なさよりも、各パートの置き方の正確さのほうが先に耳に入る作品である。

同時代の文脈の中で

ESGは、ノー・ウェイヴやミニマル・ファンクの文脈で語られることが多い。たしかに、このアルバムには従来のソウルやロックの作法にそのまま乗らない部分がある。ただし、ただ無機質というわけでもなく、踊れるリズムの芯ははっきりしている。そのため、当時のパンク側から見れば異質であり、クラブ側から見ればかなり削ぎ落とされたファンクでもある、という立ち位置になる。

比較対象としては、同じくNY周辺で活動したアート色の強いバンドや、ダンス寄りのポストパンク勢が思い浮かぶ。ただESGは、ギター・バンドらしい展開よりも、打楽器的な反復を優先する点で独特である。ここが後のダンス・パンクやインディー・ファンクに与えた影響の大きさにつながっている。後年、TLC、Wu-Tang Clan、Beastie Boys、Big Daddy Kane、UnrestなどがESGの音をサンプルとして使ったことも、そうしたリズムの強さを裏づける事実である。

作品の位置づけ

このアルバムは、ESGにとって初のフル・アルバムであり、初期のスタイルをまとめた重要作である。1981年のEP、1982年の『ESG Says Dance to the Beat of Moody』に続いて発表され、バンドの核にある反復ビートとミニマルな編成を、アルバム単位で示した形になっている。ほどなくしてグループはいったん活動を止めるが、その後の再評価によって、本作は「当時のヒット作」というより「後の音楽に残った設計図」のような扱いを受けるようになる。

また、99 Records自体もこの時期のニューヨークの空気を伝えるレーベルとして重要である。『Come Away With ESG』には、℗&© 1983 Nine Nine Music (ASCAP)、Printed in USAといった当時のUS盤らしい情報が記されている。盤のリリース年も1983年で、オリジナルの空気をそのまま持つ一枚として見てよい。

まとめ

『Come Away With ESG』は、派手な展開や大きなヒットを前面に出す作品ではない。だが、短いフレーズの反復、打楽器的な推進力、ベースとギターの最小限の配置が、曲ごとの輪郭をかなり明確にしている。ESGの出発点を示すアルバムであり、同時に80年代のNYアンダーグラウンドが持っていた実験性とダンス感覚の接点を、そのまま封じ込めた記録でもある。聴くほどに、後のサンプリング文化やダンス・ロックの文脈で参照されてきた理由が見えてくる一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Come Away
  2. A2 Dance
  3. A3 You Make No Sense
  4. A4 Parking Lot Blues
  5. A5 Chistelle
  6. A6 About You
  7. B1 It's Alright
  8. B2 Moody (Spaced Out)
  9. B3 Tiny Sticks
  10. B4 The Beat
  11. B5 My Love For You

動画プレイリスト

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