Al Di Meola - Scenario (1983)
Al Di Meola 1983

Al Di Meola - Scenario (1983)

Jazz Fusion

Al Di Meola『Scenario』について

Al Di Meolaの『Scenario』は、1983年に登場した作品で、ジャズ・フュージョンの枠の中でも、演奏技巧だけで押し切るタイプとは少し違う方向を向いたアルバムです。ディ・メオラといえば、Return to Forever以降の高速フレーズや緻密なアンサンブルで知られるギタリストですが、この作品では電子楽器やスタジオ・プロダクションの比重がかなり高く、作曲そのものの設計が前面に出ています。日本盤はCBS/Sonyの32AP 2545で、1983年のオリジナル期に出たものです。

作品の位置づけ

このアルバムは、ディ・メオラがそれまでの“速弾きの人”というイメージから、曲作りと音作りの側へ軸足を移そうとした時期の記録として見られています。前作までの流れを引きずりつつも、ここではRolandのギター・シンセサイザーやドラム・マシンの導入が目立ち、80年代前半らしい電子的な質感が全体を覆っています。アコースティックな切れ味よりも、トラック単位で組み上げた構成のほうが印象に残る内容。

当時の同時代感覚で見ると、ジャズ・フュージョンがロック、ポップ、エレクトロニクスと交差していた時期で、Pat MethenyやJean-Luc Ponty、John McLaughlin周辺の作品群とも近い空気がある一方、『Scenario』はかなり機材志向の色が強い。Jan Hammerが関わっている点も大きく、シンセやプログラミングの方向性に彼の感覚が反映されている。

参加ミュージシャンと制作面

クレジットを見ると、Phil Collins、Bill Bruford、Tony Levinといった名前が並びます。いずれもロックやプログレ、フュージョン周辺で実績のあるプレイヤーで、単なるバックアップというより、曲の性格を決める側の存在。Phil CollinsはAtlantic Records所属、Bill BrufordはE.G. Records所属という注記もあり、当時のレーベル事情が反映された参加形態です。

制作面では、Jan Hammerが複数曲で作曲・演奏に関わり、特に「Sequencer」ではFairlight CMIとLinn Drumを使ったことが知られています。1983年という時点でこれらの機材を前面に出した作品は、かなり時代の先端を意識したものだったはずです。実際の音は、ギターの速さだけで引っ張るというより、シーケンスの反復や電子音のレイヤーで曲を進める場面が多く、ディ・メオラの作品の中でも少し特異な立ち位置。

聴きどころ

アルバム全体を通して耳に残るのは、ギターの主張が前に出る場面と、機械的なリズムが支える場面の切り替えです。ディ・メオラらしい細かなピッキングやフレーズの精密さはあるものの、ここではそれが“主役”というより、アレンジの一部として機能している印象。音の密度は高く、各パートが比較的はっきり分かれているので、当時のデジタル録音らしい輪郭も感じやすい内容です。

代表曲としては「Sequencer」がまず挙がります。タイトル通りシーケンサー的な反復を軸にした曲で、この作品の方向性を端的に示す一曲。ほかにも、アルバム全体が“ギター・ヒーローのソロ作”というより、複数のミュージシャンが電子的な枠組みの中で組み立てたセッションのように進むため、曲ごとの役割分担が見えやすい構成です。

日本盤の仕様

この日本盤はCBS/Sonyの32AP 2545で、OBI付き、厚手のカードスリーブ、厚手のカード仕様のMaster Soundインナーが付属する作り。英語・日本語の片面インサートも入り、コピーによってはMastersound Catalogueのインサートが付く場合もあるようです。1980年代前半の国内盤らしく、パッケージ面の情報量が多く、当時の日本市場での扱いの丁寧さが見える仕様です。

まとめ

『Scenario』は、Al Di Meolaが技巧派ギタリストとしての評価だけでは収まりきらないことを、80年代初頭の電子音響の中で示した作品です。ジャズ・フュージョンの文脈にありながら、ロック寄りのミュージシャンやシンセサイザー中心の制作手法を取り込み、ディ・メオラのディスコグラフィーの中でも方向転換の色が強い一枚。演奏の切れ味、機材の選択、スタジオでの構成、その3つが同じ重さで並んでいるアルバムとして記憶されている作品です。

トラックリスト

  1. A1 Mata Hari 6:04
  2. A2 African Night 4:51
  3. A3 Island Dreamer 4:06
  4. A4 Scenario 3:55
  5. B1 Sequencer 4:06
  6. B2 Cachaca 5:34
  7. B3 Hypnotic Conviction 3:51
  8. B4 Calliope 4:19
  9. B5 Scoundrel 3:44

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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