Alton McClain & Destiny - More Of You (1980)
Alton McClain & Destiny『More Of You』――短命ながら濃い存在感を残した、1980年のソウル/ディスコ盤
Alton McClain & Destiny は、1978年に結成されたアメリカの女性ソウル/ディスコ・トリオで、メンバーは Alton McClain、Robyrda Stiger、D'Marie Warren の3人。活動期間は長くないものの、1979年から1981年までに3枚のアルバムを残していて、その中で最も広く知られている曲が「It Must Be Love」だ。『More Of You』は1980年に Polydor から出た作品で、グループが70年代末のディスコの流れを受けつつ、80年代初頭のソウルへ移っていく時期の記録として見ることができる。
Polydor は1913年にドイツでブランドとして始まり、のちに世界的なレーベルへ成長した老舗だ。アメリカ市場では1969年に本格展開していて、1980年当時の本作は、その国際的なレーベル運営の中でリリースされた一枚になる。カタログ番号は PD-1-6268。US盤としての整理もしやすく、当時の Polydor のアルバム群の中でも、黒人女性トリオによるソウル/ディスコ作品という位置づけがはっきりしている。
作品の位置づけ
Alton McClain & Destiny は、いわゆる大規模なディスコ・ブームの中心というより、その周辺で洗練されたダンス寄りソウルを鳴らしたグループだと思ってよさそうだ。『More Of You』は、デビュー期の勢いをそのまま引き継ぐというより、グループの歌唱を前面に出しながら、当時のR&B/ディスコの作法に沿ってまとめたアルバムという印象が強い。派手な時代性だけで押すのではなく、声の重なりやフレーズの運びで聴かせるタイプの盤だ。
同時代の女性トリオやヴォーカル・グループを思い浮かべると、The Emotions のような滑らかなコーラス感、あるいは Sister Sledge のようなダンス・フィールのあるソウルと並べて語られることがあるのも納得できる。とはいえ、Alton McClain & Destiny はそのどちらにも完全には寄り切らず、少し落ち着いた輪郭を保っているのが特徴だ。
タイトル曲「More Of You」
本作の中心にあるのは、やはりタイトル曲の「More Of You」だろう。曲名どおり、感情の量感を前に出す作りで、グループの3声が重なる場面にこのバンドの持ち味がよく出る。ディスコ期のアルバムにありがちな、ビートの勢いだけで突っ走る感じではなく、歌の流れを崩さない構成が取られているのが耳に残る。
聴き進めると、ボーカルの主張がはっきりしていて、リズム隊や鍵盤はその土台を支える役回りに回る場面が多い。ここでは、派手な転調や過剰な装飾よりも、コーラスのまとまりとフレーズの反復が効いている。アルバム全体の方向性を示す曲として、まずこの1曲を軸に聴くと全体像がつかみやすい。
代表曲「It Must Be Love」との関係
Alton McClain & Destiny を語るうえで外せないのが「It Must Be Love」だ。これはグループ最大のヒットとして知られていて、彼女たちの名前を広く印象づけた曲でもある。『More Of You』を聴くと、このヒット曲で示された“甘さのあるダンス・ソウル”の感触が、アルバム全体にも通じていることがわかる。
「It Must Be Love」がシングルとして強い輪郭を持つのに対し、『More Of You』の楽曲群はもう少しアルバム単位の流れを重視しているように感じられる。つまり、1曲で即座に耳をつかむというより、複数曲を通して歌の質感やアレンジの統一感を味わうタイプの作品だ。ヒット曲で知られるグループの“その後”を追うとき、このアルバムは重要な位置にある。
サウンドの印象
音の作りは、80年という時期を反映して、70年代後半のディスコのきらびやかさを残しつつ、少しすっきりした質感へ寄っている。ベースライン、ストリングス、リズムの刻み、コーラスの積み方といった要素が、曲ごとの役割をきちんと分担しているように聴こえる。ファンク寄りの推進力だけでなく、ソウルとしての歌の重さも保たれている点がポイントだ。
この手の作品は、派手な単語で説明するより、実際には声の配置やバックの間合いで印象が決まりやすい。『More Of You』もまさにそのタイプで、聴きどころは歌の掛け合いと、ダンス・ミュージックとしての軽快さのバランスにある。アルバム全体としては、過度に硬質でもなく、甘すぎもしない、その中間の温度感が残る。
まとめ
『More Of You』は、Alton McClain & Destiny が短い活動期間の中で残した、グループの持ち味をそのまま記録した1980年作だ。最大ヒット「It Must Be Love」で知られる彼女たちの魅力を、アルバムという形で追える一枚としても見どころがある。Polydor からのUS盤という点も含めて、当時のソウル/ディスコの流れの中にきちんと置ける作品であり、女性トリオならではのコーラスと、時代のR&Bサウンドが交差するところにこの盤の輪郭がある。
トラックリスト
- A1 Love Waves 5:04
- A2 I Don't Want To Be With Nobody Else 6:00
- A3 Hang On In There Baby 3:58
- A4 More Of You 4:57
- B1 Thank Heaven For You 4:56
- B2 Stares And Whispers 4:03
- B3 99 1/2 5:10
- B4 You Bring To Me My Morning Light 4:06