Wild Cherry - Wild Cherry (1976)
Wild Cherry / Wild Cherry(1976, Epic PE 34195)
オハイオ州スチューベンヴィル出身のバンド、Wild Cherryが1976年にEpicから発表したセルフタイトル作。後に「Play That Funky Music」の大ヒットで広く知られることになるグループの、まさに転機となったアルバムである。もともとはメロディアスなロック寄りのバンドとして活動していたが、クラブ・シーンの変化とともにダンス・ミュージックへと舵を切り、この作品でその方向性を明確に示している。
録音とミックスはオハイオ州クリーヴランドのCleveland Recording Companyで行われ、プロデュースはリーダーのロブ・パリッシ。1975年から76年にかけて制作された内容で、バンドの再編後の姿がそのまま刻まれている。Wild Cherryにとっては、単なるデビュー作というより、バンドの性格そのものが組み替わった時期を記録した作品として見るのが自然だ。
ロック・バンドからファンク/ディスコへ
Wild Cherryの初期像は、いわゆるオハイオ系のメロディックなハード・ロックに近い。だが、70年代半ばのクラブでは、以前のようなロックだけでは客をつかみにくくなっていた。そうした状況の中で、ロブ・パリッシは踊れる要素を強く意識した曲作りへ進み、このアルバムはその流れの上にある。ロック、ファンク、ソウル、ディスコが同居する構図で、当時のアメリカン・バンドがどの方向へ進むべきかを探った時代性がはっきり出ている。
演奏陣にはロブ・パリッシのほか、ブライアン・バセット、アレン・ウェンツ、ロン・ベイトル、ドミニク・イアレース、マーク・アヴセックらが参加している。ギター主体のバンド感を残しつつ、ベース、ドラム、シンセサイザー、ホーンの要素が加わることで、ロック・バンドの骨格にダンス・ミュージックの推進力が重なっている。
代表曲「Play That Funky Music」
このアルバムを語るうえで外せないのが「Play That Funky Music」である。ピッツバーグのクラブ「2001 Club」でのやり取りをきっかけに生まれた曲として知られ、ロック中心のステージに対して「ファンキーな音楽をやってくれ」という客の声が、曲の発想につながった。ロブ・パリッシがその場で書き上げたというエピソードも残っている。
曲としては、ロック・バンドがディスコ時代のクラブに適応しようとする状況を、かなり直接的に切り取っている。1976年4月にシングルとして発売され、同年9月18日付の全米Hot 100で1位、R&Bチャートでも1位を記録。英国でも7位まで上がり、アルバム全体の認知を一気に押し上げた。Wild Cherryにとって全米トップ40入りのヒットはこの1曲のみだが、その存在感は強い。
アルバム全体の位置づけ
アルバム『Wild Cherry』は、Billboard 200で5位、R&Bアルバム・チャートで1位を記録し、プラチナ認定も受けている。ヒット曲先行で語られやすい作品だが、実際にはバンドの方向転換がそのままアルバム全体に反映された点が重要だ。ロックの演奏力を前提にしながら、ファンクのリズムやディスコの流れを取り込んでいく構成で、70年代半ばのアメリカのクラブ文化と接続している。
同時代の文脈で見ると、ロック・バンドがファンクやダンス寄りの感覚を取り込む動きは珍しくないが、Wild Cherryの場合はそれがかなり露骨に表面化している。ギター・バンドとしての出自を残しつつ、結果として大きなヒットを生んだところに、この作品の特徴がある。後年、ヴァニラ・アイスによる無断使用の件でも曲名が再び注目されるが、もともとの出発点は、70年代のクラブで求められた実用的なグルーヴにある。
オリジナル盤としての特徴
本盤は1976年のUSオリジナル。EpicのPE 34195で、クレジット上も当時のリリースそのものを示している。レーベル表記はEpicの70年代仕様で、米国盤らしい印象が強い。録音地がクリーヴランドであること、そして「Manufactured by CBS / Epic」系のクレジットが入ることも含め、アメリカ中西部のロックとソウルの交差点にある作品として見やすい。
聴き進めると、やはり「Play That Funky Music」の強さが際立つ一方で、アルバム全体もその曲だけに頼っていない。ロック・バンドがダンス・ミュージックに寄っていく過程、70年代半ばの空気、そしてヒットを掴む直前の緊張感がまとまっている。Wild Cherryの作品群の中では、グループの転換点を最も分かりやすく示す1枚として位置づけられる。
トラックリスト
- A1 Play That Funky Music 5:00
- A2 The Lady Wants Your Money 4:14
- A3 99½ 3:00
- A4 Don't Go Near The Water 3:15
- B1 Nowhere To Run 3:07
- B2 I Feel Sanctified 3:45
- B3 Hold On 4:11
- B4 Get It Up 3:01
- B5 What In The Funk Do You See 3:35