William Onyeabor - Atomic Bomb (1978)
William Onyeabor『Atomic Bomb』(1978)レビュー
ウィリアム・オニャボーの『Atomic Bomb』は、1978年にナイジェリアのWilfilms Recordsから出たアルバムだ。オニャボーは1946年生まれのナイジェリア人シンガー/ソングライターで、ソ連で映画製作を学んだのちに帰国し、自身の音楽・映画制作会社Wilfilmsを立ち上げた人物として知られている。本作は、その活動のなかでも特に大きな反響を呼んだ一枚で、彼の代表作として扱われることが多い。
録音はエヌグのWilfilms Recording Studiosで行われ、Wilfilms Resident Bandが演奏を担っている。レーベル運営からスタジオ制作までを自前で進めた点に、当時のオニャボーの制作体制がよく表れている。ジャケット裏面には、制作や録音に関わった人々への謝辞が記されており、独立したローカル制作の空気がそのまま残っている。
ナイジェリアのファンク/エレクトロニックの現場
1970年代のナイジェリアでは、ハイライフ、アフロビート、ファンクがそれぞれの形で発展していた。フェラ・クティのような政治性の強いアフロビートとは別の流れとして、都市部のダンス音楽やスタジオ主体のファンク作品も各地で作られていたが、オニャボーの音はそのなかでもかなり際立っている。シンセサイザーを前面に出し、打ち込みではなく手触りのある演奏で電子的な響きを作る構成が、本作の大きな特徴だ。
歌い方も独特で、強く押し出すというより、自分の声をそのまま曲の上に置くような感触がある。英語詞で進む「Atomic Bomb」では、戦争や暴力への批判が繰り返される。タイトル曲がそのまま代表曲として扱われるのは自然で、アルバム全体の軸もこの曲に集約されている。
実際に聴くと見える音の輪郭
耳に入ってくるのは、太いベース、反復するドラム、伸びるシンセ、そして前に出すぎないが存在感のあるボーカルだ。音数は多いのに、各パートが過度に詰め込まれていない。ファンクの推進力を保ちながら、電子音が隙間を埋めるというより、曲の骨組みそのものになっている印象がある。とくに表題曲は、リズムの粘りとメロディの反復が長く続き、聴き進めるうちに曲の構造がじわじわ見えてくるタイプだ。
Side Aは15分40秒、Side Bは18分15秒。片面ごとの収録時間にも余裕があり、ラジオ向けの短いシングル曲というより、アルバム単位で流れをつかむ作りになっている。派手な展開で押し切るより、同じフレーズを重ねながらグルーヴを維持する作法に耳が向く。
この作品の位置づけ
オニャボーは1977年から1985年にかけて自主制作・自主流通で複数のアルバムを残しているが、『Atomic Bomb』はその初期を代表する一枚だ。のちに世界的な再評価が進んだ際も、最初に名前を広く知らしめた楽曲の一つがこのタイトル曲だった。ナイジェリア国内でヒットしたのち、長く埋もれていたが、2013年にLuaka Bopがコンピレーション『Who Is William Onyeabor?』を出したことで、国際的な注目が改めて集まった。
その後は、David Byrne主宰のトリビュート活動「Atomic Bomb! Band」も動き、Damon AlbarnやHot ChipのAlexis Taylorらが参加したことでも話題になった。こうした再評価の流れの中心に、1978年のこのアルバムがある。
再発盤について
提示された盤は1978年ナイジェリア盤で、オリジナルと同年のリリースだ。後年の再発盤と比べると、当時のWilfilmsの制作・印刷クレジットやランアウトの仕様が残る点が重要になる。盤面の刻印やジャケットの細部に、ローカル制作の実物感がそのまま出ている。
まとめ
『Atomic Bomb』は、ナイジェリアの1970年代ファンク/電子音楽の現場を、オニャボー自身の制作環境ごと閉じ込めたような作品だ。シンセを軸にした音作り、戦争批判を含む歌詞、Wilfilms Resident Bandによる演奏、そして表題曲の強い存在感。派手な説明を必要としないまま、曲そのものがこの人の輪郭を示しているアルバムである。
トラックリスト
- A1 Beautiful Baby
- A2 Better Change Your Mind
- B1 Atomic Bomb
- B2 Shame
- B3 I Need You All Life