Quincy Jones - The Dude (1981)
Quincy Jones『The Dude』(1981) レコードレビュー
Quincy Jonesの『The Dude』は、1981年にA&M Recordsからリリースされたアルバムで、ファンク、ソウル、ディスコの要素を整理しながら、80年代の都会的なポップ感覚へつなげていく一枚だ。Quincy Jonesといえば、ジャズ畑の出身でありながら、プロデューサー、アレンジャー、作曲家としてポップスやR&Bの大きな潮流を作ってきた人物として知られる。この作品も、その幅広い仕事ぶりがよく見えるタイトルになっている。自作名義の作品としては、単なるバンド・サウンドではなく、制作全体を設計する立場の強さが前に出た内容だ。
リリース当時のA&Mは、すでに独立系レーベルとして大きな存在感を持っていた時期で、洗練されたポップ、ソウル、AOR、ダンス寄りの作品が並ぶ環境の中にこのアルバムも置かれていた。1981年という年を考えると、ディスコの熱狂が落ち着いたあと、ファンクやダンス・ミュージックが別の形で定着していく時期でもある。その流れの中で、『The Dude』は派手な時代の残響を残しつつ、より整ったグルーヴとスタジオ作品としての完成度を前面に出した印象がある。
作品の位置づけ
Quincy Jonesのディスコグラフィーの中では、『The Dude』はプロデューサーとしての手腕が、本人名義の作品としてまとまって表れたアルバムのひとつだ。Michael Jacksonの『Off the Wall』で見せたポップ・ファンクの感覚と地続きの部分もあり、同時期のRufus & Chaka KhanやBrothers Johnsonのような、タイトで機能的なリズム感覚とも近い空気を持っている。ただし、ここでは誰かのための制作ではなく、Quincy Jones自身の視点で音の配置が組み立てられている点が大きい。
この時期のブラック・ミュージックは、ライブ感の強いファンクと、スタジオで精密に組み上げるダンス・サウンドが並走していた。その中で本作は、演奏の勢いだけに頼らず、コーラス、ホーン、シンセ、ベースの役割を細かく整理した構成が目立つ。ジャズの文法を知る音楽家が、70年代のファンクを80年代仕様にまとめていく、そんな位置づけの作品として見えてくる。
タイトル曲「The Dude」
表題曲「The Dude」は、アルバムの顔としてもっとも分かりやすく、リズムの立ち上がりがはっきりしたトラックだ。打ち込みではなく、演奏のニュアンスを残したビートの上に、コーラスとホーンが層を作っていく流れが印象に残る。曲そのものは複雑に聴かせるというより、各パートの入り方や抜け方で推進力を作るタイプで、Quincy Jonesらしい編曲の組み立てが前に出る。
歌入りのポップ・ファンクとしてのまとまりが良く、アルバム全体のトーンを決める役割も大きい。80年代初頭のA&M作品らしい、明快で整理された音像の中に、ブラック・ミュージックの身体性がきちんと残っているところが面白い。耳に残るメロディと、細部まで管理された伴奏のバランスが、この曲の核になっている。
「Ai No Corrida」
収録曲の中でも広く知られているのが「Ai No Corrida」だ。タイトルの響きだけでも印象が強いが、内容はその名にふさわしく、ダンス・ミュージックとしての推進力を前面に出した作りになっている。リズムの反復と、コーラスの掛け合いが曲を引っ張り、アルバムの中でも特にクラブ寄りの感触を持つ一曲だ。
ここでは、ディスコの要素がそのまま残るというより、ディスコ以後の洗練されたダンス・ファンクとして鳴っているのがポイントになる。リフの置き方、声の重ね方、ブレイクの作り方に、Quincy Jonesのスタジオ・ワークがよく出ている。華やかさはあるが、過剰に盛り上げる方向ではなく、リズムの流れを保ったまま進んでいくタイプの曲だ。
「Just Once」
バラード寄りの代表曲としては「Just Once」が重要だ。『The Dude』の中でこの曲が入ることで、アルバムはダンス・トラックだけに寄らず、ソングライティングの強さも見せる構成になっている。メロディを丁寧に追うタイプの楽曲で、歌の輪郭がはっきりしているため、アルバムの中でも印象が残りやすい。
ファンクやディスコのアルバムにこうしたバラードが入ると、全体の温度が下がることもあるが、この作品ではむしろ曲順の中で呼吸を作っている。派手なアレンジに頼らず、フレーズの運び方で聴かせるところに、Quincy Jonesの作曲家としての強みが見える。アルバムの多彩さを支える重要な一曲だ。
1981年という時代の中で
1981年のアメリカ音楽シーンでは、ディスコの余波、ファンクの更新、そしてポップ市場の拡大が同時に進んでいた。『The Dude』はその交差点に置くと見えやすい。Sly & the Family Stoneのような荒さをそのまま引き継ぐのではなく、より滑らかに、よりスタジオ作品として整えた方向性で、同時代の洗練派の作品群と並べて語りやすい。
Quincy Jones自身は、演奏家としての顔よりも、全体を設計する制作者としての印象が強いが、このアルバムでもその持ち味ははっきりしている。曲ごとの性格を分けながら、アルバム全体では一つの流れにまとめているため、単曲の強さと通して聴いたときの統一感が両立している。A&M盤らしい端正なリリースとしても、時代の空気をよく残した一枚だ。
まとめ
『The Dude』は、Quincy Jonesのプロデュース感覚、アレンジ力、ソングライティングの幅が、本人名義のアルバムとして見えやすい作品だ。ファンク、ソウル、ディスコの要素を、1981年の音として整理した内容で、表題曲「The Dude」、ダンス性の高い「Ai No Corrida」、メロディが立つ「Just Once」と、性格の異なる曲がそれぞれ役割を持って並ぶ。80年代初頭のブラック・ポップの一断面として、今聴いても制作の精度が伝わるタイトルである。
トラックリスト
- A1 Ai No Corrida 6:18
- A2 The Dude 5:35
- A3 Just Once 4:32
- A4 Betcha' Wouldn't Hurt Me 3:33
- B1 Somethin' Special 4:03
- B2 Razzamatazz 4:20
- B3 One Hundred Ways 4:19
- B4 Velas 4:05
- B5 Turn On The Action 4:17
動画
- The Dude
- Ai No Corrida
- Just Once
- Something Special
- Quincy Jones - The Dude _ VINYL (1981) !
- Betcha Wouldn't Hurt Me (Extended Version)
- Razzamatazz
- One Hundred Ways
- Velas
- Turn On The Action