The Pineapple Thief - 10 Stories Down (2005)
The Pineapple Thief『10 Stories Down』について
The Pineapple Thiefの『10 Stories Down』は、2005年に発表された4作目のアルバムで、バンド名が「The Pineapple Thief」として定着していく時期の重要作である。中心人物はBruce Soordで、作曲、演奏、録音、ミックスの多くを担うプロジェクト色の強い形から、メンバーを加えたバンドとしての輪郭が少しずつ見えてくる局面でもある。現在の耳で聴くと、のちの同バンドにつながるメロディ重視のプログレ・ロックの骨格が、かなり明確に置かれている作品だとわかる。
制作の背景と作品の位置づけ
このアルバムには、制作の入り組んだ経緯がある。録音は2004年から2005年にかけて進められ、Bruce Soordが後からかなり手を入れて再構成したうえで完成したとされる。作品としては、単なる初期作というより、ひとりのソングライターの作品から、バンドとしてのサウンドへ移る途中段階にある。実際、Steve Kitchがキーボードと共同制作の面で深く関わり、後年のThe Pineapple Thiefの音作りにもつながる土台を作っている。
2005年時点では、まだ初期メンバーの入れ替わりもあり、Matt O’Learyの脱退後にSteve Kitchが加わっていく流れが見える。こうした変化は、単に人員の問題ではなく、音の密度やアレンジの組み立て方に直結している。『10 Stories Down』は、その変化を作品の中で確認しやすい一枚である。
曲の構成と聴こえ方
収録曲は、長めの展開を持つ曲と、比較的コンパクトにまとまった曲が並び、全体としては抑制されたテンションの中でじわじわと進む。プログレ・ロックという枠で見れば、技巧を前面に出すタイプというより、曲の流れや音の重なりで引っぱる作りだ。ギター、キーボード、リズム隊の配置が過密になりすぎず、歌の存在がはっきり残るのも特徴である。
なかでも「Wretched Soul」は、この時期のバンドの輪郭を示す曲として語られやすい。リフや展開の組み方に、初期の内省的な空気と、後のバンド編成による厚みの両方が見える。また「I Will Light Up Your Eyes」は、バージョン違いの多いこのアルバムを象徴する曲でもある。初期盤では別の形で収録され、のちの版ではパート分けや曲名の整理が行われた。楽曲そのものが、作品の改訂とともに姿を変えてきた点が興味深い。
再発盤での違い
『10 Stories Down』は、後年の再発で内容が整理されている。2011年のKscope盤ではBruce Soord自身によるリミックスが行われ、収録曲や表記も見直された。さらに2023年のKscope再発では、ボックスセット『How Did We Find Our Way 1999-2006』の流れの中で、より新しいリミックス/リマスター版として扱われている。つまり、この作品は一度完成して終わりではなく、時期ごとに見直され続けてきたアルバムである。
こうした経緯のため、同じ『10 Stories Down』でも、盤によって聴こえる印象が少しずつ異なる。音の輪郭、ギターとキーボードの配置、ボーカルの前後感など、再発ごとに整理されている部分がある。The Pineapple Thiefのカタログの中でも、こうした改訂の多さはかなり特徴的だ。
同時代の文脈
2000年代前半の英国プログレ/メロディック・ロックの流れの中では、The Pineapple ThiefはPorcupine Treeの周辺にいるタイプのバンドとして語られることが多い。とはいえ、『10 Stories Down』は単にその文脈のコピーではなく、より歌を中心に置いた作りが目立つ。派手な転調や大仰な組曲より、楽曲の陰影やフレーズの積み重ねで聴かせる方向で、のちの作品群にもつながる姿勢がすでに見えている。
また、この作品は商業的な大きなヒット作というより、バンドの転機を記録したアルバムとして受け止められてきた。初期のソロ色の強いプロジェクトから、メンバーを含むバンドへ移っていく過程、その途中にある揺れや整理、再構成の痕跡がそのまま残っている。そういう意味で、『10 Stories Down』はThe Pineapple Thiefの後年を知るうえでも、最初期の輪郭を確認するうえでも、かなり重要な位置にある作品である。
トラックリスト
- A1 Prey For Me
- A2 Clapham
- A3 Wretched Soul
- A4 The World I Always Dreamed Of
- A5 Start Your Descent
- B1 My Own Oblivion
- B2 It's Just You And Me
- B3 The Answers
- B4 From Where You're Standing
- B5 I Will Light Up Your Eyes